東京

東京。

東京をテーマにした曲はたくさんある。地方から東京に出てきた人が青春を東京そのものに重ね合わせて、失恋した彼女なんかを思い返す。そんな曲が多いように思う。くるりとか銀杏BOYZとか。だから舞台も小田急線とかちょっとおしゃれな感じ。

私、東京生まれ東京育ちなんです。といっても千葉寄りの東京。おしゃれ感はあんまりない。いわゆる下町。東京と言ってみんなが想像する辺りとは少し違うかな。

前出した二つのグループの『東京』。両方とも好きなんだけど、その”東京”という言葉に込められた意味のすべてを私はわかりえないんだろうなと。世の中には東京育ちよりも東京に出てきているひとが圧倒的に多いことから考えると、その感覚を持ちえないことって不幸なのではないだろうか。東京育ちって、たとえば地方に生まれて「絶対に東京に出てやるぞ」と思って大学や就職で上京してきた人たちと比べるとハングリーさが全然違う。東京育ちのその牧歌的なところは長所でもあるかもしれないけれど、残念なところでもあるんじゃないかな。人間が簡単に手に入るものに執着心を覚えないように、手に届くところにいろんなものがあることはある意味かわいそうなことのような気がする。そのためにどれだけ努力できるかというモチベーションだったり、目標だったりが設定しにくいし……。

そんなことが関係あったのかなかったのかはわからないけれど、就職してからいろんなことに悶々としたりしながら過ごし、私は大連に留学することを決めたのです。なんで中国だったのか、なんで大連だったのか。いろんな人に聞かれたけれど。私にとっての”東京”は、大連だったのかもしれない。今にして思えば、留学の理由のひとつは地方の高校生が「ここから出て、東京に行きたい!」と願うことと同じだったのではないかな。そんなことを考えて『東京』を聴いてみたら少しは気持ちがわかる……ような?

私は、地方から出てきたひとが東京以外にもホームを持っていることがうらやましいのです。そのひとたちは東京だってホーム同然なのに。東京育ちのアドバンテージなんて、そんなものの前では全然効力がないよなー。大連に留学して、東京を飛び出して、初めて東京以外に思い入れのある場所を作って。ホームとまでも行かなくても、遠くにゆかりのある場所を作ることが人間には必要なんだと思う。

ふるさとは遠きにありて思うもの

とはよく言ったもんだよなー。

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