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書籍【業界破壊企業 第二のGAFAを狙う革新者たち】読了


https://booklog.jp/users/ogawakoichi/archives/1/4334044751

◎タイトル:業界破壊企業 第二のGAFAを狙う革新者たち
◎著者:斉藤 徹
◎出版社:光文社新書


起業で絶頂からどん底への経験をした著者。単なる経験談でなく「ここを注意せよ」という点に説得力がある。
だからこそ色々と考えさせられた内容だった。
確かに、今の日本ではユニコーン企業が生まれにくい環境だろうと思う。
しかしその原因は、単なる閉塞感とか、停滞感だけではないはずなのだ。
世界のユニコーン企業と比較して、何が原因なのかを検証することは大事だろうと思う。
事実、世界にインパクトを与えるユニコーン企業が日本からはほとんど生まれていない。
イノベーションを生み出すには、どういう本質を突けばいいのか。
その本質が見えていないのか。
本質は見えていても、核心を突けていないのか。
次のGAFAの地位を狙っている企業のビジネスモデルを紹介することで、日本との違いを認識することが出来る。
まずは他社の事例を見て、自己について深く考えてみることだ。
そうしなければ、何も始まらない。
目の前の仕事をすることは確かに大事であるが、もっと先の未来。
自分たちがどうなりたいかを真剣に考えていかないと、このグローバルの時代では取り残されていくだけだ。
今この瞬間も、業界を破壊しようと命を削って事業拡大をしている人たちがいる。
それも単なる根性論ではなく、非常に賢い戦い方で攻めている訳だ。
既得権益者の都合だけで革新が進まなかった業界が、今まさにガラガラと崩れ始めている。
守ることも大事だが、それだけでは正直成り立たない。
他社がどこから攻めてくるのか、正直予想もつかない状態である。
「本当にそれで上手くいくの?」と思うこともあるし、「そんな手があったのか?」と思うこともある。
いずれにしても、慢心せず、既得権益に頼らずに、逆にイノベーションを起こす側として攻めに転じて行きたいと思っている。
本書の中で企業の事例を紹介しているが、非常に面白い。
「SoFi」という企業は全く知らなかった。
超有名大学を卒業した先輩が、奨学金返済が必要な後輩にお金を貸付するというシステムだが、単純に金利が安くて双方にメリットがあるということだけではなく、ストーリーを売ったことが勝因という。
「名門大学だからこそ、同門の先輩たちが、未来を担う後輩たちにお金を貸す」という物語性が成功の要因だったらしい。
これは非常に納得できる事例だ。
要はこのサービスを利用する人の腹落ち感だと思うが、顧客の心に上手く刺さった例なのだと思う。
リモートフィットネスの「Peloton」も相当面白い。
「なぜこれで熱狂できるのか?なぜこれでビジネスとして成立するのか?」と思ってしまった。
常識では考えられないからこそ、業界を破壊するインパクトがあるのだと思う。
「Synack」も考えてみれば、そのビジネスモデルは秀逸だ。
ホワイトハッカーは元々腕に自信がある輩たちなのだから、その自尊心を刺激するような、まさにゲーム感覚で仕事をさせればいい。
インセンティブの持っていき方が、ツボを心得ているということだ。
これら事例のビジネスモデルは、最初から上手くいくと思って事業していたのだろうか。
もしかすると、緻密な戦略は立ててなかったのかもしれない。
単なる思い付きから始まり、取り敢えずやってみて、幾度となく方向転換しながら、今の形になってきたのかもしれない。
「SoFi」も「Peloton」も「Synack」も、もちろん今の状態が最終形態ではないはずだ。
これから形を変えていく可能性は充分にある。
すでに「SoFi」は大学内に留まらず、様々なソーシャルレンディングに触手を伸ばしている。
企業家としてどこにゴールを設定するかは、勿論本人たち次第だと言えるだろう。
だからこそ「起業に対する考え方」を冷静に指摘している点は、非常に為になる。
「自分はこう見てきた」という起業の経験値を示してくれることで、イメージがしやすくなった。
本書では、人材に関する部分を割愛している点もよかったと思う。
起業に対する人材マネジメントは、それだけでも奥深いため別途で学習した方がよいだろうと思う。
それこそ別著「だから僕たちは、組織を変えていける」が、きっと良い参考書となるだろう。
巻末では「ハッピーイノベーション」という考え方にも触れている。
単純な金儲けや拡大一辺倒だけではなく、それこそ持続可能な形を模索した起業の形。
現在の延長ではなく、プラスアルファな革新性を求めることが、これからの時代は特に必要なのだろうと思う。
自分は破壊される側に甘んじるのか?それとも破壊する側になれるのか?
いずれにしても例え業界を破壊するとしても、社会にとって有益で、顧客にとって価値を提供し続けなくてはいけない。
もっともっと考えて実行することが大切なのだと改めて感じた。
(2023/6/6)



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