見出し画像

全ての現代人に必須のデジタル終活って?ネット上の情報が遺品になる前にやっておきたいこと【後編】他の遺品整理と変わらぬ視点でデジタル終活を

シニア層のスマホ利用率が上昇している今、親も子世代も知っておきたいのが「デジタル終活」。前編に引き続きデジタル終活について教えてくれるのは、端末やネット上に残る故人の痕跡「デジタル遺品」について複数の著書がある古田雄介さんです。
前編ではデジタル終活の「優・良・可」のなかでも「可」となるギリギリ合格ラインについて教えてくださいました。「良」や「優」がどんな対策なのか、気になるところ。スマホが普及していない時代から活動してきた古田さんが、デジタル終活において最も大事と考えていることについてもお聞きしています。

前編はこちら↓


もうちょっと余裕があるなら「良」を目指してサブスクの整理を

デジタル終活の「可」をクリアして、もう少し何かできる余裕があるなら、サブスクリプションサービス(以下サブスク)の整理をしましょう。遺族にとってスマホのパスワードがわからないことの次に大変なのが、サブスクの解約だからです。

どんなサブスクを使っているかわからなくても、クレジットカードを解約してしまえば支払いは止まると考える人もいるでしょう。しかし、債権が残っている限り解約ができないカード会社もあります。また、例えカードを解約できたとしても、サブスク本体を解約することにはなりません。

しかも、とくに動画配信サービスなどのサブスクは契約窓口が複数あり、どこから契約したかがわからないと解約が難航する場合が多いのです。サービスに直接申し込んで入会したのか、スマホの契約プランにコンテンツの一つとしてついてきたのか、ケーブルテレビを介したのか。どんなサブスクを使っているかと同時に、契約の流れを書き出して家族に渡しておくのがお勧めです。

サブスクを整理してみれば、今はすでに使っていないサービスに課金し続けているなど無駄が見つかることもあります。現時点で契約しているサブスクを洗ってみると、自分のためにも、将来の家族のためにもなります。これで「良」は確実です。

さらに「優」を目指すなら、見せるものと隠すものの住み分けを

さらに時間的余裕がある人は「優」を目指し、自分の名誉を守る仕組みを作りましょう。スマホの中には、家族に開示したい情報と、できればソッとしておいてほしい情報が混在していると思われます。見せたい情報と隠したい情報の住み分けを行っておけば、いざというとき安心して家族にスマホを委ねられます。

例えば、連絡帳はもちろん通帳アプリなど遺された側に見つけてほしい重要アプリは最初に掲示される画面に置いておく。趣味性の高いアプリは奥の方に移したり、個別にパスワードを設定できるならそれを利用したりする。あるいはスマホに遺さずクラウドに遺し、パソコンでだけ開けるようにするといった対策も可能です。

そして家族には「スマホの最初の画面に大事なアプリを全部置いておくからね」「パソコンには大した情報は残っていないから、きちんと廃棄してね」と言っておきましょう。万が一を考えての動線を引いておけば、遺族がうっかり故人の知りたくない面を知ってしまうようなことは起こらずに済みます。

ここまでできたら、デジタル終活としては最高評価となる「優」をつけられます。さらに完璧を目指す人は、利用している個々のサービスについて亡くなったときの対応を調べてみましょう。

親のデジタル終活も手伝ってみよう

なかには、最近スマホを使い始めた親のデジタル終活が気になる人もいると思われます。親にデジタル終活をしてほしいなら、まずは自分がデジタル終活に取り組んでみて「こういうことをやっておくといいらしいよ。一緒にやらない?」と誘ってみるのはいかがでしょうか。

もちろん、生前からお互いのデジタル情報がオープンになってしまうと差し支えがありますから、おのおの隠しつつ。しかしやることは同じです。「スマホのスペアキー®」を用意してあげて、親がそれに書き込んだとしたら、それでもう合格。「次に何をすればいい?」と問われたら、「良」や「優」の世界へと誘っていきます。

デジタル終活をするうえで一番大事なこと

デジタル終活で最も大切なのは、「デジタルだから」と特別視する意識を捨てることです。

終活の新分野と聞くと身構えてしまいますが、しょせんはデジタル遺品も、従来からある遺品とそう変わりません。ゴルフ会員権や銀行預金も、証書や通帳が見つからなければ、無いも同然。IDやパスワードも同じことで、家族の目に見える形にするのが大事なのです。

ぜひ、一般的な生前整理と同じような感覚でデジタル終活にも取り組んでみてください。


【古田雄介さんプロフィール】

古田雄介さん

1977年生まれ。ライター・ジャーナリスト、「デジタル遺品を考える会」代表。葬儀社勤務、IT関連雑誌の記者などを経て2007年からフリーのライターとして独立。故人とインターネット、遺品とデジタルの関係性の調査をライフワークとしている。著書に『ネットで故人の声を聴け』(光文社新書)や『デジタル遺品の探しかた・しまいかた、残しかた+隠しかた』(日本加除出版/伊勢田篤史氏との共著)などがある。

前編はこちら↓


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?