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好奇心の赴くままに|地球修行 1

銭湯という興味深い場所で働いて、早いものでかれこれ3年が経つ。系列店舗の中で最も設備トラブルが多く、本来シンプルなはずの構造も複雑で難解な店舗だ。

突発的に発生する問題を、持ち前の瞬発力で出来る限りを尽くし、突破口を見いだしていく感覚は、それなりに目まぐるしい。激流を下る舟のようでもある。

ただ、その都度少しずつ理解を深めて、散らばった情報を整理し、探偵にでもなった気持ちで解明していけばいくほど、トラブルは想定可能なものになっていく。

そんな風に想定外を想定内におさめていく作業は、お店やチームに少なからず安定感をもたらすし、そこへ来るお客さんにとっても、もちろん望ましいことだ。

それが私に与えられたミッションのひとつでもあったので、その安定感のために少しは力添えできているのではと思う。

でも、想定外が想定内になるほど、自分の中の何かが妙にくすぶり出して、このままでは自分の形が溶けてなくなりそうな、危機感のようなものをなんとなく感じるようになった。

ひとつの物事を長く続けられない、どちらかといえば飽きやすい体質の私は、想定内になっていったあれこれがつまらないものに見え、仕事への気持ちの傾け方がわからなくなっていったのかもしれない。そうして行き場のないモヤモヤをしばらく抱えていた。

そこで浮上したのが、海外の地で生活してみる案だ。年齢的にもちょうどワーキングホリデーがラストチャンスのタイミング。

これは行くしかないと思った。上手に説明は出来ないけれど、好奇心の赴くまま行動してみて、後悔した記憶はない。想定外を求めたくて思いついた、人間の住むところ以外の共通点がない、言葉も文化も違う異郷へ行くという選択肢。

たぶん、このまま想定内におさまり続けることのほうが後悔する気がしたのだ。どこからともなく、「今だ!」と声がしたような感覚だった。

一見すると突拍子もない思いつきにも見える。職場の人たちにさらっと伝えてみたところ、
「むしろその方がらしくていい気がする」といった感じの反応を得た。7月半ば、お店近所の料理屋さんにて。社長曰く勢いで言ってしまったようだったけれど、幸先がよい。

思い返せば去年の夏ごろ、久々に会いたいなと思ってなんとなく1年ぶりに連絡をした友人が、偶然その年の秋からオーストラリアへワーホリに行くタイミングだったことがあった。

引き寄せなのかなんなのか、ちょうどこの頃くらいから、自分の中のくすぶった何かを微かに自覚したような気もする。

今年の夏にオーストラリアから帰ってきた時に会って、その後、彼女は今イギリスにいる。イギリスのワーホリは倍率が高いらしいが、試しに応募してみたら当たったとのことだった。

ワーホリ滞在期間は1年間の国がほとんどのところ、イギリスの場合は2年間の滞在が可能だそう。次に会って話せる日が今から楽しみだ。

そんなこんなで、色んなところで実際に口に出していると、思いがけないところから情報が舞い込み始めた。私の周りの目に見えない何かがアシストしてくれているような、そんな感覚すら覚えた。不思議だし、運がいいなと思う。

先月10月、前職のとある集まりに参加した時には、去年の春に仕事を辞めてフィリピンとオーストラリアへ行った元同期の話を知った。すぐに連絡を取ってみた。

「私の中でのワーホリの行き先は、英語を使えるようになりたいことと、自然の豊かさを踏まえて、なんとなくニュージーランドかなと思っているんだー。」

このことを伝えてみたところ、友人は3ヶ月間フィリピンの語学学校でみっちり勉強し、英語をある程度使えるようになった上で行くワーホリの有意義さを熱を込めて話してくれた。

当初はニュージーランドで語学学校へ通って勉強しようとしていたものの、ここで2ヶ国に行く選択肢が芽生えた。

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