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DESIGN of Bottling the VINEYARD vol.2

"Bottling the VINEYARD = 葡萄畑をそのまま瓶詰めする"をコンセプトにしたワインプロジェクトでは、これまでに多くの銘柄・ヴィンテージをリリースしてきました。
独自路線をいくエチケットデザインについて紹介する機会がなかったので、当時の「コンセプトノート ver.2021.3.9」より抜粋して、まとめておきたいと思います。
今回はvol.2となります。


SanQueHadsu 'NOB' 2018 -Craftsman Press / Barrel Aging-

さんきゅうはづ 'ノブ ' 2018 - クラフトマンプレス / バレルエージング - 

Design Concept
'さんきゅうはづ' 
―― お国訛りに胸を張る
だから瓶にも それを貼るのだ

勉強会兼交流会「善151-3.9 AKAYU PRIDE-」の開催をきっかけに、新潟日報のコラムに「さんきゅうはづ」が活字で掲載されたことはプロジェクトメンバーでも大きな喜びであった。経過は以前の記事を参照されたい。

コラム抄日報の締めくくり「令和の世となっても、お国なまりは豊かなふるさとを持つ証しだと胸を張りたい。」にこたえる形でデザインしたのがこれだった。
「県外の新聞で取り上げてもらえるなんてこんなに光栄なことはない。その記念にもなるし、自信をもって "さんきゅうはづ" って書ぐべ!」という経過なのだから、明治・大正・昭和・平成・令和と時代は進んでも人間の素というものはあまり変わっていないのかもしれない。

同じ葡萄から「クラフトマンプレス」と「バレルエージング」の2種類を醸造した経過を踏まえ、デザインにはもう一つのギミックが隠されている。
カリグラフィー風のタッチで描かれた横文字の「SanQueHadsu」と平仮名の「さんきゅうはづ」だが、それを構成するパーツは同じである。
バラして組み直すと横文字にも平仮名にもなるのだ・・・時間かかったな、そういえば。別に暇だったわけでは・・・。

ONE-TENTH2658-1 VINEYARD / ’OLD’ MASCUT BAILEY-A

山形県南陽市赤湯字十分一ノ一2658-1 / '古木' マスカットベーリーA

Design Concept
燦然と輝きを増す 紫玉たれ
時の流れを 水鏡にして

赤湯 紫金園に現存するものでは最高樹齢を誇るさんきゅうはづ(マスカットベーリーA)の古木。その樹から収穫された葡萄だけで醸造したワインは先にも紹介したが、タンク内の上澄み部分がボトリングされた後のタンクの底に残った部分はプレスをかけ、醸造方法に違いがあるので、エチケットも変えてリリースしている。

先にお伝えしてくと、上下反転となっているのは決して作業ミスではない。「果実酒」「日本ワイン」は反転せずに表記しているとおり、これはこういうコンセプト・こういうデザインなのだ。

数十本ほどしか生産できない限定品でもあるので、何を思ったかモコモコペンで樹の絵柄をなぞるという地道な制作をやったところ、これが思いのほかお客様に好評だったらしく・・・もう後には引き返せなくなった(もう毎年覚悟を決めてモコモコペンでなぞることになった)もの。

知っている人しか買わないものなので、視認性がどうだとかというよりは遊びに走ってしまっている感もあります。
上下反転の真の意図はコンセプトにもある"水鏡"がキーワードでして。

あー、読めた、読めた!

つまり、こういうことです。(この写真だと結局読みにくいのだけれども)ちなみに 販売定価3398円 税込(*当時)の設定もコンセプトからきているもので「燦然と'さんきゅうはづ'」・・「3千と398」・・・。はい、次。

