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「バクマン。」原作ファンが舞台版を見た感想

はじめまして。マンガや舞台が好きな社会人・大沢と申します。2.5次元を中心に、四季や歌舞伎などの舞台もゆるゆると楽しんでいます。

過去10年ほど、ツイッター上でポツリポツリと観劇の感想を書いて参りましたが、このたび私の大大大好きなマンガ「バクマン。」が舞台化されることになり……。

原作ファンなのでどんな舞台になるかとてもドキドキしていましたが、実際に観劇したら様々な想いがこみあげてきて、忘れないうちに感想や忘備録を書きたくなったので、唐突にnoteを始めてみました。

既にご覧になられた方は勿論、観劇を迷われてる原作ファンの方の参考になれば嬉しいです。よろしくお願いします。

なみに、パンフに小畑健先生の描き下ろしモノクロイラスト(サイコーとシュージン)が載っているので、とりあえず原作ファンもパンフは買った方が良いです。


※以下、俳優さんの個々に関する言及はほとんどありませんので、俳優さんの情報が欲しい方の参考になりません
※あくまでイチ原作ファンの意見となりますので、ご了承ください


さて、早速ですが…


■はじめに:「バクマン。」ってそもそもどんな漫画?
(ご存じの方は読み飛ばしOK)

「デスノート」と同じ、原作・大場つぐみ先生&作画・小畑建先生コンビによるヒットマンガ。2008年から2012年まで「週刊少年ジャンプ」で連載され、TVアニメ版もNHKで放送され、実写映画にもなっています。
主人公は、「週刊少年ジャンプ」誌上での漫画家デビューを目指す、作画担当の「サイコー」・原作担当の「シュージン」という2人の少年。夢を追う少年たちの成長を、「マンガ」を軸に描き出した青春群像劇で、「まんが道」の現代版ともいえる傑作です。ストーリーや作画は勿論、「少年ジャンプ」の他作品をからめたエピソードや、「アンケートシステム」をはじめとするジャンプ編集部のリアリティある制作裏話が作中に登場することでも話題を集めました。


■終了から10年を経て舞台化!ヒロイン不在で成り立つのか
(読み飛ばしOK)

私は「ミュージカル テニスの王子様」(通称:テニミュ)1stシーズンの頃から細く長く2.5次元舞台に通っており、また性格的にいわゆる「地雷」的なものもほとんどなく、比較的どんなメディアミックスでも前向きに受け止められるタイプです。
ただ、今回舞台化される「バクマン。」は特別で、なぜなら同作は、人生で一番好きなマンガ……。連載当時は連載第1回から最終回まで、毎週ジャンプ誌面で夢中になって読んでおり、連載終了後も年に2・3度は全巻読み返しています(継続中)。

それだけに、舞台版をきちんと楽しむことができるのかがとにかく心配で、観劇当日まで、今までどんな作品にも感じたことのないような緊張感を覚えていました。

また、TVアニメ化・実写映画化といった過去の「バクマン。」メディアミックスと異なり、今回の舞台版には、原作で非常に重要な役割を果たすヒロイン「亜豆」をはじめるヒロインたちが登場しないことが事前に判明していたため、不安に拍車がかかりました。

若手男性俳優をメインキャストに起用し、女性ファンを集客の要としている2.5次元舞台の世界では、女性キャラクターを登場させた場合、チケットの売り上げが落ちると言われています。「バクマン 。」の場合も、主演は「刀剣乱舞」などで人気を誇る若手男性俳優の鈴木拡樹さんがサイコー役、荒牧慶彦さんがシュージン役とを担当することが発表されていました。また、2.5次元舞台の祖と言われている「テニミュ」にもヒロインの桜乃は登場しません。

ただ、桜乃は原作においてもそこまで出番が多くはありませんが、「バクマン。」のヒロインの亜豆は、主人公のサイコーにマンガ家を目指すきっかけを与えてくれて、その後も支えであり目標であり続けてくれる、言ってみれば全ての根源、根幹ともいえるキャラクター。彼女なしで本当に物語が成り立つのか…!?と、心配でなりませんでした。

原作が少年漫画なので、「バクマン。」もあくまで少年たち(そして少年をとりまく年上の漫画家や編集の男性たち)が主役の作品だとわかってはいますし、興行を成り立たせるうえで集客が大切であり、そのために女性キャラクターを切らざるをえなかったのだろうとは思います。ただ、同じくジャンプ作品でここ数年で舞台化された「幽遊白書」「封神演義」などにはちゃんと可愛らしいヒロインたちが出演していて、それでも座席が埋まっていたため、(これらの作品と制作会社が異なるとしても)「バクマン。」にも亜豆をはじめとする女性たちを出して欲しかったなあと、個人的には残念に感じていました。(出演されている男性俳優さんたちには、何の恨みもありません。念のため)

