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#3 重力が8倍でも戦闘機に乗りたいか。

「G」とは、重力加速度の単位だ。

私たち地球人は常に1Gの力で地球に引き寄せられている。つまり重力が1Gだ。漫画『ドラゴンボール』の主人公である、地球生まれのサイヤ人、孫悟空は作中あらゆる場所でGを経験してきた。

-精神と時の部屋
-界王様がいる界王星
-ナメック星に向かう宇宙船のトレーニングルーム

記事#1『シャレの通じない男もやっぱりおもしろい』

これらの場所は全て10Gの負荷がかかっている。地球の10倍もの圧力が襲いかかってくるわけだ。彼らは宇宙人だから放っておくにしても、地球人トム・クルーズが今作『トップガン マーヴェリック』の飛行シーンを撮影するため、実際に体験しているGの値はいくらかというと、、、

7.5G〜8Gである。地球人にもクリリン以外に凄い人がいたもんだ。

クリリン / 出典: IMDb 『Dragon Ball Z』(1989-2003)

「私たちの知るGは…」

しかし、8Gもある!と聞いてもイメージが付かないかも知れない。身近な例を挙げよう。

日本航空JALの「航空実用辞典」によれば、民間旅客機が離陸する際私たちが受けるG、要は身体が座席側に押し付けられるあの力が0.3G〜0.5Gあるという。所詮私たちが常日頃から受けている重力の約2分の1程度に過ぎないわけだが、あの時に感じる圧力は決して小さくはないだろう。多少の息苦しさを感じる人もいるはず。

戦闘機は、空中で急旋回をおこなう時には最大9Gが発生する。Gは機体の速度と旋回する角度(=バンク角)によって負荷の大小が決まるので、速いスピード・急な角度で旋回しようとすればするほど、身体を圧迫するGは大きくなっていく。

※因みにスピードと旋回角度は、コックピット内の2つのレバーでコントロールされる。

左はエンジン推力を制御するスラストレバー。
右は操縦かん。『予告編』0:56では推力レバーを前に倒して最大推力とし操縦かんを引いて急上昇している。/ 出典:「映画『トップガン マーヴェリック』ファイナル予告」

そして明らかなことではあるが、受けるGが大きくなればなるほど、身体は次第に言うことを聞かなくなる。2Gで身体が重くなり顔の肉がたるむ。3Gで既に立っていることは不可能。さらにGが増していけば視界がぼやけ、遂に8Gでは腕や顔を上げることすらできなくなってしまう。これらは高いGが体内の血液をすべて下半身に移動させることが原因だ。心臓が抵抗して血液を送り出すにも限界がある。やがて脳に運ばれる血液が不足し、意識を失う。G-LOCと呼ばれる現象だ。

※耐G訓練を体験する彼。3:10 あたりから危ない笑

「驚異のスーツ」

戦闘機パイロットはこのような問題をどうやって克服するのか?

やはり訓練しかない。だが、1つお助けアイテムがある。

スーツだ。

戦闘機パイロットが装着するスーツは、抗加速度スーツあるいはGスーツと名付けられており、大きな重力加速度がかかると自動的に圧縮空気をズボンに送り込み、その膨らんだ圧力で足を締め付けて血液が心臓に戻りやすくする働きがある。

腹部から左胸あたりにかけてホースが伸びている。 パイロットはこれを機体内部に接続することで空気をスーツに送り込む。 / 出典: IMDb 『トップガン マーヴェリック』(2022)

要するに、あえて下半身に圧をかけることで血液が下降するのを抑制するのだ。Gスーツの着用はなんと2G以上を軽減する。これはすごい!!これならガッツポーズもしてしまう。

「白い煙」

しかし!

海軍のパイロットは少し不幸だ。なぜなら航空母艦(以下、空母)からの離陸だけで3Gもの圧がかかるから。戦闘機は短い滑走路で飛び立つだけの爆発的なスピードが必要になり、おのずと高いGが発艦時にかかってしまう。一般的な長い滑走路をゆっくりと加速していくのとは訳が違う。

ここでまた疑問が生まれる。

”空母USSセオドア・ルーズベルト”のデッキから飛び立つ戦闘機。/ 出典:「映画『トップガン マーヴェリック』ファイナル予告」

最初に書いたように、機体が浮くためには空気の流れによる十分な圧力差が主翼の上下に生まれていなくてはならない。空母から発艦する際、もし仮に速度が遅ければ圧力差が足りず、目の前の海にそのままドボーーンである。

いったいどのようにして”爆発的なスピード”を瞬時に出すことができているのか。

甲板かんぱん作業員たちを覆ってしまうぐらいの煙。前作のオープニングシーン/ 出典:『トップガン』(1986)

前作『トップガン』のオープニングシーンは、空母上で戦闘機が発艦や着艦を行う様子を描いている。やはり見事な勢いで戦闘機はデッキを滑り出していくが、よく見ると、そこに煙のようなものが立ち昇っている。

”爆発的なスピード”。その謎の答えは、この煙にあった。




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