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秋葉原のすぐ近く、子ども食堂をやっているラーメン屋さん/麺屋のろし/神田和泉町/ラーメン

女房のお父さんが病気をしてしまい、秋葉原近くの三井記念病院に入院することに。息子を連れてお見舞いに行った帰りに、何か食べて帰ろうかという話になったのだが、あいにくとこの辺りには殆ど土地勘がない。

もう少し浅草橋駅の方へ行けば店も分かるんだけど、浅草橋にも秋葉原にも微妙な位置なんだよなあ。

なんて思いつつ歩いていると、ラーメン屋なのに「子ども食堂」と書かれたのぼりを掲げる不思議な店を発見。
この「三井記念病院のすぐ裏手」というのが興味深く、じつはこの一帯は渋沢栄一の ”養育院” があった場所なのだ。養育院とは、明治時代に作られた社会的弱者・生活困窮者救済のための施設である。

この養育院はイメージが悪かったのか、自治体からすると迷惑な存在だったらしく、あちこちを転々とさせられた。
そもそもはロシア皇太子が来日する際に、本郷(今の東大がある辺り)の加賀藩の屋敷跡に乞食を押し込めた事に始まる。その後は浅草(吉原)→上野(護国院)と場所を転々とし、次に神田和泉町に移転。それがこの一帯だ。
ちなみに、その後は本所(今の墨田区石原4丁目)→大塚(現・大塚病院)と、まるで「厄介者の面倒を持ち回りする」ように移転が相次ぎ、最終的に我が故郷・板橋区に落ち着く。
だが、石原都政の時期にリストラの対象にされてしまい、養育院としては解体された。今は高齢者向け医療の専門病院として生まれ変わっている。

……と、ラーメン屋の話題とは思えない内容で申し訳ないが、そんな土地に子ども食堂として活動するラーメン屋さんが出来たという事に、とても強いドラマ性を感じてしまったのだ。

店内は食券機が置かれた普通のラーメン屋……と言いたいところだが、小上がり席があったりと、子連れでも寛げるような気遣いがされている。そのため、広さの割に席数自体は少ないような気がする。

また子ども食堂のシステムは、小学校6年生までの子供は、食べたいメニューを口頭で伝えて、ノートにメニュー名を書く。特に頼めるメニューに縛りはなく、ラーメンだろうと炒飯だろうと、何でも頼んでいいようだ。

こちらは私が選んだ味噌つけ麺。1人で来ていたら迷う事なく辛味噌つけ麺を食べたと思うのだが、流石に息子様がいらっしゃったのでガマン。
「子ども食堂」という文字列に惹かれて、興味本位で入ってみただけなのに、なんかちゃんと美味しい。驚いた。
流石味噌というべきか、スープにコクと深みがあって旨いのだが、麺の方もしっかりコシがあり、食べてて気持ちがいいタイプ。
なんだよ、普通に味がいいじゃないか。

この店の「マジメに作ってます」という姿勢は、塩ラーメンの方がより伝わると思う。こちらのスープも実によく出来ていて、塩ラーメンと言いながらも塩辛さは感じず、旨味と甘みで上手い具合に味に厚みを出している。
あらら、本当に美味しいぞこの店。

子ども食堂と言われても、息子にタダで何か食べさせたくて入った訳じゃないので気恥ずかしかったのだが、遠慮がちに半チャーハンを貰ってみた。
するとどうでしょう、ラーメン類はマジメに作ってるなあという味わいだったのに、このチャーハンは「悪い味」がするではありませんか。
いやぁ、この店わかってんなぁ。

息子は「熱くない」という理由で味噌つけ麺を気に入ったみたい。
「このお店のツルツルもおいしいねえ!」だそうです。

子ども食堂なんて単語を無視したって良い店でございました。秋葉原駅界隈の店が混んでて「どっかないかな?」なんて時に思い出すといいんじゃないかと。昭和通りを渡れば意外とすぐだよ。

[店名] 麺屋のろし
[住所] 東京都千代田区神田和泉町2-8
[TEL] 03-5829-4822
[営業時間] 11:00~21:30
[定休日] 月曜
[公式サイト] http://ocean.colors-group.jp/

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皆様からの金銭サポートがあると、子育てに追われる哀れなオッサンの生活がいくらか楽になると思わせておいて、息子の玩具やお菓子や遊園地代で殆ど溶けます。