おふゆき

スヌーピーが好きです。

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最近の記事

イーユン・リー「獄」の代理母出産は無理がある、という話

◆まえがき 学生時代からファンである都甲幸治先生のオンライン講座でイーユン・リーの短編集『黄金の少年、エメラルドの少女』(河出書房新社、2016)を読んだ。  これまで名前は何度も聞いていたものの特に理由もなく読んでこなかったことを後悔するくらい良かった。今年度のベストかもしれない。  しかしながらそのうちの「獄」について、物語のキーとなる部分が明らかに、意図的に、誤っていた。47歳が自分の卵子を用いて代理出産を成立させることはまず不可能であり、できて当然という夫婦の姿勢はお

    • 井上ひさし『國語元年』を読んで

      岡本綺堂の『半七捕物帳』なんかを読んでいるとしばしば「私のような旧時代の人間からすると…」とか「昔の人は…」という台詞が出てくる。 これを発しているのは江戸末期に岡っ引きとして活躍した半七老人で、明治期に新聞記者である「私」に向けて話しているところなので、当然「旧時代=江戸時代」「昔の人=江戸時代の人」である。 さらに半七老人は「今の人から見たらお笑い種かもしれませんが、昔の人は真剣に信じていたんですよ」とか「昔の人はのんびりしたもので…」とか、愛情を込めながらも結構江戸時

      • トニ・モリスン『ジャズ』を読んで

        アメリカ黒人作家として初のノーベル文学賞を受賞したトニ・モリスン(1931-2019)の長編『ジャズ』(早川書房、2010)を読んだ。 舞台の中心となるのは1920年代半ばのアメリカの都会。そこに住むヴァイオレットは50歳で美容師をしている。長年連れ添った夫のジョーが18歳の少女ドーカスと恋に落ち、ジョーがドーカスを殺してしまう。ドーカスの葬式に乗り込み遺体を傷つけたヴァイオレットは周囲から後ろ指をさされながらも、ドーカスがどのような人間だったのかを確認していく。 題名の

        • アーサー・ビナード『日本語ぽこぽこり』を読んで

          『はらぺこあおむし』で有名なエリック・カールの絵本に『えをかくかく』(偕成社)というものがある。 図書館で借りてきたとき息子は12か月くらいだったので、色鮮やかで大胆な絵にしか興味をもたなかったが、声に出して読んでいる親の方は文章のうまさに驚いてしまった。 なんだろう、すごくうまい。絵本という縛りの中で、これまた絵本の自由さをうまく生かしている。リズムもよくて、次のページへの繋ぎかたもすごくスムーズだ。とにかくすごいぞ、なんだこれ。 で訳者を見てみたら「アーサー・ビナード」と

        イーユン・リー「獄」の代理母出産は無理がある、という話

          【試訳】フィッツジェラルド「ヘッドとショルダー」(1920)

          F・スコット・フィッツジェラルドの(たぶん)未訳の短編小説"Head and Shoulders"を試訳しました。少しでも楽しんでいただければ幸いです。

          【試訳】フィッツジェラルド「ヘッドとショルダー」(1920)

          マツコ・デラックス『デラックスじゃない』を読んで

          マツコ・デラックスが好きだ。 どのくらい好きかというと、「月曜から夜更かし」と「マツコの知らない世界」は毎週録画して欠かさず観るくらい好きだ。 日本のゲイ文化が知りたくて、著名なゲイ(オカマ)の著書を読もうと思ったとき、頭に浮かんだのは美輪明宏とマツコ・デラックスだった。 三島由紀夫と交友があった生ける伝説美輪明宏はともかく、マツコ。そのくらいマツコの存在は大きく、かつ身近なものに思えるのだけれど、よくよく考えると彼と私には共通点はほとんどない。性別も体格も年齢も違う。なの

          マツコ・デラックス『デラックスじゃない』を読んで

          グレイス・ペイリー「最後の瞬間のすごく大きな変化」を読んで

          オンライン講座の課題図書であるグレイス・ペイリー(1922-2007)の「最後の瞬間のすごく大きな変化」(文春文庫、1999)を読んだ。 おそらく40歳くらいのアレクサンドラが20代半ばくらいのデニスと出会い、セックスをして、子どもを授かる。アレクサンドラが妊娠したと聞いて激昂した父は発作で倒れ…というストーリー。 アレクサンドラはデニスからの「僕のコミューンで育てよう」という誘いを断り、ソーシャルワークの仕事で知り合った同じく身重の女の子たちと支え合って暮らしていくこと

          グレイス・ペイリー「最後の瞬間のすごく大きな変化」を読んで

          ホーソーン『緋文字』を読んで

          ナサニエル・ホーソーンの『緋文字』(光文社古典新訳文庫、2013)を読んだ。 イギリスから新大陸に渡ってまだそんなに経たないニューイングランドで、美しい女性が処刑台に立つ。胸にはAの緋文字と不義の子を抱いて。しかし父親を明かさないまま、村の片隅で7年の時を過ごす。 緋文字を巡る大人3人の中で、へスターは唯一身を隠したり重大な秘密を隠したりすることなく、徹頭徹尾自分の罪を認め、衆目に(緋文字として)晒している。物語中の独白もほぼ全てへスターのものだ。 正直で献身的なへスター

