星野隆也

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村上春樹『街とその不確かな壁』への川口事件の残響とコロナ経験

1. 友人と飲んだ帰り道、通りで上品な老婦人に声をかけられた。聞けば、こちらに越してきたばかりで道がわからなくなってしまったのだという。案内する道すがら、近所のドイツ料理屋のおかみさんが共通の知り合いだとわかり、そのまま店でビールを奢ってもらうことになった。その老婦人はもともとクラブを経営していたのだが、結婚して店を閉めたのが数十年前。そしてついこの間、長年連れ添った旦那さんがコロナで亡くなり、持家を売払って近所のマンションに越してきたのだという。 コロナにかかってから3

    • 『輪るピングドラム』小論———「ニューエイジ的」宮澤賢治解釈の読み替え

      (※この文章は『輪るピングドラム』についてネタバレを含みます。ご注意ください。) 0. 作品について  『輪るピングドラム』は、2011年に放映されたアニメで、そのミステリー的な仕掛けのによって数々の考察がなされている。知人の人におすすめしてもらって最近視聴し、非常に面白かったので、ここ数日、作中で引用がなされている宮澤賢治を読んだりしていた。  これは何度も指摘されていることだが、作中で「95年に起きた事件」と呼ばれるものは、オウム真理教による地下鉄サリン事件が念頭に

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