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楽天グループの決算内容を3分で解説!

今回は楽天グループの決算内容について見ていきましょう。
注目のモバイル事業で大きな改善を見せて話題になっていますが、その決算内容に迫ってみたいと思います!

1.PLの状況

まず最初にPLの状況について見ていきましょう。
売上収益は前年比+7.8%の2兆713億円と、創業以来27期連続の増収となりました。
営業損益は△2,129億円と依然赤字ではありますが、前年から1,588億円赤字幅が大幅に縮小されました。

全体的にはやはりフィンテック事業が売上収益・営業利益ともに大きく成長しており、業績を引っ張っています。
そこに今回はモバイル事業の赤字幅の大幅な縮小により、今後改善に期待がもてる結果となりました。

出所:決算説明資料

それでは各セグメント別に内容を見ていきましょう。
楽天グループは多岐に渡り事業を展開していますが、大きくは3つ「インターネットサービス」「フィンテック」「モバイル」に集約することができます。

◇インターネットサービス
売上収益は前年比+9.8%の1兆2,123億円、営業利益は+18.9%の768億円と増収増益となりました。

出所:決算説明資料

インターネットサービスの中でも様々な事業を展開していますが、国内ECのコアビジネスが主力となります。
みなさんお馴染みの楽天市場や楽天トラベルがこのコアビジネスに分類されています。
また成長投資ビジネスとして楽天ラクマや楽天チケットがあります。
今回の増収の背景としては、コロナ禍収束によって国内旅行の需要が回復し、楽天トラベルで強い成長が見られたことが一つの大きな要因として考えられます。

出所:決算説明資料

◇フィンテック
売上収益は前年比+11.2%の7,252億円、営業利益は+36.8%の1,229億円と増収増益となりました。
カード・銀行・証券の強力ラインナップが、この事業の好調を牽引しています。

出所:決算説明資料

楽天銀行に関しては2023年4月にプライム市場に上場しました。
それに続いて楽天証券も上場申請をしていましたが、2023年11月に上場申請を取り下げました。
この上場申請取り下げの理由に関しては色々と話が出ていますが、SBI証券が手数料"ゼロ革命"おを打ち出したことにより、楽天証券も追随せざるを得なくなったことで、業績見通しが悪くなったことが一因とされる見方があります。
真因はわかりませんが、SBI証券の"ゼロ革命"が楽天証券の業績へ影響を与えたことは確かです。

このようなゴタゴタはありましたが、新NISAの追い風などもありフィンテック全体の業績は好調を維持しています。
カード・銀行・証券の3事業の営業利益の成長率は二桁増で推移しており、なかでも証券の成長率は+61.5%と大幅増となっています。

出所:決算説明資料

◇モバイル
売上収益は前年比+3.9%の3,646億円、営業利益は依然として赤字ではありますが、前年より1,417億円赤字幅が縮小して△3,375億円となりました。

出所:決算説明資料

モバイルにおいては、2023年12月末までに契約回線数が596万回線となり、通信料金収入の増加等により売上収益が着実に増加しました。
コスト面については、当初よりコスト適正化のための一つの取組として掲げていた、減価償却費を除くネットワ ーク費用及び販管費等の月次営業費用を、2022年度最も高かった月間対比で150億円削減するという目標を 2023年12月に達成しました。
設備投資については、新たなローミング契約締結を機に約2,000億円に見通しを変更しておりましたが、実際には1,776億円と大幅に投資額を抑えることができました。

このように見ていくと今回のモバイル事業の赤字幅の大幅な改善はコスト削減が進んだこと、特にローミング費用と設備投資抑制による減価償却費の減少が大きく影響していると考えられます。

次年度の設備投資金額は1,000億円程度を予定しており、更に投資金額を抑制できる見通しのようです。
果実の収穫時期はもうすぐそこまで来ているのかもしれませんね。

出所:決算説明資料

2.BSの状況

次はBSの状況について見ていきましょう。
総資産全体としては前年末から+2兆2,232億円増加しました。

出所:決算説明資料

BSの構成を見ると、フィンテック事業が全体の9割近くを占めています。
その中でも楽天銀行だけで全体の約半分を占めてい点が特徴です。

現預金を見ると5兆円あるので、かなり潤沢な資金を保有しているように見えます。しかし実際はそこまで潤沢ではなく、この5兆円のうち楽天銀行の現預金が4.5兆円あります。
これが意味するところは、銀行顧客から預かっている現預金なので、実際に楽天グループの事業として自由に使える資金ではありません。
そう考えると、自由に使える資金は5,000億円程度ということになります。

ここで問題になってくるのが社債の償還問題です。
2024年に償還を迎える社債が3,000億円以上あります。その後の2025年にも多額の償還が予定されていることから、財務面での懸念を抱えていました。
ただ米ドル建社債の発行が決定したので、これで3,000億円近い資金調達ができる目処がたちました。
これにより、一旦は財務面の懸念は解消できたと考えられます。

出所:決算短信

またモバイル事業の影響で社債や借入金が増加した一方、利益面では赤字が続いたため、自己資本比率は4%に満たない低水準で推移しています。
モバイル事業が軌道に乗り利益を計上、かつ社債・借入金を返済していけば自然と自己資本比率も回復してきます。
なにわともあれモバイル事業の動向が今後の業績を大きく左右します。

3.CFの状況

最後にCFの状況について見ていきましょう。
CF全体としては前年末から+4,333億円増加しました。
内訳としては営業CFで+7,241億円、投資CFで△5,974億円、財務CFで+2,919億円という内容です。

出所:決算説明資料

営業CFは税引前利益で△2,177億円の大きな損失でしたが、銀行事業の預金増加で+1兆3,079億円と大幅なプラス要因があり、全体としてはプラスとなりました。

投資CFはモバイル事業の投資が続いており、有形固定資産と無形固定資産への投資で3,511億円の支出がありました。

出所:決算短信

財務CFに関しては、見てお分かりのように一番項目数が多いです。
楽天銀行や楽天証券で発生しているCFの内容の項目が多岐に渡るので、このような形となっていますが、この点からもフィンテック事業の重要性が垣間見えます。
内容としては、借入金や社債の償還により多額の支出がありますが、借入金の借換えや社債発行などで収入があり、結果としてプラスとなりました。
ただ先程BSの状況で触れたように、今後社債償還による多額の支出が予定されているので、既に決まっている社債の新規発行など、様々な資金調達手段を講じていく必要があります。

出所:決算短信

今回の決算内容3分解説は以上となります。
次はどの会社の決算をみようかな?

マサキタカオ

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