１８時を少し過ぎた頃、デパチカで買い物をしていたら突如方を叩かれた。

振り返れば７０代とみられる女性がニコニコしながら立っていた。

「あのー、ドーナツ屋さんはどこにあるのでしょうか？」

と聞かれたのでフロアガイドに手を伸ばしペラペラめくって場所を突き止め教えてあげた。

「ありがとッ！」とこちらに片手を挙げたその人は、そのまま立ち去るのかと思いきや、私の目の前にビニール袋を突き出してきた。

見ればさつまいもの切れ端が一袋にまとめられているもので「見切り品」という文字の書かれたシールが貼られている。

リアクションに困って立ちつくしていたら彼女はこう語り出した。

この子（さつまいも）たちね、端っこを水にチョンと浸してキッチンに置いておくと、やがて根が生えてくるの！

 毎日欠かさず観察していたらね、ここからあそこのヨーグルトが置いてある棚の所までずーっ、と根が伸びてくるの！

 それがもう可愛くて、もう何回試したかも分からないくらいよ！

 みんな観葉植物とか生け花を愛でるでしょ？　でも私にはそんなのよりも、このさつまいもを大事に育てて根がビューン！　と伸びてくるほうが何倍も楽しいと思うの！

 どう？あなたもやってみたくなったでしょ？

「そ、そうですね……」

と答えたら彼女はこう返してきた。

でも今日のさつまいもは全部煮て食べちゃうんだけどね。