庭園ZINE

庭園が好きな社会人1年コンビ。

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清澄庭園(紀行編)ーー借景はスカイツリー

広い池に弱い。庭一面に大きな池が広がる景色に弱いのだ。私たちは庭園鑑賞が好きで、これまでにもいくつかの庭園を巡ってきたのだが、広い池を持つ壮大な景色の庭園は無条件に「いい庭」としてきた。私たちが見てきた中でいうと京都の大沢池、修学院離宮が特によかった。水面に映るクロマツは、実像のクロマツよりもグッとくるものがある。東京で同じような感動を覚えたのが清澄庭園だ。園内に入るといきなり広大な池が広がっていて、やはりどの角度から見ても美しい。そんな清澄庭園はさらに私たちを魅了するおもし

    • 『ジョン・ウィック:コンセクエンス』の庭園

      キアヌ・リーヴス主演のアクション映画のシリーズ第4作『ジョン・ウィック:コンセクエンス』を見た。169分間ずっと誰かが殺し合っているこの作品の中で庭園がいくつか登場したので紹介していく。 1.大阪コンチネンタルホテル屋上庭園(架空) キアヌ・リーヴスはシリーズを通してずっと命を狙われているわけだが、今作ではまず旧友を頼って大阪にやって来る。その旧友が真田広之で、シリーズの重要な架空ホテルチェーン「コンチネンタルホテル」の大阪支店の支配人。撮影では、外観に六本木の国立新美術館

      • 映画『ミステリと言う勿れ』を見て

         今回のテーマは、映画『ミステリと言う勿れ』。一見、庭園とはなんの関係もないように思われがちだが、群馬の楽山園、そして横浜の三溪園をロケ地にしているという意味で、れっきとした庭園映画である。というわけで、まずは簡単なあらすじから見ていこう。  主人公の久能整(菅田将暉)は、美術展を見に広島を訪れていた。そこで、高校生の狩集汐路(原菜乃華)と出会う。半ば強引に、狩集家に連れられた整は、過去には死者まで出たという狩集家の遺産相続をめぐる問題に巻き込まれていく。 狩集家のメンバー

        • コロナになりました

           コロナにかかってしまった。これまで頑張ってかわしている方だと思っていたが、このタイミングでの初コロナ。すでにコロナにかかった知人は、1日目、2日目で熱は下がるが、3日目以降、喉が切れたんじゃないかと思うくらい痛む、と言っていた。4日目の今。喉が切れたんじゃないかと思うくらい痛い。つばを飲み込むたびに、相当な覚悟をしなくてはいけない。1日に何度も、その覚悟をしていると、変に体力が吸い取られ、熱はないけれどなかなかしんどいというのが現在の状況である。  そんな状態でも、家でゆ

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        清澄庭園(紀行編)ーー借景はスカイツリー

          中国庭園リターンズ

           瀋秀園は神奈川県川崎市、大師公園の中にある中国庭園。中国の瀋陽市から友好都市提携5周年を記念して寄贈されたものである。滝、石、築山、橋、植栽など、どれをとっても中国感あるすばらしい庭園なのだが、5周年でこんなにいいものをプレゼントして後々だいじょうぶか、という不安も同時に感じる。恋人にあげる〇周年のプレゼントなど、こうした記念品は、前回よりも良いものを、が基本である。いいものをあげたい気持ちは山々だが、あまりにもハードルがあがりすぎないよう、次を見越していい塩梅に落とし込む

          中国庭園リターンズ

          「羽田空港」

           羽田空港に行った。飛行機で旅行するために、ではなく、庭園を見るためにである。羽田空港にも庭園がある。国内線第1ターミナルにある「花の楽園」だ。この庭園を手がけたのは、イギリスのチェルシーフラワーショーにおいて 3 年連続ゴールドメダルを受賞した石原和幸氏。ウェスティンホテル東京の「ウェスティンガーデン」なども手がける凄腕の庭園デザイナーだ。ちなみに石原氏はよしもとクリエイティブ・エージェンシー所属という異色の経歴を持つ。  さて、期待を膨らませて行った我々だったが、結果的

          「羽田空港」

          庭園日記です。

           本日より庭園日記、というものを始めてみようと思う。庭園日記とは名前のとおり、庭園まつわる日記である。庭園紀行のようなものになるかもしれないし、日々庭園について考えていることを綴る形になるかもしれない。内容や期間、文章の長さについては正直まったく考えてはいない。ともかくここ数年、ずっと庭園が好きで、庭園について考えない日はなかったため、せっかくならメモがてら文字に残しておこうと考えたのである。  記念すべき第1回は、庭園巡りを共にしている相方との関係についてお話したい。私と

          庭園日記です。

          三溪園(紀行編)――ついに横浜に行ってきました!

          暑い日が続いている。「年々暑くなっている」とは毎年耳にするセリフで、信憑性にはいささか疑問があるものの、今年の夏こそは今までで一番暑い夏とみてまず間違いないだろう。この日もあいかわらず太陽が照りつけてはいたが、私たちは横浜にいた。目的はやはり庭園を鑑賞するためだ。横浜庭園の代表格、三溪園に行くのである。私たちのような無類の庭園好きにとって多少の暑さなんかは関係ない。暑さに負けるな!という強い意気込みで、私たちは待合(待合:茶庭において茶会に参加する人々が待ち合わせるところ。要

          三溪園(紀行編)――ついに横浜に行ってきました!