■実際に観劇して感じた、原作へのリスペクト(本題1/ネタバレなし) 

さて、前置きが長くなりましたが、やっと本題1(観劇後の感想)です。

実際に観劇したところ、開演後しばらくはやや前衛芸術的(?)というか、独特な演出が気になりましたが、見ているうちにだんだんと物語に入り込んでいくことができ、また随所にちりばめられた原作へのリスペクトもしっかりと感じとることができました。

一番気になっていたヒロイン・亜豆の不在問題についても、ちょっと(というかだいぶ)想像とは異なっていましたが、少なくとも彼女というヒロインの概念はステージ上に存在していたのでほっとしました。(ネタバレになるので、詳しくは下の方に書いたネタバレパート、もしくは実際の舞台をご覧ください)

また、少なくとも、私が原作ファンとして「ここは重要な場面だから、できれば外してほしくないな」と思っていた名シーンの多くは、舞台版にも集約された形で登場しており、原作のピースが丁寧に再構築されているなと感じました。

原作のイメージ通りのシーン、異なっていたシーン、異なっていたけどそれはそれで良かったシーン、舞台版で追完されたオリジナルのエピソード、時系列やキャラクター性のアレンジ……等々が混ざり合った、新たな「バクマン。」の世界が確かにそこに存在しており、笑いあり涙ありで、最後まで「この後どうなるのかな」と、楽しみながら観劇することができました。

原作の連載が終わって約10年が経ったけど、新たな形で大好きな作品に触れる機会をいただけて良かった、幕が開くまでドキドキしていたけど観て良かったと思いました。

もし観劇を迷われている原作ファンの方がいらしたら、今回の舞台は配信もありますので、まずはそちらをご覧になってみても良いかもしれません。


■原作と舞台版の違いは?(本題2/ネタバレあり)

最後に、本題2となりますが、自分用の忘備録として、「原作と舞台版の違い」「個人的に印象的だった箇所」をまとめておきます。


※※※※以下、ネタバレ注意※※※※※

※原作・舞台の記述について、もし記憶違いの箇所があったら申し訳ありません
※後日もう1度観劇の予定があり、また改めて配信・原作・パンフも確認しますので、何か気づきいた場合は都度追記・修正します
※原作は全話読んでいますが、TVアニメは飛び飛びでしか視聴していなかったため、もし舞台オリジナルではなくアニメ準拠のエピソードがあった場合、気づいていないかもしれず、申し訳ありません











【舞台版と原作の違い】


<キャラクター性の違い(※私見あり)>

・サイコー:原作のサイコーは比較的冷めた性格だが、舞台版では原作より元気で明るい性格になっており、少年漫画の主人公らしいキャラクターに寄せている印象を受けた。ただ、原作に登場する、サイコーが人前で感情を出す希少な(?)シーン(新作の手がかりをつかんでエイジのアシスタントをやめるシーン、服部さんに早くPCPをアニメ化したいと訴えるシーン、中井さんを引き止めるシーン、入院しても休載はしないと叫ぶシーンなど)が舞台版だと集約され、矢継ぎ早に次々と登場するため、後半になるにつれ違和感は少なくなった

・シュージン:出番や、彼のキャラクター性を掘り下げるシーン、サイコーとの絆を深めていくエピソードが原作より少ない。W主人公を謳いつつ、舞台版はサイコーの方に焦点が当てられていた印象(原作のもう1人のヒロインでシュージンに深くかかわっていく見吉が不在であることも理由かもしれない)

・服部さん:原作より頼りない印象で、出番も少ない。原作のような、服部と亜城木夢叶(サイコー・シュージン)の絆を感じさせるシーンは、舞台版にはほぼない

・佐々木編集長:原作よりやや圧が強く大仰で、舞台らしいキャラクターになっていた

・亜豆:キャスト表には記載がないが、エイジ役の橋本祥平さんが1人2役で演じていた

・見吉(原作に登場するヒロイン):一切登場せず、台詞の中での言及もなし(一番好きな女性キャラクターなので、寂しかった)

