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臨床経験9年目のセラピストが、臨床で結果を出すために意識しているたった5つのこと

可動域訓練にはセラピストの技術の基礎であり、本質が詰まっています。

今回は関節可動域訓練でセラピストも患者さんも「楽」になるためのポイントを紹介したいと思います!

このポイントを知っているかどうかで、アプローチの効果が全然違いますのでで是非参考にして見て下さい。

可動域訓練のコツ① 〜触るよりも大切なこと〜

関節可動域訓練を行う時に、いきなり相手の身体を触っていないでしょうか?
相手に触れるということは一見病院スタッフからしてみたらなんら不思議なことでは無いと感じるかもしれません。

ですが、それはあくまで病院の中での話です。
私たちの生活の中で、他人にいきなり触られることがあると思いますか?

もちろんないですよね。

極端な例かも知れませんが、患者さん、特に術後早期の痛みが強い方の場合や、
片麻痺で麻痺側をとても気にしているの場合、

その気にしている部分をいきなり触ろうとしたら、不快感も強くなり、

「この人は痛いことをするんじゃないだろうか?」

と相手に不信感を抱かれてしまい、関節可動域訓練どころかリハビリそのものが進まなくなる可能性すらあります。

触る時の大前提とは
「私はあなたに危害を加えるつもりはありません」ということをしっかり伝えることです。

そういった相手を思いやる気持ちを持って接していくという前提にあり、
そこからどうやって相手との間合いをつかむかが大切であると思います。

可動域訓練のコツ②〜パーソナルスペースから考える〜


パーソナルスペースとは

パーソナルスペース(英:personal-space)とは、他人に近付かれると不快に感じる空間のことで、パーソナルエリア、対人距離とも呼ばれる。 一般に女性よりも男性の方がこの空間は広いとされているが、社会文化や民族、個人の性格やその相手によっても差がある。
引用:wikipedia

要は、
「人にはそれぞれ入られたら嫌な距離がある」ということで、
それは人によって異なります。

相手側を女性だとするとセラピストが男性である場合、
パーソナルスペースが広く(=近づきにくい)
女性であれば比較的狭い(=近づきやすい)と言われています。


相手が男性だとするとセラピストが女性の方が男性よりパーソナルスペースが狭くなるといわれています。

このことからもわかることとして、

セラピストが男性であるというだけで、パーソナルスペースが広い状態、つまり近づきにくい状態を作りやすいということです。
つまり、こと「触る」ということに関して言うと、セラピストは男というだけで不利だと言うことです。

*もちろん性差だけではなく文化的な違いであったり、その人が受けた教育によっても変化するしもちろんその人自身の性格にも関与するので一概には言えません。

このことを少し意識しておくだけでも、特に男性は相手に近づく際の気遣いの仕方が変わると思います。

ちなみに、パーソナルスペースは親密な関係(=仲良くなってくる)と徐々に狭くなるため、経験上ですが、最初のうちに気をつけておけば、その後の介入は比較的スムーズに進むことが多いように感じます。

関節可動域訓練のコツ③ 〜優しく触るっとどういうこと?〜

距離感がわかってきたら、そこから実際に触れていくわけですが、触り方もとても大切になってきます。

一言で言うと、

優しく触って下さい

と言うことなんですけど。

それじゃ全然意味わかんないので、もう少し具体的にしていきましょう。

人には触り方によって、自律神経の興奮の仕方が変わります。

この時の触り方と言うのは、触る速さのことです。

人は皮膚に触れて動かす時の速度が5cm/秒である時に最もC繊維が興奮すると言われています。

C繊維とは

神経線維の種類の一つ。細く無髄で伝達速度が遅い。感覚神経、および自律神経の節後線維を構成する。
[補説]神経線維は刺激の伝達速度によってA線維・B線維・C線維に分類される。A線維は有髄で最も太く伝達速度が速く、体性神経(感覚神経と運動神経)を構成する。B線維も有髄で、C繊維より太く伝達速度が速く、自律神経の節前線維を構成している。
引用:goo国語辞書


