そんなバナナのたたき売り

大きくてきらびやかなビルと大きくてきらびやかなビルの間に狭い狭い八百屋みたいな店があった。
「みたいな」というのは、店頭にバナナしか置いていなかったからである。

かごの中にポツンポツンと置かれたバナナ。

値札には一房250円と書かれていた。

今のバナナの相場に詳しくはないが、おそらく安くはないと思う。

むしろ高い方ではないだろうか。

バナナを見てみると、ところどころ黒ずんでいた。

メインカラーの黄色も黄色というよりクリーム色のような黄色だ。

これらを僕は今、家で思い出しながら書いている。

本当に全て事実だったろうか。

八百屋の場所は結構人通りの多い場所で決して地価が安いとは思えない場所である。

本当だったろうか。

本当に店は狭い場所にあったろうか?

あった。間違いない。

本当に一房250円だったろうか?

だった。間違いない。

本当にバナナに黒ずみが多数あったろうか?

おかしくないだろうか?
黒ずみが多数あるバナナが250円で売っていて、地価の高そうな場所で本当に経営が成り立っているのだろうか?

だが実際にあった。

なぜなら「この黒ずみのあるバナナで、この値段は高い」とそのとき繋がりをもって感じた記憶があるからだ。

では本当にバナナはクリーム色だったのか?

これは怪しい。

記憶が曖昧だ。

「本当は真っ黄色だったのではないのか?」
と言われればそれを完全に否定する材料がない。

ということはクリーム色だったということだけが記憶の改算だったということだ。

黄色からクリーム色に記憶が変わった中で変化したものは何か。

時間だ。

二時間の時が経っている。

記憶の中で黄色に時間を経たせるとクリーム色になることがある。

赤色は桃色になるのだろうか。

しばらく見ていないウルトラマン。

ウルトラマンの模様の色は赤色だった。

だが今思い出しても桃色にはなっていない。

これは例えが悪かったかもしれない。

ウルトラマンは見てないといっても、記憶にこびりついてる強記憶のものだ。

しかも街やテレビ等でもよく見かけるので、その強記憶が常に更新されていく。

駄目だ。

青色は水色になるのだろうか。

しばらく見ていない青色。

薄い記憶の青色。

まてよ。
それはもはやその時点で水色ではないのか。

なるほど、こんな風に色を変える方法があったとは。

ただしそれは自身で制御できない。

あのバナナはもう黄色に戻らない。


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