見出し画像

イベントレポート「行動しなければ何も変わらない」(立命館アジア太平洋大学学長 出口治明氏)

大分大学 経済学部 2年 安藤翔太

 12月21日土曜日、ホルトホール2階セミナールームにおいて大分イノベーターズコレジオ第6回講義が開催された。今回のテーマは「行動しなければ何も変わらない」であり、ライフネット生命保険株式会社の共同創業者にして立命館アジア太平洋大学学長の出口治明氏をお招きし講演が行われた。

内容は概ね「現状分析の重要性」及び「日本の今後の成長について」の2つに大別できた。

画像1


・現状分析の重要性

 物事を見極める際には現状分析が最重要であると出口氏は語った。しかし、どのような判断においても主観が介入し物事を歪んで捉えてしまうことが往々にしてある。そのような現象を排除するにあたって「タテ・ヨコ思考」と「数字・ファクト・ロジックのみで考える」ことを提唱した。

 「タテ・ヨコ思考」において、「タテ」は過去から現在における時間軸を表し、「ヨコ」は世界を表す。つまり、世界全体の歴史を学ぶことの重要性が語られた。日本国内の現状だけしか見ていないと、世界全体から見てバランス感覚を欠いた意思決定をしてしまう。そのため、世界の動向を理解する「ヨコ思考」と過去の成功事例や失敗事例から学んでいく「タテ思考」の組み合わせが肝要だ。

 「数字・ファクト・ロジックのみで考える」においては、人の現状認識は主観によって歪むことが多いため、定量的な事実をもって物事を判断し語ることが重要であると主張した。
また、ストーリーベースの成功体験に基づいた生存バイアス的な考えを元に判断することは誤りであることが多く、リスクが高いと注意喚起された。

・日本の今後の成長について

 出口氏は日本が今後さらに成長していくうえで「女性の社会進出」及び「ダイバーシティ」、「高学歴」の3つがキーになると述べている。

 我が国の女性の社会進出は現状不十分である。例として、市場における女性の購買率は女性が半数以上を占めているにもかかわらず、商品を供給する側の企業の上層部のほとんどは男性であることが挙げられた。女性のニーズを中高年男性の主観によりうまく把握出来ていないのではないかという観点から、女性の社会進出の重要性と同時にクオーター制導入についての必要性を説いた。
 私個人としては、出口氏がおっしゃられたことに強く共感を抱いた。女性の社会進出やクオーター制の導入に当たって、その有効性や効率の良さに対する定量的な情報を根拠とした主張を元に拡散されていってほしい。

 また、女性の社会進出に関連して、外国人をターゲットにするのであれば企業は外国人を採用することを推奨するなどダイバーシティについての重要性についても語った。

 そして、「高学歴」の重要性にも言及したが、出口氏の定義する「高学歴」は一般的に思われている高学歴とは違い、「常に学び続けること、またはその姿勢」といったものであった。技術的発展の激しさが増していく昨今、常に学び続け情報をアップデートしていかなければ新たなアイデアは出てこないと主張した。さらに、今後の生き方として従来の生き方である「労働・食・睡眠」の3つでは勉強する時間がないため「本・旅」つまり、働きつつも常に新しいことを学び続け、時には外出し、自らの目でもって体験することにより新たな発見をすることの重要性を主張した。

 出口氏は女性の社会進出が阻害されている要因として、長時間労働を是とし、それにより出世してきた人が多いために企業では抜本的な解決策がとられていないことを指摘した。一般慣習(女性は家事、男性は仕事という性役割分担)によって比較的労働時間を確保しにくい女性の出世が難しいことを指摘し、子育て等の家事の部分を男性や社会が担っていく必要があると説いた。

 制度理論において社会は同質化していくとされており、そして現状に対する大きな変化はインスティテューショナル・アントレプレナー(既存の制度を破壊し、新しい制度を作り上げることを目指す人達)によって変革されるとされている。我が国においても女性の社会進出についてインスティテューショナル・アントレプレナーが誕生し、世の中を変革していくことが望ましい。


 一連の講演を終えた後に質疑応答が行われた。

 受講者からは『女性が前に出ることに否定的な人がいる場合どうしたらよいのか?』や『日本の経営者で信頼のおける(腕の良いとも言い換えられる)人はいるか?』等、寄せられた様々な質問に対しそれぞれ、『女性が前に出ることに否定的な人間を男女比1:3くらいで囲んで説得し味方にしていけば良い』や『いない(理由としては、国外の経営者にSDGsについていかに取り組んでいるかを聞くと概ね回答が得られたが、国内の経営者に聞くと、そもそもSDGsの存在を知らない人が半数以上いたとのこと)』など竹を割ったような回答をされた。

画像3

 
 質疑応答の後は、前回講義において考え出されたアイデアの下に結成された7グループの中間報告が行われた。審査員は出口氏、ザイナス社長の江藤氏、一般社団法人PMI日本支部よりお越しいただいた成松氏の三名であった。紙面の都合により、アイデアの子細は省かれるが、御三方には忌憚のない指摘や助言をいただいた。

画像2


 今後各グループでは、出口氏の講演内容及び御三方による指摘や助言を元にアイデアをより良い方向へと昇華させていくことに期待したい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?