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書籍【ライフピボット~縦横無尽に未来を描く 人生100年時代の転身術】読了

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◎タイトル:ライフピボット~縦横無尽に未来を描く 人生100年時代の転身術
◎著者:黒田悠介
◎出版社:インプレス


長い人生において、どれだけ自分自身を内省し、客観的に見つめられるかが今後の生き方として重要になる。
人は意外と自分のことを理解できていないものだ。
自己の保有スキルについては、多少把握しているかもしれない。
しかし、その保有スキルが客観的にどれだけの市場価値であるかについては、ほとんど把握できていないだろう。
確かに今の社内では自分のスキルに希少性があり認められているかもしれない。
ただ一歩外に出たら、そのスキルは他社でも通用するのだろうか?
一般的に高いスキルだと言えるだろうか。
ここまで自己分析している人がどれだけいるのか、ということなのだ。
これからの時代は、あくまで社会的に通用するスキルを持っていないと生き残れない。
これは間違いない。
それでは「どんなスキルならOKか」という明確なものを示せるものだろうか。
これだけテクノロジーの進化が早く、社会構造そのものが大きく変革していく中で、唯一の解答を示すことは最早不可能だろう。
弁護士や医師ですら、もしかするとAIロボットの進化によって、仕事が奪われてしまう時代だ。
「この資格を持っていれば安心」ということは最早あり得ない。
獲得が困難な高レベルの資格であっても、こんな状態なのだ。
そこまで学力に自信がない中間層はどうすればよいのか。
本当に成す術がないのか。
これらを考えた上でも、まずは1つのスキルに執着するのを止めることだ。
リソースを大幅に割いて、高レベルの資格を1つだけ取得しても、生存戦略としては余りよろしくない。
本書で説いているのは単純で、レベルの高低ではなく、まずは1つのスキルだけに留まらないようにすること。
様々なスキルをピボットして獲得すべきことを最優先にせよ、ということなのだ。
結局、職を追われたら他の職に就くしかない。
そうなった時に慌てるのではなく、そうならないように今の内に対策しておけということだ。
確かに様々な仕事が出来るようになっていたら、器用に新しい仕事もできそうだ。
しかし本書で説くことは、もう少し解像度を上げた話である。
様々なスキルをピボットして獲得していく行為は、闇雲にバラバラなスキルを取得することではない。
あくまで関連するスキルや仕事にピボットすることで、スキル自体を多重化し、それぞれに相乗効果を生み出せるようなスキル獲得を目指せということなのだ。
これは非常に腹落ちしやすい。
それぞれが関連しないスキルであれば、あくまで1つずつの単体スキルであるが、関連する多重化するスキルであれば、掛け算のように、もしくは梃子の原理のように、効率よく拡張化できるからだ。
同じ業界内で、接客業からバイヤーになり、デザイナーになっていくというのは、もしかすると今までも出世街道の道筋であったかもしれない。
倉庫の在庫管理から、経理を覚えて、様々な業種の販売管理のプロになることも似たような拡張方法だ。
結局、かつての時代にも出席街道を走る人は、仕事の幅を増やしてスキルを獲得していった。
これを1社内だけで行うのではなく、もっと広い視点で解像度を上げて行おうというものが、本書の主張だ。
まずは、自己認識が何よりも大切だ。
自分が今どんなスキルを保有していて、それがどれぐらいの威力なのか。
さらに、自分はどんな性質で、今後どんな仕事であれば苦にならずに行えるのか?
そういう点も含めて、スキルを棚卸して、内省してみるといい。
これについては、きちんと紙に書き出して客観的に眺めてみる。
そうすると、次の進むべき道が見えてくるということなのだ。
本書では「ハニカム構造で考えてみる」という手法を進めているが、これを試すのも一案だろう。
いずれにしても3方向で見直してみると良いという。
(1)自身の今のスキルについて(何が出来るのか)
(2)人的ネットワークはどうか(コミュニケーション密度がどの程度か)
(3)自己を内省する(自分自身の性格をどれだけ認識しているか)
結局、自分が出来ることと、好きなことは異なるということだ。
これは(1)と(3)を対比し俯瞰で考えてみると分かりやすい。
そして(2)については、気が付きにくいことではあるが、実は自身にとって大きな力になっていることを認識するべきだ。
単純に自分の仕事の繋がりや友人関係などの人物を羅列してみて、それらも俯瞰して眺めてみる。
意外と「こことここを繋げたら、面白いかも」なんてことが思い浮かぶかもしれない。
「自分には人脈がない」と思ってしまいがちだが、そんなことはない。
それなりに何十年も生きていれば、必ず誰かとの接点の中で生きてきた訳である。
それらを改めて一覧化して棚卸するだけでも、気付きがあるということなのだ。
そして、改めて(1)と(3)になるが、スキルというのは本当に不思議なものだ。
自分にとっては本当に大したことでは無くても、他人にとってはものすごく高いハードルのものがあったりする。
「え?こんなことで喜ばれるの?」という経験は少なからずあると思うが、実はこれこそがあなたの価値なのである。
例えばであるが、PCやスマホのセットアップが苦手な人はある一定数存在する。
一方で、そんなセットアップ程度は何の苦労もなく簡単だと思っている人がいる。
これはITに関する話だけではない。
料理だって苦手な人は多いし、ちょっとした裁縫が苦手な人も多い。
仕事も分解してみると、実は様々なスキルが見えてくる。
喋ることが得意な人もいれば、苦手な人もいる。
計算が得意な人もいれば、当然苦手な人もいる。
ファシリテーションだって、ホワイトボードに書くことだって、文章にすることだって。
そして場を仕切ることが得意だったり、逆に人のサポートが得意だったり。
つまりは、自分にフィットしたことを仕事にするのが一番だということ。
その中で、少しずつピボットして、自分の出来る範囲を増やしていくこと。
これをどれだけ見つけていけるかが、今後の人生を生き抜く鍵とも言える。
単純だが、これが出来れば社会がどれだけ変化しようとも大丈夫だろうと思う。
自分自身で分析が難しければ、これこそ信頼できる同僚などと一緒に取り組んでみるとよい。
「相手はこう思っていたのか」という意外な発見があるかもしれない。
これからの人生はとにかく長い。
そして、スキルの寿命は益々短い。
どうやってこの世界を生き抜いていくかを真剣に考えた方がいいと思っている。
(2024/1/21日)


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