          ホーソーン『緋文字』を読んで

          Cパラニューク“Stranger than Fiction”を読んで

          “Escort”については別のエントリで書いたのだけど、他をまとめて。メモです。 Testy Festyモンタナで開催される性の祭典。 初っ端からすごいシーンで始まるんだけど、チョコレートプティングとか、どこまで本気でやってるのか分からない。性衝動と、面白おかしくしてやろうという思いと、面白おかしくやらないとやってられないという思いと、面白おかしくやることを求められている感じが交錯している気がする。 Where meat comes fromレスリングに魅了された男達。

          Cパラニューク“Stranger than Fiction”を読んで

          Hスーンズ『ブコウスキー伝』を読んで

          (図書館の、なんと開架コーナーにあった)ハワード・スーンズの『ブコウスキー伝』(2000、河出書房新書)を読んだ。 ブコウスキー個人のことはなんとなく知ってはいたけれど、読む前と後ではまったく印象が変わってしまった。 本書で「フランケンシュタイン」とまで表されるルックス。酷い瘢痕に大きな頭、だらしのない体。 この見た目と、父から虐待されていても母が守ってくれなかったという記憶がブコウスキーの女性や人間関係全般に強い影響を与えることになる。 それが恋愛関係であれビジネス関

          Hスーンズ『ブコウスキー伝』を読んで

          きくちちき『でんしゃくるかな』が好き

          この『でんしゃくるかな』(福音館書店)は読んでいてとても楽しい。 なぜなら電車が来て去っていって電車が来て去っていって電車が来てようやく乗ってバイバーイで終わるからだ。 だいたいいつも次の離乳食のお粥は何グラムにしようかとか考えて脳のキャパシティがいっぱいになっているので、頭を空っぽにして楽しめる絵本はありがたい。 あと、どうしても最近の絵本は色んなところに配慮しているのがビシビシ伝わってきて、読んでいるこっちまで気をつかってしまうのだけど、この絵本は黄色い点字ブロックが

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          とよたかずひこ「ももんちゃん」シリーズが好き

          ターゲット層がおそらく3歳以上なので0歳児の息子には全く刺さらないんだけど、とよたかずひこさんの「ももんちゃん」シリーズ(童心社)がとても好きだ。 桃の頭にオムツいっちょで、跳んだり跳ねたりするももんちゃんの姿が可愛い。 おなかがポコっと出ていて、頭が大きくて、手足が短くて、まさに幼児体型で、デフォルメが上手だなと思う。 特に『どんどこももんちゃん』が好きだ。 どんどこどんどこ走るももんちゃん。 山を登って川を渡って、途中で大きな熊が現れても一心不乱に走り続ける。 その

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          ローリー・ムーア「心をさがす場所」を読んで

          少し前にオンライン講義でローリー・ムーアが扱われて、予習にとこの作品が収録されている短編集『愛の生活』(1991年、白水社)を借りた。 その後返却したものの、この作品がどうも胸に引っかかって、せっかくなので本を買って手元に置くことにした。 ニュージャージーに住むミリーは専業主婦で、夫のヘーンは大学で歴史上のイエスについて教えている。息子のマイケルはクスリをやって身を隠して以来行方不明で、娘のエアリアルはイギリスに留学中だ。 あるとき、エアリアルの知人の知人の青年ジョンがや

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          君は『多摩のあゆみ』を知っているか

          東京都多摩地区を牛耳る信用金庫たましんが発行している小雑誌『多摩のあゆみ』を知っていますか。 これすごい良いんですよ。無料で配ってるとか信じられない。ネットでアーカイブも見れます(https://www.tamashinhistory.org/多摩のあゆみ)。 多摩生まれ多摩育ちで現在も多摩地区のとある自治体で貧乏公務員やってる新選組オタクの私にはよだれを垂らすほど面白い雑誌で、うちにある何冊かも勤め先の郷土館が処分するというのを聞いて「ちょうだいちょうだい!」と言っても

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          Cパラニューク“Escort”を読んで

          チャック・パラニュークの“Escort”(短編集Stranger Than Fiction収録)を読んだ。 3月末に青山ブックセンターで行われたパラニュークと都甲幸治先生の対談で先生が言及していて、後でTwitterで呟いたら先生が教えてくださった。いつもご親切にありがとうございます。 大学を出たは良いものの、稼ぎの良い仕事にも就けずアルバイトをしていた「僕」は、死を待つ若者が暮らすホスピスで働くことになる。 面会に来た家族のために、希望に応じて観光名所や海や山に連れて行

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          らくらくホイップも良い

          最近トーラクさんのらくらくホイップという商品をよく買っている。 あとは絞るだけのホイップクリーム。 生クリームから自分で作るほうがもちろん経済的だけど、泡立てるのってハンドミキサーがあっても結構時間がかかるし、洗い物も出る。あの回るところってもう少し上手く綺麗にできないのかな。 それに思ったより大量にできちゃって使い道にも困る。 これだと手間がないし、開封後も3日くらいは余裕で持つ。 バニラアイスに乗せて、バナナとコーンフレークを添えるとパフェになる。 ミルクティに乗せて

          らくらくホイップも良い