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反省文のスペシャリスト |エッセイ


私は中学受験をしたのて、電車で中学校に通っていた。

大学まである一貫校で
校内に食堂や購買、自動販売機などが
充実していたが、
通学時の寄り道は厳禁だった。
その他、菓子類やケータイを持ってくることも
禁じられていた。

財布を持って、電車で通学する中学生が
そんな校則を守るわけなかろう。
私は入学早々、駅中コンビニに通い詰めていた。

ある日
いつも通り、駅中コンビニへ行き
チョコボールを購入し、学校へ行った。

そして、忘れもしない、
現代文の授業中のことである。 

教科書を出し、開くと茶色い玉が出てきた。
はて?これはなんだろうか、
とフリーズしていると
「選ばれた人は黒板に書きにきてください」
という軽いフリータイムのような時間になっていた。
すると、私の横を通ったクラスメイトが
その茶色い玉を見つけ、
「これチョコボールじゃん!食べていい?」
と言ってきたのだ。


「今朝買ったチョコボールが鞄の中で散乱してるんだ!これチョコボールだったのかぁ、、、。」
とそこで悟ったと同時に、とても焦った。
お菓子は校則で禁止されているのだ。
授業中で前に先生もいる。
バレたら学年指導となり
反省文を書く羽目になる。

私は
「どうぞどうぞ!早く食べて!」
と教科書に挟まっていたチョコボールを
クラスメイトに勧め、食べてもらうことで
その場をやり過ごした。
が、おしみの元にチョコボールがあると
聞きつけたクラスメイトたちが、
「私にもチョコボールちょうだい」
と授業中にも関わらず、群がってきたのだ。

まだ入学したばかりで、学年指導の前例は
なかった。
こんなくだらない事で
反省文第一号の称号を得るなんて、
耐えられない。

もう本当にないから、本当にないから…
と冷や汗を流しながら次々やってくる人々を
追い返した。

なんとかその場をやり過ごしたが、
放課後になると、担任に呼び出された。

「おしみさんがチョコボールを持ってきてると
報告がありました。
正直に答えてください。チョコボール持ってきましたか?」
とのことだ。
誰がちくりやがった!!くそ!!
と思いながらも冷静に
「チョコボール、、、?持ってきてませんけど、、、」
と答えると、それ以上詰められることもなく
解放された。
あぁ、助かった。
もうチョコボールはやめよう。
と心に誓った。

それから1週間ほど経った時、
いつも通り駅中コンビニで買い物をしているところを、
誰もが恐れる日本史の先生に現行犯で捕まった。

「この学年で初めての学年指導です。」
と宣言された。
結局、反省文の第一人者となってしまった。

その噂は瞬く間に広がり、
学年指導となり反省文を書く羽目になった者たちが次々とアドバイスを求めて訪ねてくるようになった。

こうして私は
「200字はかかないと再提出になるよ。
自分が犯した罪をたらたら書いて字稼ぎした方が良い。」
などと的確なアドバイスを飛ばし、
反省文を添削する人となった。

チョコボールを封印しようが
どうにもならないこともあるのだ。

おしみ

1998年3月生まれ
仕事を辞めて絶賛ニート中!
毎日楽しいよ

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