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仮想空間でも泣かせてくる。ーたまに、あの人の変な意思表示を感じます。(07)

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これまでのあらすじ。

全くもって霊感のない「わたし」。

夫が空へと旅立ったのに、夫は夢に立つこともなく、化けて出てくることもなく、悲しくさびしい日々過ごしていました。

が、ある時に気づいてしまいました。

あれ……

これ、あの人(夫)の意思表示!?

なんの意思表示だよ!!

という、たまに、謎の、あの人の変な意思表示を感じる時が出てきました。

おかげでちょっと前向きに生きていられる、「わたし」の備忘録です。

※このお話の時系列はあちこちに飛びます。

※このお話のフィクションについてはこちらのnoteからご確認ください。

仮想空間で泣くはめになる。

夫に先立たれてから1年以上が経過したころ。

仕事も軌道に乗りつつあり、

枕とかクッションとか服の袖とかを涙で濡らす回数なんて大分減ったころ。


東京に行く用事・機会があって、約束の時間までの空き時間を有効活用しようと思って

「VR体験」

をしに行ったんですよ。ひとりで。


ひとりでも全然余裕で楽しめる

「VRタロット占い」

ってもので、その名の通り、タロット占いとタロットカードの世界を体感するVRで、それはもう気楽に、というよりは何となく、ノリで乗り込んだんですよ。


どれくらい気楽だったかというと、向かう途中で


「うっひょーー!!ゲームで見たまんまの〇〇駅前だーーー!!」
「主人公たちが放課後にアジト代わりにしていた場所の窓辺だーーー!!」

とかテンション上がってスマホで撮影するくらいの気楽さ。

どれくらい気楽だったかをさらに説明すると、

VRタロットの受付した後に、有り余る待ち時間の間、タロット占いの説明文を読みまくって「占いたいことを思いながらVR内でカードを引いてください」と書いてあったので

「よし…今後仕事が上手くいくかどうか、を占ってもらおう!」

としっかり決めていたはずなのに、いざVR内でカードを引いた直後に

「しまった!『これから仕事が上手くいくかどうか?』をちゃんと念じずに引いてしまった!!!」

ってなるくらいの気楽さ。

ほんと、もう、ウッカリのほほんどころではなく

もう気持ちの「ヌケ感」はなはだしい、VRタロット体験だったんですよ…。


そんな心の準備全くしていない私の引いたタロットカードの世界はといえば

「メリーゴーラウンド」

引いたカードの世界によっては、VR内で剣を振るったり魔法の杖を振ったりしてVR内でリアクションができると聞いていたのに、私の手持ちは短いステッキ。

メリーゴーラウンドなので同じところをグルグルゆっくり回りながら上昇するもので、上昇していくごとに周囲の景色は変化するけれども「あれ…なんだかちょっとつまんないな…」と思いながら、VRなので360度どころか全方向を見まわして、

「私ひとりでメリーゴーラウンドの馬車?に乗ってるのか……」

と気づいた途端にブワッとこみあげてきた。


遊園地のメリーゴーランドの馬車に

2人で乗ってプロポーズしてくれたのに、

今わたし、ひとりでメリーゴーラウンドに乗ってるよ………

「あなたを一生笑わせます」

って言ってたのに

今わたし、ひとりで乗ってて、泣きたいんですけど……


VRで回転と上昇が加速するしていくメリーゴーランド景色の移り変わりは、

人が大勢いてにぎやかだったり

音楽が流れていたり

静かだったり

不穏な空模様だったり

華やかだったり

最後上り詰めたときには空が割れて紙吹雪で祝福されて終わりました。


幸せな瞬間を思い出したり

VR補助で同室にスタッフ1名待機してるから泣くになけないと思ったり

夫がいなくなってからのゆっくりでありながら目まぐるしい変化を思い出したり

にしてもタロット大カード22枚中の1枚でピンポイントでメリーゴーランド引き寄いたんだろう、夫のこんちくしょうめ!と思ったり

これから先、一人で突っ切って生きてくことを思ったり


VR的には多分地味なメリーゴーランドのはずなのに、心のぐるぐるはすさまじいものがありまして。


VR終了後に、引き当てたタロットカード1枚の意味と解説をスタッフさんにしてもらい、解説書と実際のカードを1枚いただいて、体験は終了となりました。


引いたカードは

「運命の輪」

説明された内容と解説書を要約すると…

とてつもない成功・良いことがめぐってきます。大丈夫!ビビるな!受け入れろ!

うん。ありがとうございます。

というか、

もうメリーゴーラウンドだけで、私の頭はいっぱいです(;;


お店から出て、都会の騒がしさを感じながら

「でもやっぱり夫の気配とかは感じないのに、こんなとんでもない『意思表示』は感じるんだよな…」

と思いながら、お店を出た時の、あの夏みたいに暑かった春の日の夕方が、ちょっと懐かしいです。


そういえば、プロポーズしてくれた時間も夕方だったというのも、今、こうして文章にしてみて思い出しました。同じ時間帯だったのにもびっくり。


ちなみに「遊園地のメリーゴーラウンドの馬車でプロポーズ」ってなんかロマンチックに聞こえるけれども、その日の昼ごはんは

「肉巻きおにぎり」

でロマンのかけらもなかったし、コメディというよりお笑い系だったのも良き思い出です。

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