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コミュニティはいつから老化するのか?ルールからコミュニティの遺伝子を読みとく◆『遠くへ行きたければ、みんなで行け』(3)【ぷろおご伊予柑の大預言 番外編】



2022年12月8日に行われた読書会は、『遠くへ行きたければ、みんなで行け』の訳者の方々を特別ゲストにお招きしました。
今回より、木曜の読書会スペシャルをお送りします。

◆『遠くへ行きたければ、みんなで行け』編

No.1 木曜の読書会スペシャルの背景とゲスト紹介
No.2 『People Powered』のコミュニティ観について
No.3 「遠く」ってなんだろう
No.4 コミュニティは手段?それとも目的?
No.5 心地のよいコミュニティってなんだろう
No.6 コミュニティの価値に気づくには?
No.7 コミュニティに入るときに気をつけたいこととは?
No.8 コミュニティのサイズとバリエーションの相関関係

遠くに行きたくないぷろおごが遠くに行かなくてもいいように、お金が集まってくる


高須さん:何かのためにお金くださいみたいなのが下手になると、コミュニティ系大体失敗しますよ


ぷろおご:クラウドファンディングは目的ベースで集めるよね

高須さん:ぷろおごさんの場合、おれに奢れって言ってたり、別に奢られたからって何かするわけではない、って書いてあることが結構大事なポイントで

伊予柑:商品性が明確である

ぷろおご:つまりキャバクラみたいにワンチャンとか隠れた下心がない、と

高須さん:世界の恵まれない人を救いますとかになってないのがいいこと

ぷろおご:ああー!逆にね

高須さん:うん

ぷろおご:そうすると平気で安全なんだ

高須さん:この本の悪い例で結構書いてあるんだけど、要はみんな、本当は違う綺麗事とかを言いがちなんですよ。コミュニティマーケティングとかをやる時も、本当はオレの製品を売りたいだけなんだけど、日本をこういうふうにしたいと言って人をタダ働きさせる人も多いわけです。でもそれは、正直にやるより大体うまくいかないんですよね



ぷろおご:同業者というか、今YouTuberとか、Twitterでフォロワーが多い人が「サブスクが儲かるらしい」となって、メルマガは更新するのがめんどくさいからオンラインサロンやろうみたいなかんじで「どうやんの〜?」って聞いてくるんですよ。

言ってしまえば、コミュニティをやってるなかでは、おれのオンラインコミュニティはかなり上手くいってる方だから、どうやってやってるの、どうやって作ってんの?って言われるんですけど、おれはなにもしてない。

本当になにもしてなくて、個人的にコミュニティに参加して、今日みたいなのを聞きにきたり、話すとか、チャットを見てワイワイガチャガチャ楽しむとかはするんだけど、オーナーっぽいことはなにもしてないし、所有感もない。オレの街だ、みたいな感じもないから、育ってても育ってらっしゃる、って人ごとで、それもおなじ原理がはたらいてるのかなっておもっちゃった。

おれはコミュニティをどうにかするっていうのがそこまでない。


この本は2周したんですけど、あんまりおもしろくないなっておもっちゃった部分もあった。その、なんでおもしろくないのかなっていう理由がおもしろくて、べつに遠くに行きたくないんですよね。べつに遠くに行きたくないなあって気持ちがあったからnot for meだった。


遠くにいる人と遠くに行きたい人のギャップはどこからうまれるのか?


ぷろおご:僕に向けられた本ではなくて、遠くに行きたい人がみんなで行く方法をまとめた本だから、たしかに、言ってることは正しい。実際、僕のコミュニティでうまくいってる要因を後づけで考えていくと、ここの本に書かれてることはほとんどやってるんです。

だから、うまくいってんだな、納得。とおもうぐらいで、すごくおもしろみを感じたかと言われると、そんなこともなく・・・


前提として、すけべな本だなとおもったんですよ。
すげえいいコミュニティを所有したいけど、所有してないっぽく振る舞うといいぜ!っていうような。Twitterのナンパ師の女たぶらかし講座みたいな


伊予柑:「セフレをつくろう」

ぷろおご:セフレをつくりたかったら、余裕を持って、お前なんていらねえよって振る舞うといい。でも内心はモテたいみたいな。そういうダサいTinder男みたいだなとおもっちゃった。どうしても。

そういう意味でつまんないけどおもしろい本だなとおもった。それは僕の感想の総括ですかね



ゆーさん:遠くに行きたかったんじゃないですよね。結果として遠くに行っちゃって、ほかに遠くに行きたい人がいるからそういう本を書いた


ぷろおご:著者が?

