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ないものねだりの2023年

2023年1月に流産した私は、現在、お腹に9カ月の子を宿している。
予定日は2024年1月。
流産から回復してすぐに子を授かることができたことに、感謝、感謝。
一方で、人間の欲深さというか、隣の芝生の青さをただひたすら感じる1年間だったので、だいぶ気が早いが、1年間の気持ちの変化を記録しておきたいなと思う(年末は産気づいてるかもしれないしね)

2023年1月

月の終わりに、子を流産した。
1月上旬から、強く願っていたのは、どうか、先週よりも、胎児(もはやまだ胎芽)が大きくなっていますように、ということ。
心臓が元気に動いていますように。
診察を受けて、もう難しそうだ、とわかると、亡くなってしまった子を外に出すことが怖くなった。
自然排出を待つにしろ、手術にしろ、痛そう、怖い、悲しくて泣きそう。
早く、出した後の自分になりたい。
そうして実際に子を出すと、次は、街でマタニティマークを見かけると胸がキュッとなった。いいな、妊娠。いいな、大きなお腹。

2023年2・3月

4月に関東から関西に引っ越すことが決まっていたので、引っ越しの準備に追われた2・3月。
Googleマップを駆使して居住予定地を検討する。のんびり考えているうちに物件がサイトから消えていて焦る。
冷蔵庫手放すのめんどくせー、新しい家電見に行くのめんどくせー。
引越しを思うと物を増やせず、買い物も何だか楽しめない。
早く引っ越した後の世界戦に飛び込みたい感じがする。
仕事も、3月付でいったん区切りがついて関西に異動になる予定だったため、終わりが見えると少し気持ちもだれてくる。
関東での暮らしや友達とのご飯を楽しみつつも、心は少しずつ関西での新生活をわくわく思う気持ちに変わっていく。

2023年4月

引っ越した。憧れの新生活、広くなったおうち。最高!
ただ、新生活は楽しいばかりではなく、地味に不便だった。
関東で買っていた大好きなもずくが、こちらの地域で見つからない。
病院探しも美容院探しもリセット。
電車の間隔が長く、駅で10分以上待ちぼうけを食らったり、
まだ古い駅のトイレが和式しかなくて萎えたり、
定期券を購入できる券売機が思いのほか少なくて面倒に感じる。
早く土地になじみ、楽に生活したいなぁ。

2023年5・6月

このころには、新生活や新しい職場に慣れてきたように思う。
この地でしかできないことをしようと、観光に出かけたりした。
そして、このころ、ちょうど妊娠発覚。
つわりの症状が出てくる。
トマトソースやレモン風味のものばかり口にしたり、1時間に1回は何かを食べたりした。
日頃いかにセルフケアを食べ物に依存していたか思い知らされる。
好きなものを、おいしく食べたい。
また、まだまだ安定期を遠くに感じていて、早く安定期になってほしいと願っていた。

2023年7・8月

安定期に入ると、今度は、まだまだ長く続く妊娠期間を思い、ちょっと気が遠くなる。
つわりが引いたものの、近所の回転ずしにいって、生魚を我慢して帰ってきて、ご乱心したのはこのころだったか。
トツキトオカ休みなく身体を気遣うことは気が張るものだと感じた。
お腹が出てきたことで、春に買った夏物のスーツが、一度も着られることのないままハンガーにかかっているのもちょっと悲しい。
SNSにダイエットネタが出てくると、美容とはかけ離れた方向に変化していく身体との対比がまたちょっと切ない。
こんなことならへそを出すファッションをしておくんだったなと、もともとへそを出すキャラでもないのに(そしてもともと見せられるようなお腹でもないのに)シュールなことを思う。
また、8月の終わりには、毎年受けている社労士試験が控えていた。転職欲もないのに、中途半端に積み重ねた知識を手放すのが惜しいので、もはや惰性でここ2~3年受け続けている。(のちに今年の試験の結果が出るのだが、今年もまた「あと1点」と惜しく、おそらく来年も受験する…(笑))
直前期、「本が読みたい」「凝った料理がしたい」「部屋を片付けたい」と、勉強から解放されたい気持ちが強く出る。
9・10月は、出産前最後の思い出作りをしようと意気込んでいたので、その準備も早くしたい。

