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大人にとっての「学び」。それは、人の思考に触れることだと思う

こんにちは。Voicy代表の緒方です。

この「声の履歴書」という連載は、Voicyがこれまで歩んできた道のりや、いま考えていることについて創業者の私があれこれ語っていこうというシリーズです。よかったらマガジンをフォローしてくれると嬉しいです。

さて、「日本の大人は本当に学ばない」と最近よく言われていますよね。世界的な調査データでも出ていました。そんな状況にあるので、Voicyは「学びが得られる存在になりたいな」と思っていたりもします。

今回は「大人の学び」が叫ばれる中、「そもそも学びってなんだっけ?」というところから考えてみたいと思います。

学びは最下位、ゲームへの課金はトップの日本人

まずパーソルの調査によれば、「仕事以外の時間にまったく学ばない」という人の割合は日本では53%と世界でダントツのトップ。2位オーストラリアと3位スウェーデンは28%なのですごく差がついています。

ただ、その一方でゲームにはかなり課金をしていて、こちらも日本が世界1位です。2位の韓国を大きく引き離していて、日本が149ドル、韓国が95ドルとなっています(こちらは大人だけではないですが)。

SensorTower「Japan Leads Mobile App Spending Per Capita in 2021, Climbing 18% Over 2020 to Nearly $150」より

ですから、本当に「大人が学ばない国」なんですよね。

もっとストレートに言うと「楽を目指す国、日本」になってないかな?と思うんです。「不労所得を目指そう」「できるだけ労働をしないほうが得なんだ」「FIREだ」という風に考えている人が目立ってきたように感じます。

「成長」「勉強」「労働」は苦しいもの、そういったものはできる限り逃げたほうがお得なんだ、コスパがいいんだ、という社会になっているんじゃないかと危惧しています。

Voicyは、そういう中でも学ぼうとしている47%の人たちの役に立てたらいいなと思いますし、かつ、いま学んでいない53%の人たちが日々少しだけ考えるきっかけになってくれたらいいな、とも思っています。

いま、僕らって「仕事をする人にとって学びとは?」ということすらわかっていないと思うんです。「社会人が学ぶ」っていったい何なんだろう。

覚えることは「学ぶ」ではない

僕たちはおそらく、中学・高校までにやってきた「覚える」という作業のことを「学ぶ」だと思っているふしがある。

大学に入ると「考える」ことが増えてくるんですけど、それまでの学習の時間のほとんどが教科書と問題集の内容を「覚えておけば大丈夫」で進んできました。だから、「このあとの人生も覚えておけばいいだろう」と思いがちなんじゃないか。「一度覚えたらずっとそれだけで食べていける仕事」を食いっぱぐれない仕事と言ってないだろうか。

でも、いま子どもを育てている人たちはおそらく、「自分で考える子になってほしい」と思っているはず。「たくさんのことを覚えている子になってほしい」なんてあまり聞かないですよね。

そうするとやっぱり「自ら考える」ということが、「学び」の大きな部分を占めているんじゃないかと思います。

それじゃあ、どうやったら自ら考えられるのか?

たとえば、「なんで昆虫の足は6本なんだろう?」という疑問は、6本足という事実に対して「なぜ?」と考えているわけですよね。それをもう少し未来にも向けるといいと思うんです。

予測不能な未来に対して「こうきたか。じゃあこうしよう」「こうやったらもっと変わるんじゃないか」と考えられるといい。

今年は真夏日が増えたと聞きました。そんなときに「何日分増えたらしい」という事実を知ることも大事ですが、同時に「それが健康にどう影響するのか」「経済にどう影響するのか」「これから自分たちの生活や行動はどう変わっていくのか」という、変化に対する学び・思考もあっていい。

正直、僕らが学生の頃に「きっとこうなるだろうな」と思っていたことは、ほとんどひっくり返されています。携帯電話はスマートフォンになって、高齢化社会になって、AIが出てきて…。そういう中で、変化に対して思考することが学びの大事な一歩になるんじゃないかと思います。

変化に対して考える、人の話を聞く

ここまでで僕が言いたいことは、「本来必要な学びとは変化に対して考えること」なんじゃないか? です。そして変化に対して自分の頭で考えるためには、いろんな人の価値観を取得したり、身の回りで起きている変化を理解したり、思考の幅を広げたりすることが必要になるのだろうと思います。

