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映画にコメントをさせていただいた

映画に推薦のコメントを寄せさせていただくことになった。サイトやSNSなどでたびたび目にするあれだ。あれをやらせていただくことになった。

この「〜させていただく」という無闇にへりくだった物言いは不快に思われることも多い。ただ、今回の映画は原作が好きで映画化を楽しみにしていたらコロナで公開が一年以上延びてしまってようやく公開日が決まったということで絶対見に行こうと楽しみにしていた作品で、それが事前に試写ができてコメントまでできるなんてただただ感謝しかなく、本当に「させていただく」という気持ちなのである。過剰にへりくだることで自分を守るための内向きの「させていただく」ではなく、本当に文字通りの意味の外向きの「させていただく」なのだ。これははっきりと言っておきたいし、紙に書いて貼っておきたい。

とはいえ話をもらったときに「なぜ僕が?」とは思った。推薦コメントというのは、人気者のあの人が!とか、映画通のあの人が!という部分に価値があるはずで、自慢ではないが全国的な知名度はほぼ皆無の僕がコメントしたところで「知らねえ奴が何が言ってんな」(茨城)とか「知らんひゃーがぬーが言ちょーんやー」(沖縄)とか「ええこと言うてはるわ。さぞかし有名な方なんやろなぁ」(京都)などと思われるのがオチだ。そりゃ地元の佐賀では「おほさんのコメントしとっばい!がばいすごか!」と盛り上がり、街は(感染対策をしっかり行った上で)お祭り騒ぎになるだろうが、宣伝としては非常に効率が良くない。

しかしながら、せっかくのお誘いだし、先述したように元々楽しみにしている映画だったので、二つ返事で受けさせていただいた(外向き)。僕に話が来たのも恐らく何かしらの理由があるのだろう。察するに、有村昆氏の不在により映画コメント業界に人手不足が生じているのではないか。僕にはせいぜい有村氏のモニター一つ分の仕事しかできないが、少しでも力になれるのならば本望だ。

感想としては、すごく好きな映画だった。夏のいいところがぎゅっと詰まっていて、キャラクターも魅力的で、この映画を観られる夏は最高だな!という気分になる。プレーヤーから試写用のDVDを取り出しながら、公開されたら劇場にもう一回観に行こうと胸に誓った。そのくらい好きな映画だった。

ただ、コメントを考えるのはなかなか苦労した。面白かったのだからそれをそのまま書けばいいのだろうが、何せ初めてやるので勝手がわからない。映画コメント然とした文章にしようとするとなんとなく気取ったようなリアリティのないものになるし、かと言ってくだけた感じでいこうとすると、一生懸命無邪気を装っている奴みたいになって気持ち悪い。自分の気持ちをしっくりくる温度で簡潔に書くのって難しいんだな、と思った。そんな夏だ。

そして先日、僕を含む21人による感想コメントが公開された。どれどれどんな感じかなとサイトを見てみる。そこで僕は言葉を失った。そこには夏帆さん、パンサー菅さん、長濱ねるさんなど、各方面の普通に生きていたら当然知ってるレベルの著名人がずらりと名を連ねていたのだ。僕なんかが場違いではないかと危惧してはいたが、その予感は的中していた。いや、予想よりもはるかに浮いていると言っていい。有村昆氏の穴を埋めるためとはいえ、これはなかなかな状況だ。

さらに恥ずかしかったのは、全体のコメントの中で僕がぶっちぎりで“!”が多かったことだ。気取りすぎず砕けすぎずのラインを意識したはずが、全くもってバランスを欠いていた。もっとかしこまってよかったのだ。服装自由というからパーカーを着て行ったらみんなジャケットを着ていたような気分である。パーカーはパーカーで胸を張れればいいのだが、あいにくそこまでの器ではない。顔を真っ赤にして立ち尽くすのみだ。

兎にも角にも、映画はとても面白かったし、夏にぴったりの作品なので是非観てほしいと思う。僕の“!”多めの推薦コメントで観てみようかな、と思う人が一人でもいてくれたら嬉しい。非常に貴重な経験をさせていただきました(内向き)。

コメントはここからhttps://www.cinra.net/news/20210811-agenai


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