私が当時付き合っていた女性と同棲していた時の話です。

その女性は真面目で、あまり冗談を言ったりするようなタイプでは無かったのですが、新しい枕を買った時からこんなことを言い始めました。

「ベッドで横になってるときに枕の中から、みー、みーって何かが鳴いてるみたいな声が聞こえるんだよね。子猫の鳴き声みたいなんだけど、もっと人間に近い感じの声。」

私も同じ枕を使ってごろごろしていたことはありましたが、そんな鳴き声は一度も聞いたことがなかったので、からかわれているのだと思い信用しませんでした。

それから数日間、彼女に何度か「今鳴き声聞こえる。耳当ててみて」と言われてすぐに枕に耳を当ててみましたが、やはり私には何も聞こえませんでした。

更に数日が経った頃、彼女がいつものようにベッドに横になりながら、「また鳴き声聞こえる」と呟きました。

ベッドのすぐそばのソファに座ってテレビを見ていた私は、もう枕に耳を当てに行く気もなく、黙って聞き流しました。

すると彼女は、私が鳴き声の話を信じていないことを悟ったのか、いつもとは違う行動に出ました。ベッドに横になったまま、こう言ったのです。

「鳴いてるのは妖精さんですかー？枕の中にいるんですかー？」

少し呆れてしまった私は、無言のまま彼女の顔を見ました。彼女は少し困惑した顔をしていて、私にこう言いました。

「なんか鳴き声が変わった。声が低くなって近くなってきてる」

私は、(まだこの嘘は続くのか、、。)と思い呆れながら、「もうやめときなって」と彼女に言いました。

彼女はそんな私の言葉を無視して、また枕の中の何かに話しかけました。

「妖精さんなんですかねー？捕まえたりしないので姿を見せてくれませんかー？」

そう言った直後、彼女は枕から飛び起きました。

私にも聞こえる程の大きさで、歯と歯が噛み合うようなガチガチガチガチガチガチという音が枕の中から聞こえたからです。

音はすぐに鳴り止みましたが、予期せぬ出来事に私も彼女もしばらく動くことができませんでした。

その後、その枕は処分して新しい枕に買い替えましたが、あの音がなんだったのか、未だにわからないままです。