伊予柑:どっちなんだろうな


ゆーさん:そのへんも知りたいですね。基本そういう人たちって遠くまで行こうというよりは、やりたいことをバーッとやっていたら、あれ、みんないねえなってなって、みんなこういうのできないんだ。じゃあやり方、僕らがやってきたことを教えるよっていうような



ぷろおご:そういう雰囲気ですよね。ギャップを感じるんですよ、温度に。

最近のビジネスの人たちが語ってる「遊牧民」みたい。あいつらはどこにも所属せずなにも所有せず、動きまわることを美としていて、かっこいいだろう?だからいいんだぜ、みたいな。

とはいえ、あいつらは今から日本人になって普通に社会に入れるってなったら、たぶんみんなと同じように定住するとおもうし、バイト先見つけて働いてるんじゃないかなっておもうんですよ。

だけど、特別な理念を持ってやってるんだぜ、みたいな。そういうクサさを感じますね。そこで例にだされてるコミュニティも、まあ、言われてみればうちもそういうふうになってるかもしれないな、ぐらいに思っているとおもっていて、そういう意味ですけべな本だなとおもいました


なぜ、「遠く」を知り、目指すことができるのか?


山形さん:山形の最初の気持ち悪さみたいなのと大体似たような話だな、と。今の話、タイの遊牧民を研究してらっしゃる方としてはどうなんですか?

伊予柑:まったく遠くにいかない人を見続けて、


ゆーさん:遠くに行かないですね。レヴィ=ストロースが熱い社会・冷たい社会というかたちで言ってたんですけど、熱い社会はどんどんヒートアップしていくしかなくて、


ぷろおご:熱い社会って現代日本みたいなかんじ?

ゆーさん:うん、現代日本。文明がどんどん進むしかない。冷たい世界は同じ、サスティナブルって言っていいのかわかんないですけど、ぐるぐるしていて、タイの人たちはぐるぐるしている

ぷろおご:冷たい方?

ゆーさん:そうそう。僕も、遠くに行きたいの?っていうところをまず自分に問うたら、別に遠くに行きたくないなあと思った。

遠くに行きたくない人たちにもコミュニティは発生するわけですよ。遠くに行かない人だからこそできるコミュニティみたいなものもあって、そのなかで生まれるものも、もちろんある。僕はそっちの方が居心地がよかったんです


ぷろおご:ムラブリみたいな?


ゆーさん:ムラブリみたいなコミュニティの方が、個人個人でまず生きていて、ひとりで生きられるんですよね。自分で家を建てられて、自分でご飯作れて、薪ですけどエネルギーも自分でとれるんですね。

その前提のうえで、一緒に住んでいた方が色々やりやすいよね。たまに狩りに行ってデカい動物の肉食えるし、薪も順番にとってくればいい。ひとりにひとつ焚き火はいらないですからね。そういう自分ひとりで生きられるよっていう前提でコミュニティが生まれてくると、いつの間にかできることが増えていて



ぷろおご:結果遠くに行こうと思えば行ける状態になるってことね


ゆーさん:そそ、遠くに行こうとする状態が最初からあるっていうのはすごく特殊に感じる

ぷろおご:モテたいやつのモテるため講座みたいな。いやいや、モテないやつがやったってダメだよ、っておもうんですよね


ぷろおご:さっきの話に戻るんですけど、フォロワーの多いYouTuberがマネタイズに困ってコミュニティをやるって言って、「コツない?」って聞くんですけど、「うーん、つまんねえやつにはむり!!」としか言えない。

ほんとうにこの話ってすけべだなあとおもっていて、すけべ心が出ちゃうような状態にある人たちはそれを隠せないし、それが明確にするところは、表向きはかっこいいこと言ってても、どうせタダ働きさせるんでしょう?どうせやりモクなんでしょ?っていうようななんか・・


高須さん:そのへんはだいぶ修行が要りますね。僕は一貫して遠くに行きたい人だったので、いろんなコミュニティにこっちから入っていくみたいなこともやったんですよ。

やっていくと、ところどころでオーガナイザーのエゴが見えるなあとか、冷める瞬間がいっぱい見えるんですよね。そこは、本を読むだけではわからない話だという気はしていて。

ただ、そもそも「遠くに行きたくない」だとnot matchだと思われる




伊予柑:山形さんの見ている開発支援の世界では、支援されてる方はみんな遠くに行きたくないんじゃないですか?



