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逃げ続ける人生

ゴールデンウィークが明けて、1週間何とか乗り切って、土日挟んでの月曜日。去年おそらくこの時期は、同じ会社で働く先輩社員(歳は同じ)が精神的に支障をきたし、遂に会社を辞めた頃である。

周りが慌ただしかったためにそこまで記憶に残ってはないが、例外なく私も波が激しかったような気がする。五月病に、罹患していた。

五月病は、様々な要因が重なっていることは言うまでもないが、そのことが身に染みて感じているのは今の私である。つまり今、なんとなく、心が重いようなそんなような曖昧な心の内だからだ。


4月、否応なく新しい環境に身を置かれる人が多く、目新しさとアドレナリンで1ヵ月身体を張ったところで、緊張の糸をぶった切るゴールデンウィークがやってくる。実際のところ、ゴールデンウィークはずっとそこにいたが。

そして、この文章は冒頭に戻る。

この一連の流れで起こっているあれこれが、1つ1つ、五月病の原因になっているような気がする。誰しもが皆、サザエさん症候群の前に手も足も出ないけれども、その耐性(脳内でだましているだけかも)をゴールデンウィークで失わされて(洗脳が解けて)ネイキッドな姿で特攻すれば、身が持つのもせいぜい1週間程度なのだろうか。

こういうどうにもならないようなことを考えているが、私は今年、4月に何か起こったわけでもなく、素敵なゴールデンウィークを過ごしたわけでもなく、完全週休二日制な毎日でもないのに、なんだか身体が重い。頭ではない。胃の不調が顔に吹き出物として現れるように、身体が、文字通り頭からつま先まで、動かすのにいちいち普段以上の労力がかかっているようなそんな気がする。

全部、気がする、だけかもしれない。が、「なんとなく」は大事にした方がいい。

サザエさんなんてもう何年もお目にかかっていない。今や自分は曜日感覚も曖昧で、特に月曜日を迎えることの重圧はない。それでも、これを書いている今日は、偶然なのか、月曜日である。

だが、こうやって自分の頭を整理しているうちに、1年という海の満ち引きがたまたまここで起こったのを、便利な、蔓延している概念と結び付けて、理由を求めているだけにも思えてきた。「わからないものを、分からないままに抱えておく」ことの大事さは知っているはずなのに。恐らく、向き合う時間なのだろう。

思えば4年前の今頃も、ちょうど自分と向き合わされていた。


5つくらい年上の男性と、隔週で梅田のカフェに赴いて、自分の良さと、自分の弱さと、それを変えてくれる会社について、考える修行に付き合わされていた(付き合ってもらっていた)。なんとも苦痛だった。何故なら、指摘された私の弱さとはまさに、”自分の弱さと向き合っていないこと”だったからである。

「おそらく君は、10代で、自分が弱いことを知った。そこで君がとった対処法は、とにかく頑丈な鎧を見つけて身にまとうことだ。それはいくらか成功している。でも、それは面接担当には通用しない。その、鎧の中身を見ているからだ。といってもこの短期間で人並みに鍛えることはできないから、せめてその弱さと向き合って、さらけ出して、中を鍛えてもらえる会社に行くべきだ。それがうちの会社だ。」

4年前の私には、これに歯向かう体力もなかった。そもそも、言われたことはその通りだと思った。その自覚はあったが、それは自分で見つけた「自分のやり方」だと思っていたが、どうやらそれは単に「逃避」だったらしかった。じゃあ私は、社会人としてやっていくのは難しそうだなと悟った。


こうして振り返ると常に5月の自分は自信がない。自分だけの秘密の抜け道を見つけて嬉々として歩いていたのに、ふと、自分しか歩いていないこの道が、まさに自分だけが誤っていることを示しているような気になる。普段傲慢なのだから、少しぐらい謙虚なほうがちょうどいいかもしれない、が、私の場合はそうとも言えない。

自信を失った私は、目も当てられない。消極的になり、機を逸し、すべて裏目に出る。笑ってしまうほどに失敗する。その自覚がなければ、もしかすると、壊れていたかもしれない。自分のしょうもなさに呆れて、抗って、それを繰り返して、諦める。そうすると少し肩の荷が下りるけれども、人から見るとその様は、「逃避」である。


そうなると、私の「生きやすさの獲得」の歴史はそのまま「逃避」の歴史になる。「諦念」の歴史ともいえる。我ながらしょうもない。



死ぬとき、私は「逃げてばっかりの人生だったな」と嘆き、枕を濡らすのだろうか。それとも、「逃げ切った!」と笑うのだろうか。

ちなみに4年前の私は、「こんなに苦しい思いをして、死にたいと思いながら働くくらいなら、強くなりたくありません」と、少年漫画の逆張って核心めいたことを言う主人公よろしく、その会社の選考を自ら降りたのであった。

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