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書籍【グリーン・ジャイアント 脱炭素ビジネスが世界経済を動かす】読了

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◎タイトル:グリーン・ジャイアント 脱炭素ビジネスが世界経済を動かす
◎著者:森川 潤
◎出版社:文春新書


脱炭素の事例だけみても、世の中がすごく複雑になっているのを感じてしまう。この難問にどう立ち向かうのか。
産業革命以降に地球が温暖化しているという。
人間の活動が直接の原因かどうかについては、反論もあるらしい。
しかし実際には極地の氷は溶けているし、海面も上昇している。
それらが影響しているのか、台風や自然災害などが頻繁に起きている。
どうやらこれだけ極端に人口が増加した地球環境において、これ以上温暖化を進めない方がよさそうだというのは間違いない。
人間が何かを行うだけで、地球の温度にどれだけ影響を与えられるのかは実際分からない。
ただ間違いないのは「世界はその方向で動いている」ということなのだ。
もはや内容の是非はあまり関係がなくなっている。
地球温暖化対策は世界の流れであり、その流れを止めようがないのが事実なのである。
その流れは渦のように複雑に絡み合って、今現在進行している。
これを「経済発展のチャンス」と捉えている人もいる。
かつて石油のルールメイキングによって、たった少数の人たちが世界の富を集めたように。
そして、今こそその石油のルールを根底から覆せるチャンスと捉えている人がいる。
新たなルールメイキングによって、各国間の力関係も相当に変化していくだろう。
その中でどういうポジションを獲得するか、躍起になっている人もいる。
個人的な考え方ではあるが、今の社会のように「化石燃料を使ってエネルギーを取り出す」という方法には、そろそろ限界がきていると感じてしまう。
そもそも何千万年もかかって石油や石炭になったまさに「化石」なので、それを一瞬で燃やして消費してしまってよいものかということだ。
また石油や石炭が出来上がるのは、何千万年も先ということになる。
似たような考え方で、原子力発電は炭素を出さないクリーンエネルギーと言われているが、一方では使用済み核燃料が無害化するのに10万年かかると言われている。
当然10万年間、正しく管理し続けるなんて無理な話で、問題を未来に先送りしているとしか思えない。
もちろん、こういうことを理解していながら、それでは、石油・石炭・原子力を今すぐ無くして暮らしていけるのかというと、そんな単純な話ではない。
「止めろ」というのは簡単だ。
しかし実際に止められるのかというと、それは無理な話なのだ。
戦前のように家には裸電球一つで、薪でご飯を炊いて暮らすなんて、実際に出来るのか?
今の物流や高度な医療だって、エネルギーがあるから実現できている話であって、全てを捨てて生きて行けるのか?
「私は大丈夫。田舎暮らしには慣れているから」と言われても、国家レベルで大丈夫なのかどうかは全く別の話だ。
国防で考えたら、戦車も飛行機も戦艦も持てなくなってしまう。
当然コンピューターだって使えない訳であるし、便利不便の問題だけでなく、他国から攻められたら、守る術が全くないのである。
これだけ資源が豊富な日本を簡単に手に入れられるとしたら、攻めてくる国家は容易に想像できる。
そういうことを考えても、強い国家を維持するためには、高いエネルギーを保持し続けることはものすごく重要なのだ。
しかし、日本はエネルギーの原料を他国からの輸入に頼り切っている状況なので、その面は非常に不安定と言える。
本書ではグリーンジャイアントと言われる次世代のエネルギー企業が注目されている点を上げつつも、今のクリーンエネルギーの流れ、脱炭素の流れがどういう思惑とルールメイキングによって動いていくのかについて説いている。
特に自動車業界で言えば「EV化」の流れは日本にとっても大きな転換点となる。
ここをどうやって突破するのか。次の日本の生き残り戦略はどうすべきか。
それらも含めて論じている書籍であるが、改めて「地球温暖化対策」「脱炭素」は綺麗ごとでも何でもないと気付かされる。
