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初のフルタイム勤務、所信表明。

50近くになるというのに、私はまだ、いろんなものが怖くてたまらない。

機嫌の悪い人が怖い。話しかけて、いわゆる「塩対応」が返ってくると、ああ苛立たせてしまった!って身を縮めてしまう。気にしすぎってよく言われるけど、これはもう条件反射なんだからしょうがない。相手の話に笑顔でうなずきながら、「あーこれ本音じゃないなー」「行く先々でこのハナシしてんだろうなー」とかを察知する仕事をしてたのだから。

限界までやりきることが怖い。何らかの目標をやりとげるために、徹夜で血尿を垂らしながら頑張ったためしがない。それほど叶えたい夢や目標がなかったのかもしれない。無理をしないように、無理をしないようにと唱えながら、それなりに休み休み、生きてきた。

そういえば何かを最後まで頑張ったことがないかもしれない。深みにはまる前に逃げたり避けたりしてきたように思う。そもそも、そこまでして手に入れたいものがあっただろうか。ないものは求めず、去る者も追わず。望む資格がそもそもないのだから、何らかの憧れが湧いても、隠し通さねばと思って大きくなった。

そんな私が10月から、9時5時で週5回の会社勤めを始める。今まで週4だったのを週5にする。

そこそこ、どきどきしている。

塩対応の先輩と働く。上司からは、多少辛くても心折れないよう言い渡されている。これから長期的に週5で働きたいのかと問われ、必ず5年10年勤めおおせますとは言い切れませんと答えたら、各方面を困惑させてしまったらしい。

ただ、今の自分が前とは違うなと思うのは、「グレー」を知ったことである。

人間関係には「すっげー意気投合!!」と「顔も見たくない!!」の2種類しかないと思ってた。人に出会うたび、この人はどっちだろうかと相手を見定め、すべての人間関係は「すっげー意気投合!!」を目指さなくちゃいけないと思ってた。

全然違った。

好きも嫌いもなく続いていく人間関係があることを知った。言葉をかわすたびに笑い合わなくても全然いい。10分にひとギャグかまさなくても全然いい。ミスをしたらクビになるわけではなく、むしろ「どうしたらミスがなくなるか」つまり「どうしたら一緒に働いていけるか」を共に考える。そんな営みがあることを、会社勤めの日々で知った。

それが、なんだろう、安らぎなのだ。

チームの面々と、席を並べて働く。仕事以外の会話を、一切しない1日がある。話すことがないのなら、話さないでいい。笑えることがないのなら、笑わなくていい。今日話さなかったからって、明日無視されるわけでは全然ない。

ただ、そこで働く。そのことの、肯定感。

こういう、ごく普通の感覚を、私はこれから取り戻していくんだと思う。ひとりで働いてたから知らなかったことたちを、これから呑み食らっていくんだと思う。機嫌の悪い先輩にびくつかず、笑ってもらえなくてもそこにいて良くて、「できないこと」「持ってないもの」を数えあげるより、「できたこと」「持ってるもの」がものを言う日々。

かなりの大革命である。

以上、最後の平日休みに、所信表明、覚え書きでした。(2021/09/29)

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