          六本木ヒルズの毛利庭園(知識編)

          毛利庭園は六本木ヒルズの付属庭園。よって森ビルが管理している。もとは毛利秀元(1579~1650)以来、長府藩の江戸屋敷だった。明治時代になって所有者がいろいろと変わって、1952年からニッカウヰスキー、1977 年からテレビ朝日が所有。2000年から六本木の再開発が始まって、2003年の六本木ヒルズのオープンとともに「毛利庭園」となった。森ビルの「森」と「毛利」の音が似ていたり、オープンの際に宇宙飛行士の「毛利衛」が庭園内の池にメダカを放流するイベントを行なったり、ダジャレ

          六本木ヒルズの毛利庭園(知識編)

          浜離宮(知識編)

           浜離宮は「離宮」(天皇の別荘)といいながら「大名庭園」である。この訳はすぐ近くにある旧芝離宮と同じなので、前回の投稿「旧芝離宮(知識編)」をご一読願いたい。  江戸の大名庭園は、水戸藩・徳川光圀の「六義園」、側用人・柳沢吉保の「後楽園」、小田原藩・大久保忠朝の「楽寿園」(現・旧芝離宮)などがあるが、今回の「浜離宮」はどんな大名の庭園か。大名のトップ・オブ・トップ、徳川将軍家である。浜離宮は徳川将軍家の別荘だったのだ。別荘になった経緯を説明すると、もともとは甲府藩主・徳川綱

          浜離宮(知識編)

          旧芝離宮(知識編)

           旧芝離宮は、小石川後楽園・六義園と並ぶ江戸時代の大名庭園。しかし名前は天皇の別荘を意味する「離宮」。どういうことか。離宮の最も有名な例は京都の桂離宮と修学院離宮だろう。この2つは江戸時代に天皇の別荘として作られた庭園。一方で旧芝離宮は江戸時代に作られた大名の庭園を、明治時代になって宮内庁が購入して天皇の別荘となった。要は、桂離宮と修学院離宮が新築物件であるのに対し、旧芝離宮は中古物件というわけだ。そのうえ1924年からは東京市(現・東京都)の所有になっているので、実際に天皇

          旧芝離宮(知識編)

          小石川後楽園(知識編)

          「後楽園球場」「後楽園ホール」は知っていても、その元ネタである「小石川後楽園」を知っている人は少ない。「後楽園球場」(現・東京ドーム)も「後楽園ホール」も、みな「小石川後楽園」の隣にあるから「後楽園」という名が付けられたのだ。  では「後楽園」とはどういう意味か。これは「先憂後楽」(人より先に心配し、人より後で楽しむ)という政治家・リーダーの心構えを表す中国由来の言葉からきている。  そんな小石川後楽園をつくったのは水戸藩の初代藩主・徳川頼房(1603~61、家康60歳の時

          小石川後楽園(知識編)

          六義園(知識編)

           六義園は江戸時代の柳沢吉保(1659~1714)という政治家が自ら設計した庭園。吉保は5代将軍・徳川綱吉(1646~1706、生類憐れみの令でお馴染みの)に寵愛され、その出世物語は講談『柳沢昇進録』として今も寄席に行けば聞くことができる。目まぐるしい勢いで出世するなかで貰った土地の1つがこの六義園だ。1702年に吉保自ら設計してオープンした。「六義」とは、紀貫之(?~946)が『古今和歌集』(905)の序文で記した和歌の分類方法(さらにその元ネタは中国の詩の分類方法)。吉保

          六義園(知識編)

          小石川後楽園(紀行編)――旅行気分を味わいましょう

          小石川後楽園は楽しい庭園だった。私たちは今回で2度目の訪問。前回も感じたことではあるが、やはり小石川後楽園ほど賑やかな庭園は他にないと思う。というのも借景。借景とは、庭園の外の山や海などの景色をあえて見せ、空間に広がりを感じさせる日本庭園の技法のことだが、ここ小石川後楽園の借景はまさかの東京ドームである。さらにその奥には東京ドームシティアトラクションズのジェットコースターが見える。ジェットコースターが見える庭園に、少なくとも私たちはこれまでに一度も訪れたことはない。そもそも日

          小石川後楽園(紀行編)――旅行気分を味わいましょう

          旧芝離宮恩賜庭園(紀行編)――借景は建設中

          庭園には様々なしかけがある。例えば、水の上を歩いているような気分が味わえる「沢飛石」があったり、舟や橋を使って池に浮かぶ島に辿り着くといった、冒険心をくすぐられる「中島」があったりする。これらはすべて来園者の心を惹きつけるために作られたものである。私たちは園内にあるこれらの要素のことを「アトラクション」と呼び楽しんでいるのだが、ここ旧芝離宮恩賜庭園は私たちのようなアトラクション目当ての来園者に優しい。なぜなら、エントランス前に園内の各アトラクションの看板がずらりと展示されてい

          旧芝離宮恩賜庭園(紀行編)――借景は建設中

          浜離宮恩賜庭園(紀行編)――海を題材にしたテーマパーク

          日本庭園の様式 日本庭園の様式はややこしい。私たちはこれまでに数々の庭園にインパしてきたつもりだが(インパとはインパークの略で、主にディズニーオタクの間でランドとシーに入園することを言うのだが、私たちは庭園を訪ねることもインパと呼んでいる)、いまだに訪れた庭園に対して、「これは○○式庭園だ!」と自信を持って答えられないケースは多くある。そもそも様式というのは、具体的には「池泉回遊式」とか「枯山水」とか「浄土式」とかたくさんあるのだが――私たちも当初、これらの名前を聞いたこと

          浜離宮恩賜庭園(紀行編)――海を題材にしたテーマパーク