新たなルールメイキングによって、ゲームチェンジを図りたい欧州の思惑が大いにあり、この流れで巨大ビジネスを生み出すのが目的である。
そして、そのビジネスのどの要所を押さえて、世界の富をどう牛耳っていくのか。
まさにチェス盤での戦いかの如く、お互いの駆け引きでゲームは進んでいる。
そういう意味では、大人の事情で作られた流れがこの「地球温暖化対策」と言える。
いずれにしてもそのゲームの盤上に日本も乗せられてしまったのである。
このゲームに参加させられた以上、負けることは国力低下に繋がってしまう。
どういうポジションを維持して、負けないように位置取りしていくのかは、戦略も戦術も非常に重要となる。
自動車で言えば、欧州では全EV化を進めているのは、日本のHV車を追い出すために他ならない。
二酸化炭素を排出する企業は、炭素クレジットを購入して埋め合わせることになるが、これだって製造業で儲けた富を吸い上げる仕組みでしかない。
「CO2を排出して金儲けするなんて許さない」という考え方は、社会の同意を得やすいから、それを利用しているに過ぎない。
いずれにしても、日本の今の状況は、この流れの中では相当に苦しい立場だ。
国内電力事情を考えると、今すぐに火力発電を止めることは現実的に不可能である。
日本の強みである自動車産業も、EV化の流れで苦戦を強いられていくのは間違いない。
太陽光発電は、かつて日本企業が非常に優位だったが、今ではほとんどが中国企業に負けている。
風力発電なども北欧に比べたら普及はまだまだだし、そもそも国内で風力発電の製造運用が確立されていない。
歴史で考えると分かりやすいが、そもそも戦争とは資源の奪い合いが発端で起こるものだ。
日本が戦争したくなくても、他国から仕掛けられたら戦うしかないのである。
そしてその戦いは、必ず負けてはいけない。
そういう意味でも理想的なのは、「他国から攻められないこと」となる。
そして、日本単独で限りなく地産地消出来ることが、他国からも足元を見られにくく、自走して継続しやすい。
日本からグリーンジャイアント企業が生まれれば、世界に対しても優位性を持てるかもしれないが、それよりも国内でエネルギーを自発できた方がプラス面が大きいような気がする。
それらも含めて、単純に何が正解とは言えないが、この複雑化した世界の中でどうやってでも生き残っていくためには、本当に知恵を絞っていかないといけない。
エネルギー問題もさることながら、この50年100年で世界情勢は大きく変わる。
世界人口のピークは2100年頃に120億人とも言われているが、真偽は分からない。
いずれにしても当分は世界の人口は増え続ける。(日本は急激に減り続ける)
それに伴って、エネルギー需要は増し続けるし、食料の確保だって大変になり続ける。
もしかすると、それらが原因で新たな戦争が起こるかもしれない。
そんな2100年に向かって、益々地球温暖化は進み、世界で災害は起こり続けるだろう。
そして、それらが一巡した2100年以後の世界。
世界全体は急激に人口減少に反転していくそうだ。
人口増の要因は、途上国が子供を多産するからであって、その国家が先進国化すると、今度は合計特殊出生率が2未満に落ち込み人口減少に向かっていくという。
もちろん2024年の今生きている人で、2100年以後の世界を見られるのは少ないかもしれないが、
今後の約80年間の間にこれだけの変化が起こることが想定できるのである。
もちろん、今記載した想定外のことだって沢山起きていくことだろう。
特に科学技術の分野はどれだけのイノベーションが起こっていくか想像もつかない。
本当にほとんどすべてがバーチャル世界になっていくかもしれないし、自分の肉体だって入れ替えたり、脳を繋いだりできるようになっているのかもしれない。
つまり未来は、想像を超えて益々変化していく。
複雑化していく社会の中でどうやって我々は生きていくのか。
常に情報をアップデートして、生き方そのものについて考え続けないといけない。
それは国家も企業も個人も同じことなのである。
本当に心からそう思うのだ。
(2024/2/18日)

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