2023年9月

解放された。最高。ここぞとばかりに、ずっと読みたくて温めておいた小説を読む。読書最高。
この解放感やメリハリが好きで、資格試験を受け続けてしまうんだよな。
でも、9月半ばくらいになると、もう読書にそこまでありがたみを感じなくなってくる。
お腹が重くなってきて、「着たいもの」ではなく「着られるもの」を着て、
「行きたい場所」ではなく「夫婦だけだからこそ行きたい場所」「今だからこそ行かれる場所」に行って。
久々の友達に会えて嬉しかったし、思い出も多くできたけど、何だか生き急いでいた9月。

2023年10月

11月の第2週くらいには有給消化期間に入り、その後産休に入る予定だったので、頭の中で仕事のカウントダウンが始まる。
まぁどうせもうすぐ仕事とも離れるな、と思うと、急にいろんなことが面倒に感じる。
また、疲れやすさや身体の凝りやすさがあって、何度も背中や腰をさすったり、ストレッチしたりしながら仕事していた。
仕事において何ら心理的ストレスはなく、いきいきと働かせてもらっていたけど、「あ~早く休み入りて~」と思っていた(笑)
待ちに待った夫婦最後の旅行、とても楽しかった。
でも、妊娠前の旅行とは比べ物にならないくらい、夜は早くに眠気が襲って、日中も疲れやすく、不便さが募る。
外から見ても妊婦さんっぽくなってきて、街で気遣ってもらうことが増えてありがたかった。

2023年11月

感慨深く仕事を締め、憧れのベリーロングお休み期間!!
「赤ちゃんのものを揃える」「掃除や片づけをする」「健診に行く」「適度に運動する」「申請書類のチェック」「入院準備」などのやらなければいけないことから、
「裁縫」「読書」「塗り絵」「勉強」「写真の整理」などなど、もともとインドア派の自分にとって、ずっとずっとやりたいと思っていたことまで、
とにかく毎日充実したおうち時間を過ごそうとずっと前から息巻いていた。
そして、いざ、休みに入ると、1週間で、理想とのギャップを感じる(笑)
仕事と違い、自分で成果を認め、自分を励ますしかない地味な家事。
仕事のときのように1日8時間パキパキしているのは難しく、
胎動も痛いくらいあって、「今日も時間を無駄にしたな」とベッドでぐだぐだ過ごした日に落ち込む。
一方、切迫早産の人の動画を見て、そうだった、妊娠が順調というだけでも有難いんだよな、とはっとさせられる。
そして、迫りくる出産が怖い。出産のことをあれこれ調べすぎて破水する夢を見て、まだ入院準備が整っていないので起床時焦る。
育児中の人はよく「妊娠期間が懐かしい、ちょっと戻りたい」と言うけれど、むしろ出産した後の世界線にいる人がうらやましく感じる。
妊娠も出産も女性がやるの、ずるくない?と、なんて返したらいいかわからない質問を夫に投げかける。
2kgになったお腹は重く、とても疲れやすい。そんな今日この頃。

総括

振り返るといつも、かつての自分やちょっと先の自分をうらやむ気持ちと一緒に生活してきたように思う。
今後も、子が無事産まれたとしたら、新生児期に睡眠不足になって、今のお休み期間をうらやむのは目に見えているし、
子が1歳になったころあたりにでも、生まれたての子の小ささを思って新生児期を懐かしむ気持ちが出てくるのも目に見えている。
すごく月並みだけど、今の自分は、かつての自分や未来の自分、または他者から見て、いいなぁと思われるようなところにきっといる。そのことにちょっとでもいいから、感謝していたいなと思う。

そして、たぶん、何かを叶えた瞬間と同じくらい、何かを叶えようと夢見ている期間は尊い。
今後も、社労士試験は落ちるかもしれないし、働かずに暮らせる未来は遠いだろうし、夫婦で海外旅行に行けるのもずいぶん先かもしれない。
でも、叶えたいと思える状態があって、その幻に向けて生きていられることは、きっとそれ自体既に幸せなことだ。
今日も、大きなお腹と激しい胎動にうっすらと感謝しつつ、心の中でいろいろ毒づきながら、生きていこう。


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