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ポケットと鞄の中

女装をしているとポケットのありがたみを感じる。
普段ジーンズなどを履いていると当たり前のようにあるポケットだが、女装の場合はそれがないことがある。
特にスカートを履いているときは要注意だ。
無意識にポケットにしまおうと手を伸ばすと、当然ながらポケットがないという状態になる。
こういう時、「そうだ女装をしているからポケットがないんだ」と改めて今自分が女装をしていることを自覚させられてしまう。
しかし、何かいつもポケットに入れているものがあるのかと言われると、それはない。
強いて言えば、トイレに行く際にハンカチだけ持っていく場合だ。
私は普段ハンカチを鞄に入れているので、飲食店などでトイレに行く場合は、鞄からハンカチだけ取り出してポケットに入れる。
そのため、女装時において同じことをすると、ハンカチを取り出してポケットにしまう仕草をする寸前で、ポケットがないことを思い出させるのだ。
「だから女の人はトイレに行くとき鞄ごと持っていく人もいるのか」
などと納得させられてもあまり役には立たない。寧ろ普段無意識に使っていたポケットのありがたさが増幅するだけだ。
そんな女装時のポケット問題であるが、これはさらに女装外出時の所持品問題にも発展する。
トイレに行くのに鞄ごともって席を移動するのは面倒だと思った私が、代案として思いついたのがポーチである。
そういえば女性はポーチだけトイレに行く場合もあるじゃないか。今までポーチなんて何のために使うのかさっぱりわからなかったが、女装をしてはじめてポーチのありがたさを知った気がする。世の中というのは、予想外の時にありがたさを感じるものだ。


日常的に着ていないものは誰だって慣れないものだ

しかし私は心配症と不精な性格が混在しており、外出時の持ち物がかなり多い。
財布、携帯、鍵という三種の神器に加え、音楽プレイヤー、ハンカチ、ティッシュ、折り畳み日傘(雨傘兼用)、ノート、タブレット、ボールペン、移動中に読む本、など鞄の中にやたら物が入っているのだ。
友人たちはそれを見え、「よくこんな重い鞄もって移動できるね」というほどだ。
さらに女装の場合は、さらにこれに化粧直し用の道具も追加されるので、ポーチなんて入れてしまうとさらに鞄の中が嵩張ってしまうことに気づいた。
「メモ帳やら本は置いていけばいいのに」
と言われるが、老いて言った場合に限って必要性が生じてしまうのだ。これも先述のポケットのありがたみと同様である。
そのため私の鞄は、なんでも吸い込むブラックホールと化している。
結局己の手荷物まで盛大に広がりすぎてしまった問題を解決するため落としどころとしては、「手でハンカチを持っていく」となる。冷静に考えれば大したことはない。
とはいえ、日頃ポケットに入れる癖がついてしまっているが故に、「いつもあるものがない気持ち悪さ」を都度覚えてしまうのである。


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