山形さん:原則的には行きたいって言ってるから支援したっていうのが、前提にあります。

基本的には、我々が「お前ら遠くに行け」って言って尻を叩くわけではなくて、建前上は向こうが「僕たち遠くに行きたいんですけど、やり方を教えてくれませんか?」って言うから、「しょうがねえなあ」って行ってあげてるというようなたてつけ。本当にそうなってるかというと、難しいところはある。


あらゆる人が「遠くに行きたい」と思ってるかはまた別の話
で、個別に君たち病院ほしいよね、学校ほしいよね、あれ欲しいよね、これも欲しいよねっていう話を積み重ねていくと、じゃあ遠くに行くしかねえよなという話になって、じゃあオレたちの言うことを聞けよ。という話になるわけです。


全体としてそうしたいと思ってるかっていうのは、開発援助関係者が一度は悩むところではあります。本当にこれでいいんだろうか?この人たちのためなんだろうか?この人たちは木になってるマンゴーを食べてずっと暮らしていけばいいんじゃないだろうか?と思う一方で、

何かあるともうちょっといい生活させたいなあとか、この子はずっとこの村にいなきゃいけないのか、それはちょっとかわいそうだな、水ぐらいはあげたいよね、引きたいよね。っていう話になるとそっちに行っちゃう。これは難しいところです。

なので、ある時には、うるせえ!発展しろ、今グダグダ言ってるけど、しばらくしたら君たちNINTENDO Switchから離れられなくなるんだからさあ。人間なんてそんなもんだからさ、今うだうだ言ってるのは、ただソトを知らないだけなの!ってひっぱ叩いてやらせるっていう話になります


伊予柑:レヴィ=ストロースに怒られそうな話だ


高須さん:ほとんどの国では遠くに行きたがりますよね。赤ん坊が簡単に死なない、平均寿命を伸ばしたい。

そもそも家に冷蔵庫がないと揚げ物しか食えないんですよ。もうちょいうまいもんが食いたいとかみんな思うわけですよね。冷蔵庫ぐらいはほしいよね、みたいな。

今、私は50歳なんですけど、20歳だった頃と今とで、世界で冷蔵庫持ってる率がたしか4倍ぐらいになってるんですよ。

何十億人が揚げ物しか食えなかった時代からもうちょいマシなものが食えるようになってて、そういう年代の人は真面目に働きますよね。電子レンジとか冷蔵庫がない状態だと、相当頑張ってもある方に行きたいじゃないですか


人が集まって何かをやるには、目標は必要なのか?


伊予柑:秋田先生は冷蔵庫がある学生たちにアントレプレナー教育をしなきゃいけないわけですけど、学生のみなさんは遠くに行きたがっていますか


秋田先生:そうですね。そこはちょうど今日ここにいる学生に聞いてみたいですね


伊予柑:おお、すごいいいパス回し。さすが教授、本職!はい、じゃあ学生の柊さん

ぷろおご:「あなたは遠くに行きたいですか?」


柊さん:僕は遠くに行きたいというか、単純に面白いことができたらいいなと思って、この場所にいますね。環境が整っているとか面白そうな教授がいるとか、そういうのをざっと調べてこの学部に決めてました。

まわりから大学ハックしたら楽しいよという煽りもあって、とにかく楽しいことがしたくて。自分が楽しみながら面白いことをやっていける場所はどこかな?と考えたら遠くに行くことのできる環境だった、みたいな感じかもしれないです