ONE-TENTH2836-83 VINEYARD / 'San-Que-Hadsu'2018 -What's your "AKAYU PRIDE"?-

山形県南陽市赤湯十分一山一2836-83 / 'さんきゅうはづ' 2018 - あなたの"赤湯プライド"は何ですか?-

Design Concept
道標
畑で君に会いたくて
夢も誇りもここにあるから

"Bottling the VINEYARD"プロジェクト2年目、大沼延男さんの2018年産マスカットベーリーAで醸造したワイン。葡萄畑・その所在地を関するものというテーマをまっすぐに表現しようというアイディアから、単純に地図を載せたものだった。
この地図のとおり来ていただくとホントに大沼さんの葡萄畑(山形県南陽市赤湯字十分一山一2836-83)に辿り着きます。

地元の公民館あたりに地域のみんな集まる各種反省会(共同作業でもごみ拾いでも運動会でも地域行事なら何でもいい)をするときに酌み交わしてもらうという消費シーンのイメージがあり、サブテーマとして「あなたの"赤湯プライド"は何ですか?」が添えられている。

温泉・田んぼ・烏帽子山・桜・吉野川・結城豊太郎・白竜湖・ふるさと祭り・暴れ獅子 . . . 集まった人の数だけ、いろんなものが出てくればいい。
それをみんなで分かち合い、みんなで地元の誇りを育てていこうという一体感を生む大事な時間。
そんな空間と人々の会話をそっとアシストできたら・・・そういうような願いを込めたものだ。

'Ochi-Covolet' MASCUT BAILEY-A 2019 / HakuryuDryChallenge2019 Extra Edition

’落ちこぼれ’マスカットベーリーA 2019 / 白竜ドライチャレンジ2019特別編

Design Concept
'落ちこぼれ'
貼られたレッテル 突き破れ
師の年宿る 7つのボトル

この経過は話すと長い。
そもそも「白竜ドライチャレンジ2019」とは何か、というか、その前に「白竜ドライエクスペリメント2018」とは何かというところから始めないといけないが、その部分はまたの機会に。

これまでに各種デザインをしてきた当事者として、最も思い入れのあるのはこれである。筆者の 'ochi-covolet' は、このワインから転用したもので、プロフィール画像にも使ってしまうくらい気に入っている。

このワインは7本しかなく、写真はその全部が映るものだ。

エチケットにはお隣の白鷹町の伝統工芸品である「深山和紙(みやまわし)」を破って貼り付けている。
レッテルという言葉自体がネガティブな意味で用いられることが多いわけだが、これまたネガティブ要素が強い「落ちこぼれ」を銘柄の名称に設定し、敢えて丈夫な深山和紙に印字した後に力づくで引きちぎり、それを丁寧に貼りつけるという制作工程を辿った。

意図したのは「落ちこぼれ」というネガティブなイメージではなく、それを突き破るポテンシャルと力強さ。
リリース時のinstagramを見返してみたらそう書いていた。

なお、ドラマの舞台 白竜湖に由来する龍の図柄はシルバーのモコモコペンで。まぁ7本くらいだったら・・・と思ったがやっぱりここでも相当な時間を要したっけな。でも一連の作業はとても楽しかった覚えがある。

今更ながら文字におこそうとすると、なぜそんなことを考えたのか・そんなことまでしたかったのか納得いただけそうな説明はできない。
だが、そういう気概とそれによりリリースされるワインが赤湯にはあるというのも事実である。

ぜひ vol.3もやってみたいと思います!

2回にわたって「コンセプトノート ver.2021.3.9」に掲載したデザインの裏側(表側?)を御紹介してきました。振り返って文字にしてみると、毎年いろいろありましたね。

同じ産地・同じ畑と言えど、生産年が違えば気候や栽培条件が違うわけで、当然葡萄だって同じものはできません。
栽培者としてはその年その年の諸条件の変化に対応しながら、安定した品質と収量を確保することが技術ではありますが、どこまで突き詰めても葡萄は農産物であり、そこから造られるワインもまた農産物です。
その微妙な差異こそがヴィンテージの個性であり、運命の1本との一期一会こそがワインを愉しむ究極の価値かもしれません。

「―― やっぱり 畑 だと思う。」. . . やっぱりそう思う。

まだ御紹介していないワインについても、また機会をみてnoteにまとめていきたいと思います。ご覧いただきありがとうございました。

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