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ファンファーレと熱狂_いのちの輝き

いまだにふと、思い出すシーンがある。

2014年、山梨。
仲良しの先輩に誘われて、初めて行った野外フェス。

普段は好きなバンドのライブにいく程度で、そこまで幅広くバンドにも詳しいわけでもなく。
完全にフェス初心者の私は、とにかく先輩に引っ付いていろんなステージを聞いて回った。

サカナクションはいつもの通り素晴らしかったし、フジファブリックは泣いたし、遠くから漏れ聞こえてきた矢沢永吉様の歌声は痺れるものがあった。エレカシは宮本さんがもうすごかった。the HIATUSは残念ながら人多すぎて断念。
きゃりーちゃんはミッキーマウスみたいで、一緒に踊って楽しかった。

運良くその日はとても涼しかったので暑さに苦しめられることもなく、フェスの空気も存分に味わうことができた。

朝から夕方までお目当てのバンドは大体聴いて回って、さて最後どうしようか、となった時。

先輩が、メインステージのトリを聞きにいこうと提案してくれた。

全く聴いたこともないバンドだったので、なぜメインステージのトリなのか不思議だった。
聞けば、どうやらそのバンドのラストライブだということ。

もう既に何曲か終わっていて、先輩と私は、後ろの方から見ることにした。


不思議な曲だった。


ファンファーレと熱狂。赤い太陽。5時のサイレン。6時の一番星。


ノスタルジックなメロディと、真っ直ぐ心に響く朴訥とした歌声だった。

私はその日、その場所で夕陽を見た。
会場の全てがオレンジ色で、そのオレンジの光の中で3人の男性が演奏していた。

でも、どう考えても、その時期、その日、その時間帯に夕日が出ていたはずはないのだ。

でも私は、そのステージで間違いなく夕陽を見た。
何度思い返してみても浮かぶのは、オレンジ色に包まれて、歌う3人の男性のシルエット。

曲が終わって、次の曲が始まる。
ボーカル以外のメンバーが、アカペラで歌うシーンがあった。

中学校の卒業式で、ぐしゃぐしゃに泣きながら大きな声で歌っていた生徒会長の男の子を思い出した。

彼はもちろん泣いてはいなかったけど、何か物凄い決意のような、エネルギーのようなものを感じた。

私はこのバンドの歴史も、曲も、メンバーさえも、何も知らない。
何があって解散することになってラストステージなのかも、何も知らなかった。

それでも、ここまでいろいろ大変なことがあって、きっとたくさん悩んで、ぶつかって、転がりながら、今このステージに立って、3人で最後に演奏できる喜びとか、やっと終われるという気持ちとか、そうゆうごちゃごちゃした何かを、歌に昇華して、放出してるように感じた。

自分達から削り取った何かを出しながら、そこに立ってるように見えた。
いのちが削られて、放出されてるみたいに見えた。

本当に何も知らないのだけど。


昔、「就職活動で大切なことってなんだと思いますか?」と後輩に相談されたことがある。
私は、「熱意」と答えた。
後輩は笑っていたけれど、私はいまだにそう思う。

テクニックも大切だし頭の良さも必要だし、熱意だけではもちろんどうにもならないんだけど、
本当にそれをやりたいと思ってる人、本気の人が放つエネルギーってとんでもないと思うのです。
命を削ってるから。

キング牧師の有名な演説があると思うんですが、あれの構文を勉強しようみたいなのが新人研修の時のプログラムにあったことがあります。
なぜあの演説が心に響くのか?という。

もちろん、演説がよくできてるというのは大前提として。
私は、本当にこの人はこれをやりたいと思ってるから、心に響くんだと思った。
本当に心を込めて自分の言葉として、その言葉をいのちを削って放ってるからなんじゃないかなと。


わたしはandymoriのラストステージでいのちの輝きをみた気がしました。

好きなバンドはたくさんあります。
サカナクションのライブは毎回感動するし、RADWIMPSはようじろうさんの歌がうますぎてびっくりしたし普通に泣いた。
いっぽうandymoriはその後CDを借りてたくさん曲をいれたけれど、たまにしか聴いてない。

でもわたしが心を掴まれて忘れられないのは、andymoriの、あのラストステージ。

人生で一番感動したことはなんですか?と聞かれたら、そこそこ最初の方に思い出す。

人のいのちの輝きを、目の当たりにした2014年8月29日。


おわり。



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