・その他の登場キャラクター:原作のイメージに近いと感じた


<ストーリーの違い>

・「亜城木夢叶」のペンネームは、舞台だとサイコーとシュージン2人だけで考えていたが、原作ではもう1人のヒロイン・見吉が考案したものだった

・サイコーの手術の影響で休載となる作品は、原作では「PCP」ではなく「疑探偵トラップ」という別作品

・サイコーの手術後、病室で佐々木編集長にPCPの長期休載を言い渡されるシーン。平丸さんが編集長退出後に「なんですかそのその大人の事情 話にならん」と独り言を漏らすが、原作だとこの台詞は編集長へ直接の抗議として伝えている

・川口たろうの遺稿に関するエピソードは、原作には存在しない(死ぬ直前まで原稿を持ち込んでいたところまでは原作通りだが、「執念が実って再び連載が始まるはずだった」というのは舞台版のオリジナル設定)

・中井さんの「hideout door」は原作では蒼樹紅先生との共同作品で、かつ連載までこぎつけている

・中井さんがなぜそこまで絵が上手くなったのか……といった描写が、原作以上に掘り下げられてた。ちなみに中井さんが田舎に帰るのは、原作だとサイコーが病気から復活した後。(東京に戻ってくる理由も、サイコーのためではない)

・亜豆がオーディションを断るエピソードは、原作ではもっと後に登場し、ことの顛末も異なる


<個人的に印象的だった箇所>※私見のみ

・亡くなった川口たろうが、ずっとサイコーのそばに存在し続け、時折語り掛けてくるという構造が良かった(サイコーの中にある彼の存在の大きさを、改めて印象づけてくれた)。さらに、入院後にサイコーが編集長から休むよう説得されるシーンで、サイコーの中で語り掛けてくる川口たろう像が一瞬ブレる描写があり、改めて故人であることを実感させられた気がして、ハッとした。
(ただ、サイコーが「(おじさんは)休載しなかったことだけが誇りだった!」と原作通りのセリフを叫んだ後に、「いや、そこまでではないよ?」と川口たろうが突っ込みを入れるオリジナル演出は、個人的には蛇足に思えた)

・プロジェクションマッピングで、「バクマン。」の原作マンガは勿論、他のジャンプ作品の画像がステージ上に投影されるシーンが度々登場し、原作ファンとしては嬉しかった。特に、連載会議のシーンなどで、作中作がしっかりとクローズアップされるのが良かった。(連載会議のシーン、「hideout door」は背景に映し出されたイラストが美しいだけに、同作の主人公の衣装を身にまとった作者の中井さんとのギャップが絵面的に強烈だったが、それはそれで面白かった)

・ステージにプロジェクションマッピングで投影されるのは、原作マンガからそのまま転載されたカットがほとんどだったが、例えば冒頭のキャラクター紹介時に映し出されたアニメーション風イラスト(バイクに乗る福田さんから始まる動画)等は、今回の舞台のための描き下ろしのように見えたため、興奮した

・「PCP」がどんな作品であるかを紹介する劇中劇のシーン。PCPの主役の少年2人(真と実)の出会いのシーンが、サイコーとシュージンの出会いのシーンになぞらえられていて、エモーショナルだった

・PCPのメンバー(真と実)に扮したサイコー・シュージンが持っている携帯には、原作の設定通り派手な(万能)ストラップを模したものが付けられていた。「クロウ」を終わらせようとするエイジを、福田組が止めようする場面でも、サイコー・シュージンはこのストラップを使用し攻撃していた

・小道具としてのジャンプが幾度となく登場するが、舞台のシーン進行に伴い、その都度表紙を飾っている作品が変わる

・サイコーがエイジの元でアシスタント経験からヒントを得て、小道具として持ち出した子供時代のノートの中面には、原作に登場する「インチキ探偵」もしくは「サギ師探偵ヒカケ」らしきマンガが描かれていた

・クライマックスのシーン以外は、平丸さん役の福澤 侑さんが兼ね役でクロウを演じていた。一瞬だけ姿を見せた蒼樹紅先生も、おそらく平丸さんの兼ね役?

・兼ね役でエイジと亜豆を演じた橋本君は頑張っていたものの、舞台上で亜豆の登場シーンが少々シュールになってしまっていた感は否めなかったため、やはり女優さんの起用は(せめて声だけでも)欲しかったなと思った。ただ、エイジが兼ね役で亜豆を演じることで、サイコーが相棒のシュージン以外で一番気にかけているライバルと恋人が、表裏一体というか1人に集約されていることは興味深かった。また、もし前述の通り、蒼樹先生が平丸さんの兼ね役だったとしたら、後に原作で恋人同士にになる2人を1人で演じていたことになり、こちらも興味深い



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