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炒飯とラーメンが超旨い、それだけで大正義な町中華(中華や/千歳(墨田区)/町中華)

男子たるもの、常に自宅の近くに自分好みの町中華を持っておきたいものである。

では、理想の町中華とはどんなものかと言えば、最低条件は次の4つだと思われる。

(1)炒飯が自分好みであること
(2)ラーメンが自分好みであること
(3)餃子が自分好みであること
(4)居酒屋としても使えること

上の3つは町中華の三種の神器である。出来れば3つとも理想的な味であって欲しいが、そういう店とは中々出会えない。炒飯・ラーメン・餃子のうち、2つが自分の好みの味だというだけで万々歳というのが正直なところ。
そして細かいメニュー以外で大事なのが、気楽に飲み屋として使える事である。これ大事。マジ大事。夏の暑い日にはレモンサワーを片手に炒飯かっこみたい。

さて、そんな町中華に必要以上にこだわる私は、愛する板橋区から墨田区に引っ越した際に、真っ先に町中華の開拓を行った。
するとどうでしょう、最寄り駅の両国駅界隈には、上の4条件のうち3つ以上を満たす店が見付からなかったのです。ラーメンだけ美味しいとか、炒飯だけ好みとか、餃子だけは旨いとか、そんなんばっか……。

強いて言えば、亀戸餃子の両国店がギリギリ合格と言えなくもないのだが、あそこはメニュー数が極端に少なくて、選ぶ楽しみはあまりないんだよなあ……。

なんて具合に理想の町中華を求めてさまよう私の前に忽然と現れたのが、千歳という両国と森下の中間地点の住宅街の中にポツンと佇むこのお店!
店の周辺は住宅と水道局と小さな公園のみというあまりに地味過ぎる立地で、なおかつ最寄り駅と呼べる駅がないちょっとした陸の孤島。

こんな絶妙に辺鄙な場所にあるお店が、炒飯ヨシ、ラーメンヨシ、餃子まずまず、居酒屋使いOKという、理想的な町中華だったのであります。

という訳で、まず見てくださいこの炒飯力。ランチタイムの忙しい時に行ったので形が崩れ気味ではありますが、只者ではない雰囲気は伝わるはず。
この炒飯が何系かと申しますと、パラパラ系としっとり系のハイブリッドという、素晴らしい仕上がり具合。口に入れた瞬間はハラっと軽くほぐれるのだが、噛むとモチっとした米の弾力と水分を感じる。パラパラと言っても、ヘタクソなお店の完全に水分が飛び尽くした乾燥した状態ではない。
お味の方は、ラードの風味とチャーシューの煮汁と思われる醤油っぽい味が中心になっており、塩辛過ぎず薄過ぎずな飽きの来ない味付けで、万人が思う ”炒飯味” だと思われる。お値段も680円と見事な庶民価格。

これなんだよこれ、この口当たりが軽くて、味も濃過ぎなくて、ハグハグと飲み物のようにかっこんでしまうのが炒飯ですよ!(興奮気味)

ただねえ、これは炒飯の名店あるあるだと思うんだけど、何故かノーマルの炒飯と五目炒飯とで味のバランスが微妙に違う。おそらく具が足される事によって水分量が変わり、味付けや米の固さが変わってしまうのだと思われる。
間違いなく炒飯力の高い店なので、一方を食べて「いまいち」と思っても、そこで見切らない方がええぞ。

【炒飯あるある】
町中華の炒飯には、ノーマルだと美味しいのに五目だとベシャったり味が薄まったりするというケースと、その逆で五目だと絶品なのにノーマルだと……というケースとがある。
なので、理想の炒飯を探している場合、念のため五目とノーマルと両方食べてみてから最終ジャッジを下した方がいい。そうしないと、どちらか片方がアナタにとっての理想の炒飯だったなんて事になり兼ねない。

ただ、一口食べただけで味がダメなら、どっちを食べてもダメなので、あくまで味付けの方向性が良いのに食感がイマイチとか、惜しい場合のみこの話を思い出しておくんなせえ。

お次はラーメンである。
この店は開花楼の麺を使っており、ツルっ+シコっの食べてて気持ちいいあの食感。具材は申し訳程度のチャーシュー、なると、わかめ、長ネギ、メンマといったシンプルさで、スープは何の変哲もない醤油スープ。
「だがそれがいい」というヤツで、これぞ「人々が醤油ラーメンに求める味そのもの」である。500円程度という価格設定も有り難い。

ちなみに、ウチの世界一カワイイ(当社比)息子は、フォークも満足に使えない頃(1歳台)に私という不良親父に連れられて、この店でラーメンを食べさせられて見事にドハマリ。ここでラーメンという名称と味を覚え、それ以来外出する度に「らめん、らめんのつるつる!」とせがんで来るように。

今ではこの店のラーメンなら1人で半分以上食いやがる。他の店で食べる時と明らかに喰い付きが違うので、彼的に本当にこの店のラーメンが好みなんだと思う。

また、この店には醤油ラーメンとお値段変わらずで、生姜ラーメンというメニューもある。これはいわゆる塩ラーメンに優しい生姜風味が加わったような味で、醤油ラーメンよりも爽やかな味に仕上がっている。
個人的に、この麺には醤油スープより生姜スープの方が合うんじゃないかとも思ったり。

なお、この店には方針なのだろうが、半ちゃんラーメンのセットがない。代わりにミニカレーとラーメンのセットはある。
よって、ラーメンだけじゃ食べ足りないという場合はこれを頼む事になるのだが、この素朴なもったりカレーがシミジミと旨い。

1人で炒飯とラーメンを1人前ずつ食べるのは厳しいので、初回は可能ならば2人で行って、1個ずつ頼んでシェアするなんてのがベストかなあ。

それと、1品料理も数は絞られているけれどそれなりに揃っているので、居酒屋として使うのもアリ。なんせホッピーを置いてあるくらいだから、これは店からの「呑んでけよ」というメッセージだろう。

理想的な町中華って、大袈裟に言えば自分の食生活の命綱・保険みたいなもんだから、この店の存在にはとても助けられております。
なんせ両国って、飲食店と言えばちゃんこ屋が大多数なもんでな……。


[店名] 中華や
[住所] 東京都墨田区千歳2-1-13
[TEL] 03-3633-4021
[営業時間] 11:00~14:00 17:00~21:00
[定休日] 日祝


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