見出し画像

(第3話) 激化する大都市圏でのホテル開発に嫌気が差し地方都市へ そんな中、見つけた1軒の空き家

私がターゲットにしてきたのは外国人旅行者だ。だから彼らが新鮮だと感じる場所のリサーチを続けてきた。やはり海辺のリゾート地は人気で、日本でも沖縄を始めとしたマリンリゾート地は大人気だ。糸島や唐津などの日本海側や沖縄、五島列島や壱岐など素晴らしい自然環境がある場所も検討したが、私は当初から日本のマリンリゾート地は対象外としていた。

外国人観光客は、バリ島やプーケットといったアジアのリゾート地と比較する。沖縄ですら中国の代表的なリゾート地である海南島に劣る。日本人にはあまり馴染みがないが、中国のリゾート開発は凄まじく、価格的にも品質的にもとてもじゃないが太刀打ちできない現状である。

三亜hotel

△中国海南島三亜のホテル。外資系高級ホテルが乱立している。宿泊価格も2011年当時は日本円で一人一泊1万円もしなかったように思う。


日本で優位性を保てるのは今の所スノーリゾートかスパリゾートくらいか。

豊富な温泉資源を活用したスパリゾートは、古くからの旅館も多く競合や利権などもあって新規参入は難しい。九州では雪がふらないからスノーリゾートもダメだ。

外国人旅行者からみると日本で面白いのは、やはり都市部だ。日本の都市はアジア的な雑多さがありながら、安全で公共交通機関が発達していて、何を食べても美味しい。
都市の中で宿泊施設に適した場所はどこか?

都市型宿泊施設の代表格であるビジネスホテルに適した駅前や繁華街は、宿泊に特化したような施設には最適だ。しかし駅前や繁華街は競争も激しく地価も高い。



2017年ころから日本の大都市圏ではインバウンドの盛り上がりとともに爆発的にホテル開発が進んだ。結果、宿泊施設の価格競争が始まりつつあった。しかし駅前、繁華街などの高立地の地価は高騰を続けた。

そんな状況に嫌気が差し、私は地方都市での展開を模索していた。

日本の地方都市は公共交通機関が発達していて、食べ物が美味しく、買い物も便利だ。外国に暮らした人から見ると、日本は国の隅々までインフラが整った珍しい国だ。

地方都市の中でも駅前は駄目だ。変に再開発されてしまい街特有のキャラクターが消えている。繁華街や観光地なども中途半端な整備が逆に街の魅力を消していて悲惨だが、相変わらず地価や賃料は高かったりもする。


街の中心部に近く、地元の人からは人気がない。なんらかの理由で場所代が安い裏通りや繁華街の縁=エッジは狙い目だ。地元の人が寄り付かないような場所でも、外国人旅行者や私のような余所者にとっては逆に刺激的だったり、ローカルな雰囲気が残っていたりしていて面白かったりする。
そんな場所に魅力を感じる。

地方都市で増えている空き家を宿泊施設として利用するアイデアは私の知る限り2000年台初頭からあったが、当時は集客がうまくいかず事業として採算ベースにのせることが難しかった。

しかし、テクノロジーの進化によってAirbnbのようなサービスが産まれLCCなどの移動交通の発達、そして東アジアの国の発展により、日本の地方都市が世界に対して集客が可能になった。また、上海での5年間の生活体験が日本の地方都市のポテンシャルに気づかせてくれた。そして福岡での経験が外国人旅行者がどんなことに喜びを感じるのか肌感覚としてわかったのも計画を後押しした。

九州中の都市を候補地としてリサーチし、いくつかの物件をピックアップしていた2017年の年末。とうとう長崎で条件に合いそうな一つの物件をみつけた。

そこは車も入れない。最寄りの駅から80mの高低差がある山の中腹にある築70年を超えた木造家屋だ。空き家になって3年ほどたち外観内観ともにボロボロだ。
ただ、最寄りの駅までは徒歩で10分。繁華街までも徒歩で15分で行ける。それに眺望が最高だ。

ここに決めた。

アクセスは悪い。でも駅前やリゾート地にはない、リアルな長崎の暮らしがそこにあると思った。その後、半年ほどかけて自力で改修し、2018年に宿泊施設としてオープン。

これが日本文化に興味のあるチャレンジ精神旺盛な欧米人を虜にした。

2019年には、一軒目に比べると立地的には随分と良くなったものの、似たような立地にある木造長屋の一室を改修した「長崎坂宿ゲスト」を開いた。

ストーリー画像.002

△長崎で空き家を見つけて購入。自力で半年ほどかけてリノベーションをする。

ストーリー画像.003

△1軒目の長崎坂宿ハナレ。浴室は全面的に改修し、残せるところは積極的に残した。

ゲスト.001

△2軒目の長崎坂宿ゲスト。


ホームページに掲載したABOUT STORY(駅前でもないリゾートでもない。
都市のエッジの空き家をホテルにリノベしているワケ。)の文章を分割して掲載しています。続きが気になる方はコチラから全文が読めます。
https://www.nagasaki-guest.com/story


この記事が参加している募集

自己紹介

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?