伊予柑:今の話は示唆的で、この本だとビッグロックスを決めなさい、大目標をちゃんと決めようよ。みたいな正論が書かれているんですけど、本当にオープンソースコミュニティとかいろんなコミュニティは、大目標からはじまったのか。遠くに行きたくてはじまったのか、ノリでやってるうちに遠くに行ったのか、という話ですよね


高須さん:実は、それは結構大事なテーマで、ビッグクロックスとか決めないとコミュニティが老害化するんですよ


伊予柑:なるほど


長続きするコミュニティには、若者がいて、「みんなのルール」がある


ぷろおご:コミュニティだけ残ってるんだ


高須さん:そう、最初はなるべく人間のまわりに集まるんですよ。だから、だいたいのコミュニティリーダーはいい人で、周りにいる人も優秀な人が多いんですよ。けど、そういう状態で5年とか10年経つと、そいつらがどんどん歳をとっていくじゃないですか。

そうすると、若者が入ってこなくなるんですよ。どんなに優秀でも5、60代ばっかりが群れてると20代は入ってこなくなるし、だんだんだめになっていきますよね。

うまいことやっているコミュニティには年の問題だけじゃなくて、イケてるリーダーが頑張ってやってると、もっとイケてる人が入ってこなくなる問題とかもある。

20代の時点で世界トップ5のプログラマーだったとして、その人が35の時にトップ5かというと微妙な感じで。かといってコミュニティは世界のトップ5に居続けてもらわないと困るんだけど、若い優秀な人を人間的な魅力だけで引っ張ってこれるのかというと、あんまりそうではなくて

それはオープンソースの世界でもまあまあある。そんなわけで、最初はエースプレイヤーが頑張って引っ張るんだけど、エースが持ってる常識が古くなったりするから、ある段階になったら、ルールブックを作ろうよとか、選挙の仕組み作ろうよとかそういうことをはじめるんですよね。それができなくなるとどんどん老害化するんですよ


伊予柑:それはもうだいぶ遠くに行った後の話ですよね


高須さん:というより、遠くに行き続けるためにはビックロックとか作らないとある段階・レベルで止まっちゃう。

コミュニティもそうで、2chの王様がmixiに来なかったり、mixiの王様がTwitterに来なかったり、Twitterの王様がYouTubeに台頭できなかったり、YouTubeの王様がTikTokに台頭できなかったり、そういうのあるじゃないですか。

それは大体がそうなるんだけど、そうならない一個の方法として、ある段階になったら共同にしたり、ルール化したり、人じゃなくなる状態までいくというのがある。それをやらないとコミュニティが長持ちしなかったりするんですよね

ゼロからコミュニティをつくるとしたら、なにからはじめる?


ぷろおご:それって結局、彼女できたやつが経験人数を100人にする方法みたいなかんじで、彼女できないやつはどうすればいいんですか?みたいなは話ですよね。目標があるとモテるよ、というのは3を100にするうえでは、すごく重要なのかもしれないけど、0から1にいくところまでには生まれつき顔がいいとかあるじゃないですか


高須さん:たいがいは誰も来なくて終わるんですよね

ぷろおご:ですよね

ゆーさん:カリスマが要るんじゃないですか?

ぷろおご:ね。結局、転生しようみたいな。まず遺伝子ガチャであたりを引きます。みたいな、元も子もないはなしになるじゃん



高須さん:遺伝子の方向にいくのは、人間的魅力の方が重たくなりすぎてる気がする。逆にいうと、遠くをテーマにするとどんなことをやっても1人や2人、3人は集まったりしますよ。

たとえば、日本では全然マイナーで出版するほど金にはならないんだけど100人はおもしろがってくれる本を、頑張って翻訳しようとかやると何人かは集まりますよ。で、それは別にお金になるほどは集まらないんだけど、

頑張ってみんなで部屋の掃除やろうぜとか、そういうのもいいかもしれない。自分1人だと際限なく太っていくから一緒にYouTubeつないでラジオ体操をやろうとか。

つまり、プロ奢ラレヤーさんみたいに遠くにいかないんだけどなぜか人が集まるの方が難易度でいうと高くて、人に教えるのも難しい


伊予柑:それはそう


高須さん:それよりは自分のためになることを他人を巻き込んでやりましょうっていう方が0人から1人目、2人目3人目にはなりやすい

次回へつづく


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