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おばあちゃんのぬか漬け

幼い頃から大好きなもの。
それは、おばあちゃんのぬか漬け。
元々きゅうりはそこまで得意ではなかった。
でも、おばあちゃんのぬか床から出てくるきゅうりは別だった。
いくらでも食べれてしまう味。
ご飯が進む味。
飽きが来ない味。
すべての調和が整った味だった。

長期休みに札幌へ遊びに行くと、必ずと言っていいほどご馳走になった。
おばあちゃんは料理上手。
料理へのこだわりも強い。
どの料理もとても美味しくて、いつも食べ過ぎてしまうほどだった。
そのなかでも存在感を放っていたのがぬか漬けだ。

昔、母にせがんで自宅でもぬか漬けやろうよと言って始めたことがある。
スーパーでぬか床のセットを買ってきてぬか漬け生活が始まった。
だが、そう長続きはしなかった。
そもそも言い出しっぺの僕はあまりぬか床の世話をまじめにやらなかった。
母も他のことで忙しくて、毎日のように様子を見るということはできなかった。
ものの2週間かそこらでカビが生えて僕らのぬか床は終焉を迎えた。
おばあちゃんの偉大さを身をもって知った。

そもそもぬか漬けは、長期間ほったらかすと失敗する。
その意味では現代の忙しすぎる生活スタイルには、あまり合わないものなのかもしれない。
でも、ぬか漬け中心に回る生活って面白い。
人間がぬか漬けに翻弄されるんだぜ?
旅行のスケジュールを組む時に頭にぬか漬けがよぎるんだぜ?
なんか、ステキじゃないか。
もちろん、どうしても長期間家を空けるときも出てくるだろう。
そういう時はご近所さんに託すという選択肢も出てくる。
ぬか漬けから始まるご近所づきあい。
悪くない。

このスピード感、ちょうどいいかもしれない。
もう一度、今度は僕が責任を持ってぬか漬け始めてみようかしら。

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