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「111年目の中原淳一展」でみた、美しい生き方

1月10日まで横浜そごう美術館で開催されていた、「111年目の中原淳一展」にすべりこみ。
私にとって2024年初の展覧会観覧になりました。
以前、同じそごう美術館で生誕100周年記念の中原淳一展を見た記憶があるので、それからもう11年経っているのかと驚きです…!

この11年の間に世の中も自分も変わったことはいろいろありますが、なんといってもコロナ禍を体験したというのがとても大きい。
今になって振り返ると、2020年からの数年は、ファッションや生活の中にかわいいものやときめきを見つけることが「不要不急」とされているような気がして、何かにつけ自分のやっていることに意味があるのだろうか、と無気力になったり、考え込んだりすることも多い時期でした。

そんな時代を身をもって感じたあとに中原淳一の仕事ぶりをあらためて見ると、
戦時中にかわいい絵やファッションを発信すること、戦後に少女たちを励ますことが、いかに難しくエネルギーの要ることだったか、と途方に暮れるとともに、尊敬の念がますます強くなるのでした。
きっと今以上に同調圧力や非難、理解されないことも多かったはずだし、人知れず悩むこともあったと思う……それを感じさせない、いや、そんな影を秘めているかもしれないからこそ際立つ、絵の堂々たる美しさ。

スカートに施されたアップリケ。
フェルトの立体的なお花、真似したくなる!

中原淳一の世界観の好きなところは、かわいく華やかなおしゃれや生活様式を提案していながらも、そこには今ある限られたものを活かす、という「工夫」が凝らされているところ。
見せかけだけの豪華さ、お金をかけた飾りではなく、アイデアひとつで古着や捨てるようなものからも作ることができるかわいさ。
そのアイデアが魔法のように素敵で、今見ても斬新なんですよね。
私も生活に根ざしたかわいいものが好きだな、と思いました。

美しい服装とは、決して着飾ることでもなく、
華やかな色彩をいうのでもありません。
またたくさんのお金をかけてのみ、できるものでもありません。
それは、程良い調和の中に、あなた自身を生かすことです。
言葉を換えれば、あなたらしくあることです。

中原淳一

展示されていたこの言葉に感銘を受けました。
生活の中で工夫することから生まれる美しさ、かわいさには、その人の本当の生き様があらわれるんだな。

20代の頃はひたすら服や小物が欲しくて、写真を撮るときや人に会うとき以外は雑に扱っても気にしないくらいだった時期もあるのですが、最近ようやく好きなものは心から大事にしたいと思えるようになりました。
頻繁にではなくてもお手入れの時間をつくったり、人に見えないところも自分の好きな感じにしようと心がけたり。

さて展示ではもちろん、中原淳一のイラスト作品も堪能しました。
やっぱり色使いがとってもおしゃれで、ファッションの参考にもイラストの勉強にもなる…!


グレーってここ最近トレンドカラーで気になっていて、グレー×ピンクとか、グレー×赤とかってかわいいなといろいろ試していたのですが、中原淳一は1970年代にすでに実践している。

さまざまな角度から緻密に描かれたヘアアレンジのアイデアもおしゃれ。

あと、写真は撮れませんでしたが、女性の絵とは打って変わって、自己の内面に対峙して作られたという人形作品を見ることができたのも貴重な体験でした。
生の手触りや息遣いを感じさせる人形は生きているみたいで、ニヒルな表情や頽廃的な佇まいが美しかった。
個人的には、人形作品こそポストカードやアクリルスタンドなどグッズ化希望です…!

今年の初めに背筋が伸びるような展覧会でした。
今年は今まで以上にたくさん展示を見に行きたいと思います。
そして自分も展示ができたらいいなあ。



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