このC繊維が興奮することで、副交感神経が優位になり、
相手を「リラックス」させることができるため、余計な筋緊張を生じさせることなく訓練をすることができます。

可動域訓練のコツ④〜触る場所を意識しよう〜

触り方まで意識できてきたので、次は触る場所も意識したいですね。

触る場所なんですが、

各分節の質量中心を意識して触るといいと思います。


下肢を例にすると下図のあたりを触るとちょうどいいのではないでしょうか。

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この質量中心を意識して触るようにすることで、その分節の回転モーメントが生じにくくなるので相手側の必要最低限の筋活動が少なくてすみます。

可動域訓練のコツ⑤〜動かし方〜

関節可動域訓練において意識しておきたいポイントとしては、「人を動かしている」と言う感覚を持つと言うことです。

これはどういうことかと言うと、人はほとんどの場合、複数の関節が協調的に動いているため、動かすときは他の関節の動きを考えながら動かしていく必要があると言うことです。


例えば、肩関節を屈曲させる時は主に動いているのは肩甲上腕関節と言われる、いわゆる肩関節と言われる部分です。

ですがこれ以外にも、肩甲胸郭関節や胸鎖関節、肩鎖関節などと言った広義の意味での肩関節と言われる部分も同時に動いています。

それだけではありません。

実際には肩関節を屈曲させる際には胸椎の伸展も同時に行なっています。

試しに、胸椎をわざと屈曲している状態で肩関節を屈曲させるとかなり挙げにくいことがわかると思います。
逆に胸椎を伸展させながら肩関節を屈曲させると、先ほどと比べてかなり挙げやすくなっていると思います。


肩関節が動く際に、胸椎の動きが同時に起こっているとすれば、胸椎と同様に脊柱を構成している、腰椎や頸椎も必ず動いていますし、
腰椎が動いていれば骨盤や股関節の動きにも影響が出ていると思います。

と言うことは膝や足も、、、

と言った具合に言い出したらキリがないほど、本当に様々な関節が連動して動いているわけです。

実際、単関節を意識して動かす場合と、複数の関節を協調的に動かす場合で
動かし方の意識が異なるので、それぞれ説明していきます。

単関節で動かす場合は
「凹凸の法則」を意識して動かすことが基本になります。

凹凸の法則とは、関節の形状が凹になっている方(例:膝関節を動かす場合)動かす場合、抹消の動きに対して中枢(=関節側)は同じ方向に動き、凸になっている方(例:肩関節を動かす場合)を動かす場合は、中枢側は抹消の動きに対して反対に動くようになると言うものです。

凹凸の法則.001


単関節を動かす場合はこのことを意識してみましょう。

複数の関節を協調的に動かす場合は、上肢のリーチングをイメージするとわかりやすいです。

リーチング課題とは、目標物に向かって手を伸ばしてその目標物を掴む、もしくは目標の場所に持っているものを置くような課題のことです。

リーチングをする際は、単純に肩関節が屈曲するだけでなく肘関節が伸展したり、手関節は背屈したりとその状況に応じて臨機応変に関節を動かす必要があります。

上肢のリーチングは、本来目標物にあるいは目標の場所に向かって一直線に手が伸びるものです。

そう、つまり一直線上に動かすイメージで行うことがコツになります。

なぜ一直線の動きで協調的な動きになるのかについては、各関節の運動のベクトルの合成で説明できます。

ベクトルの合成

古武術でも早く動くための意識の方法として同じようなことが言われており、それは「井桁崩しの原理」と呼ばれています。

井桁崩しの原理とは、武術研究家の甲野善紀氏が提唱したとされる運動原理のことで、井桁(=平行四辺形)が崩れていくように人の身体は直線的な動きをしたほうが、実は速く動けるのだそうです。


言葉こと違いますが、基本的には複数の関節が協調的に動く場合、その動きは目標物に対して直線的かつ最短距離をとるはずです。

そしてそれは各関節の運動ベクトルを合成することで、一直線の動き(最短距離の動き)が可能になるということです。

このことを意識しながら動かすことができれば、複数の関節をより協調的な動きで動かすことが可能になると思います。


最後に

関節可動域訓練と一言で言っても、こうやって考えてみるとかなり意識するポイントがあるなと思います。

「楽」に動かせることで、相手側の防御性収縮なども少なくなるため関節や筋に対して適切な感覚入力が可能になります。

運動学習においても「楽」に動いていれば、それだけ長時間・高頻度での動作が可能になるため、運動学習的にも良い効果があると思います。

もし参考になった方がいれば、明日からの臨床に是非生かしてみてください。


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