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【開催レポート】ダンテ『神曲』を語る読書会天国篇 2023年12月23日(土)

水野ゼミの本屋の書店主、itatana(イタターナ)さまが主催するイタリア文学の課題本型の連続読書会。地獄篇、煉獄篇、天国篇の3回に分けて行います。

いよいよ最後の天国篇へ到達。参加者は主催者を含め7名。半年間一緒に『神曲』に挑んだ仲間同士、開催前から和やかな雰囲気です。

「いかがでしたか?」という主催者の問いかけに、沈黙が流れます。これには主催者も苦笑い。みなさんなぜか様子を伺いながら読書会がスタートしました。
今回は全体の感想よりも、第〇歌のこの言葉の意味が分からない、翻訳によって解釈が変わる、などささやかな疑問が多かった印象です。

天国篇はダンテが好きなアリストテレスをはじめ、哲学の話が多く出てきます。自由意志とは何か、人間に自由意志はあるのか、自由なら死も決めることが出来るのか、と哲学的な投げかけが参加者から飛び交います。フィレンツェに追放されたダンテが、恐らく取引などすれば戻れるはずなのに戻らなかったことに絶対的意思を感じる方も。自分を貫いたからこそ『神曲』が書き上げられ後世まで残ったのかもしれませんね。

天国篇を読んでいて、遠藤周作『沈黙』を思い出したという方がいらっしゃいました。神の采配は理解できない、つらいけれど、それでも信じるという信仰は理解しきれないという意見が多くありました。

13世紀に書かれた『神曲』ですが、ダンテがイタリアの政治の中心にいたからこそ、政敵を実名で書いた歴史書の役割も果たしていると感心する方も。一方で、リアル過ぎるために、読まれると恥ずかしいゴシップのようだという方も。

舞台である天国は、プトレマイオスの天動説に基づき、星が周りを取り囲んでいます。天文学を趣味で研究している参加者は、宇宙や惑星に関する記述や注釈を調べなおし、その付箋の量に他の参加者はびっくりされていました。カルロ・ロヴェッリ『すごい物理学講義』にも神曲は三次元球面を正確に書いていると評されている、と別の参加者からも意見が。天国篇を読んで星に興味を持った方や、宇宙から見た地球の描写にSFっぽさを感じる方も。ダンテとベアトリーチェが星を巡る様子を「銀河鉄道の夜」と表現された方もいました。13世紀に書かれていますが、今にも通じる宇宙観なのはさすがは名作です。

天国篇まで無事に読み切った参加者一同ですが、初読の感想を語り合います。みなさん賛同したのは注釈の多さ。読んだ時間の半分は注釈を読んでいたというほど。キリスト教の知識が無いとスムーズには読めないようです。名作だけあって、本に引用されるなど生活のどこかにある神曲。深掘り気質な方には合う作品だという意見も。他人が沼にはまっているのを見る楽しみもありそうです。

【次回開催案内】

『わたしは あなたは』を語る読書会
2024年1月27日(土) 14時~15時30分
水野ゼミの本屋

【これまでの開催レポート】

2022年8月21日(日) 「ピノッキオ」を語る読書会
2022年10月8日(土) 『クオーレ』を語る読書会
2022年12月17日(土) 『ジャン・ブラスカの日記』を語る読書会
2023年2月18日(土) 『まっぷたつの子爵』を語る読書会
2023年4月15日(土) 『木のぼり男爵』を語る読書会
2023年6月17日(土) 『不在の騎士』を語る読書会
2023年8月19日(土) ダンテ『神曲』を語る読書会地獄篇
2023年10月21日(土) ダンテ『神曲』を語る読書会煉獄篇

文責:青谷夏野

以上


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