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「霞ヶ関の眺望」−坂の下に流されるといいね。−『江戸名所道戯尽』

早く寝る作戦は早々に失敗していますが、これを描き終えたらすぐに寝ることができるので集中して頑張ろうかな!

そんな爆速を目指す今日も広景。今回は『江戸名所道戯尽』「霞ヶ関の眺望」です。

◼️ファーストインプレッション

浮世絵風景画で霞ヶ関といえばの構図ですね。
両脇に蔵があって、道の向こうに水平線が見える。
今回は広重の絵よりも道が狭く感じる気がします。
以前実際に霞ヶ関に行った時にこのような高低差を感じなかったので、この絵の現在の位置を確かめておけばよかったと思いました。

さあ、ここで起こっていることを確認すると水色の股引を履いた男性が連れていた馬が突然暴れ出したのでしょう。
馬の目も鋭くなっています。暴れ出したことで男性はお尻から転んでしまい、馬に乗せていた木材も散らばっています。

そして気になるのが、地面の汚れ。多分これは馬糞でしょう。
なぜかというと、周囲の人間が皆鼻を摘んで馬をみているのです。

多分何かの拍子で馬は興奮してしまい、それと共に糞を漏らしてしまったのでしょう。

こんなに人間が顔を顰めるほど匂いが充満しているのも人間サイドも馬サイドも気の毒ですね。

これまで馬糞は広重の『江戸百』の新宿を描いた絵で出てきましたね。他にもあるのか調べてみましたが、馬糞は流石に描かれないですね、、。
いつか馬糞を描いた絵に出会ってみたいです。(?)

◼️霞ヶ関×浮世絵

この霞ヶ関を描くときの構図は広重の江戸百と今回の絵だけなのでしょうか。
霞ヶ関を描く他の絵も見ていきます。

広重『江都名所』「かすみかせき」です。
やはり作者が同じだと頭は同じなので構図もこうなります。
しかしちょっと左にずらしています、、。
それくらい。

シャボン玉を吹いている少年や三、四人を覆うほどの特大の傘を掲げていたり。まさに傘の文字通り、四人の人が入っていますね。笑

横長の画面だと道の広さをそのままにしても十分に消失点に向かって奥行きを感じられますが、縦長だと道幅はおそらく狭く加工してるとしても向こうの海との距離が近く感じます。


こちらも広重『東都名所』「霞ケ関全図」です。
霞ヶ関の全容が初めて分かった、、笑。
あの蔵に挟まれた海に向かう道の向こうには丁字路があったのですね。
縦の道の向こうには富士山が見えるので手前が東京湾にあたるでしょう。

手前の横の道は北から南に向かって何か列ができています。
籠が真ん中で掲げられているので多分大名行列?後ろにはいくつもの箱や籠を持っている人々が付いています。
江戸城に行くのかな、なんて思いましたが、方向としては逆なんです。


広重『東都名所』「東都霞ケ関山王祭諌込ノ図」です。
今回は山王祭の様子ですね。一個上の絵と同じ位置関係で一行が坂を登っています。
ここから赤坂の日枝神社に向かうのかもしれませんね。

絵の色の要素として青と白が多めですが、その集まりの終着点に赤がほんのり落とされているのが三次元的。


広重『東都三十六景』「霞ケ関雪中」です。
縦長の道を斜め左から眺めている様子。昨日もちょっと見ましたが、どう考えても急すぎる坂道。
スキーをしてもビビるくらい急。
これはもちろん広重の誇張表現でしょうけれど、この坂道を縦長の画面であることを生かしてめちゃくちゃ誇張したのかもしれません。

霞ヶ関はこの縦長の道は必ず描くもので、全容を描くなら丁字路も含めることは鉄則なのでしょう。
この下り坂を下ると東京湾が見え、坂を登ると、富士山が見えるかもしれない。


人の往来が多いこともよく分かった道ですので、この馬糞は早く水で流されるといいですね。

今日はここまで!

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