要は自分の内から出てくるものだけでは、ちょっと足りない。

スポーツと一緒です。上手い人のプレーを見て、はじめて自分でも上手いプレーというものがイメージできる。上手い人のプレーをまったく見ずに、自分なりにプレーしているだけで上手くなることは、余程の天才以外は起こり得ないわけです。

でも僕らは、こと「思考」とか「考え方」という話になった途端に、上手い人の話はほとんど聞かずに、「私なりにやりたいんだ」「自分らしいことが素晴らしい」という人が多い印象です。

「考える」ということに対してのレベルも上げる必要があるでしょう。

人生のロールモデルや参考になる人が何人いて、その人たちからどれくらいの情報を得ているのか。そういったことがこれから成長していくための大きな一歩になるんだろうな、と。

そういう人たちがいつも何を考えているのか、慎重に見ていたほうがいいでしょう。新しい技術、見たことのない変化に対しても、誰が、どういうふうに考えて、何をはじめて、あるいは何をやめたのか、そして「それはなぜなのか?」を考えないといけない。

僕は日頃から多くの人に会うようにしていますが、「この人たちの話をもっといろんな人に聞かせられたらいいのにな」とか「普段会えないような人にも届けられないか」と思って、Voicyをつくったという経緯があります。

即効性のある知識ほど、すぐに陳腐化する

もしかしたら、冒頭の調査で「いま学んでいる」と回答した47%の人たちも、「このソフトの使い方を覚えておこう」「Excelの関数を知っておかなくちゃ」「AIに命令するプロンプトを暗記して…」「上がると言われてる株情報を聴く」「お肌に良い商品を知る」みたいなことを勉強だと言っている可能性もありますよね。

短期的にできることに惹かれがちで、「この場面ではこのカードを出したらOK」と覚えるのが一番コスパが良いと思っている。世の中には、いまさら「考える」なんてコスパが悪い、知識を得るほうが得じゃん、みたいな風潮もあります。でも本当はそうじゃないと思います。

そういった即効性のある知識ってわりとすぐに陳腐化してしまいます。それよりも自分の中に経験則というか、考える法則みたいなものを蓄えておく必要があるでしょう。

子どもの頃、こんなことを言われた記憶がある人、いるんじゃないでしょうか。「いま起きたことだけじゃなくて、本当になんで駄目だったのかを考えなさい」と。

ただ、当の大人はそういうことをあまり考えてないですよね。

Voicyのパーソナリティに共通していること

「考える」ということに関して、おもしろい存在なのがVoicyのパーソナリティ陣です。いろんな人が参加してくれていますが、知識をガンガン詰め込んでくる人ってあまりいなくて、多くの人が自分の考える過程を見せてくれているように思います。

毎日配信をしている人もたくさんいます。なぜそれができるかというと、考えていることを話すからなんです。

「考えている人」は毎日でも配信ができるんですが、「知識を話す人」は尽きちゃうんですよね。だからVoicyパーソナリティは考える人たち。思考と感性、それを伝えるプロです。

いや、でも、あらためて考えると「知識」っておもしろいんですよ。トリビアを紹介する番組やおもしろいマメ知識を紹介する番組がすごく流行ったことがあります。やっぱり知識ってすごく目を引くんです。

その知識をきれいにまとめる人が重宝される時代なのかもしれません。「ここがテストに出るから、ここだけをおぼえておいてくださいね」「嬉しい、まとめ最高」みたいな。

みんな、まとめてほしいんですよね。Twitterを見ると箇条書きのまとめツイートがどんどんおすすめで流れてきます。

そしてみんながそのまとめを倍速で消費して、考えた気持ちになっている。でも、本当はそこにいたる過程が大事だと思います。

大人になってから成長するためには、学ぶことが必要。学ぶとは、変化に対する理解と行動のこと。そのためには意識的に「考える」ようにしたい。そのヒントやお手本、いわば上手い人のプレーというものが、おもしろい人から思考の過程を聞くことなんだと思います。

だからVoicyが、誰かにとって学びのきっかけに、考えることのきっかけに、少しでもなれたらいいなと思っています。そんなサービスにしていきたいです。

先日、Voicyの大型イベント「Voicy FES '23」を開催しました。これぞまさに、「考えるヒントの集大成」です。アーカイブ放送も2023年11月末まで聴けるので、よかったら聴いてみてください。


ーー最後まで読んでいただきありがとうございました。

声の編集後記



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