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書籍【トレイルブレイザー:企業が本気で社会を変える10の思考】読了


https://booklog.jp/users/ogawakoichi/archives/1/B08BL5X284

◎タイトル:トレイルブレイザー:企業が本気で社会を変える10の思考
◎著者:マーク ベニオフ
◎出版社:東洋経済新報社


単に利益を求めるだけではダメだという時代に来ている。それを体現している会社が「セールスフォース」だ。
確かに企業として利益は必要だ。
しかしながら本書を読むと、もっと大事な「価値観」について向き合っているということがよく分かる。
我々が大事にしているものは何なのだろうか?
果たしてそれは、根底としてどういう思想から生まれたのだろうか?
これらの価値観を大切にするために、我々は具体的にどんなことを実行しなければならないのだろうか?
これからの企業は、特に上記の考え方を明確に持っていないといけないと思う。
ビジネスモデルがきちんとしていたら、もしかすると短期的な利益は得られるかもしれない。
しかし長期的な事業継続の視点で考えたらどうだろうか?
顧客は引き続きその会社の商品を使い続けてくれるだろうか?
優秀な従業員は、長い期間その会社で働き続けてくれるだろうか?
今という時代が本当に転換期な気がする。
かつての常識が揺らぎ、考え方が根底から変わっていく端境期。
著者であるCEOのベニオフ氏は、そういう意味では早くから時代の変化について気が付いていた。
それよりも根底に流れる価値観として「世のため人のため」が根付いている人なのだと感じる。
それは、祖父と両親のエピソードからも伺い知ることができる。
一方で数字に厳しく、企業の成長こそ顧客のためになると信じて疑わない。
善き行いと成功はビジネスの必須要素である、と説いている点でも、彼の心情が理解できる。
本書を通じて、セールスフォースという会社をどういう企業に育てていきたいのか、を語っているが、「価値観は世界を変えるための最も強力なエンジン」なのだそうだ。
それを牽引していくのが、タイトルの「トレイルブレイザー(開拓者)」ということか。
企業の経営者が記す書籍は、大抵は自慢話か、逆に謙遜し過ぎて本質が伝わらず退屈という2パターンが多いと思う。
本書はそのどちらでもなく、自身の失敗談が大いに盛り込まれており、「理想はあるが、悩みながら企業経営をしている」という観点で書かれているところは独創的に感じた。
自身の1つのツイートから、ネット炎上した話も赤裸々に語っている。
決して言い訳はせず、炎上に至った点を冷静に分析し、反省のコメントとして記載している。
人間である以上、完璧な人間などいるはずがない。
しかし企業の経営者である以上、発言や行動は非常にシビアに見られている。
自身の何気ない態度が、実は差別的ではないかと指摘されてしまう。
正直、どういう態度が正解なのかは誰にも分からないし、おそらくその会社の状況や社会情勢、時代によっても大きく変わることだろう。
企業のトップはことさらながらに大変であるが、こういう点を意識していかないと、企業としては今後特に生き残れないということなのだ。
顧客からの信頼だけでは足りず、従業員からの突き上げ自体も非常に鋭いものがある。
全方位に渡り注意をしなければならない点が更に難しいところだ。
ベニオフ氏も従業員からの指摘で何度も謝罪することになっている。
(そのことも本書で正直に語っている)
今の時代は特に、やり方を1つ間違うだけで、取り返しがつかないくらいのダメージを負うことになってしまう。
しかし、それらを未然に制御することはほとんど無理に等しい。
だからこそ、根柢の価値観を磨き続けて、人間力を高めていくしか方法がない。
「道徳心」「美意識」がこれからの時代、特に大事だと言われているのはよく分かる。
そういう意味でのCEOの苦悩が本書では読みとれる。
どれだけ社会に対して真剣に向き合うのか。
そういう企業でなければ生き残れない。
ようやく築いた企業文化をどうやって成長させていくかが非常に大事だ。
従業員がCEOに率直に意見が言える文化を持っている会社は貴重だと思う。
企業をどうやって継続させていくかを真剣に考えるなら、企業文化の継承をどうするか真剣に考えていかなければならない。
自分の会社は今後どうすべきか。
社内でもっと議論しなければならないと、必要性を殊更に感じるのだった。
(2023/6/16)



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