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カンヌ2023まとめ「価値変容が優れたアイデア特集」

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製品やサービスは変わらないのに、ターゲットの中の価値観を変容させることで、製品やサービスへの見方をガラッと変えてしまった。そんな素晴らしい価値変容を成功させた施策を、Cannes… もっと読む
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記事一覧

注文データを予期せぬ驚きの体験に変える「Chipotle Doppelgänger」

Summary新鮮な食材を使用したメキシコ料理を提供するファストカジュアルレストランチェーンのチポトレは、顧客の注文データを活用してブランドエンゲージメントを強化したいが、多様なブランドコミュニケーションが飽和している中で、人々の関心を引くことが難しいという問題に直面していた。 この問題の原因は、リピーター顧客が「注文データはただの情報で、特に驚きはない」と認識していることにある。 しかし、その認識の背景には、「自分の注文の特別性に誇りを持っている」というインサイトがある

過去の遺物をノスタルジーあるストーリーに変える「Blockbuster: Until the Bitter End」

Summaryかつての映画レンタル大手ブロックバスターは、オレゴン州ベンドに家族経営の店舗が1つしか残っていないという問題に直面していた。 この問題の原因は、一般消費者の「新しいサービスの方が便利で効率的だ」という認識にある。 しかし、その認識の奥には、週末の時間に「魅力的なストーリーを体験したい」というインサイトがある。このインサイトに応えるため、ブロックバスターは、「金曜の夜に店内を歩いてVHSを探す行為は、誰にとっても懐かしい体験である」という真実と、「オンラインに

ブランドへの苦情をブランドへの愛情に変える「Apologize The Rainbow」

Summray1974年にイギリスの会社で初めて作られたフルーツ味のキャンディブランドSKITTLESは、変わらない古典的な製品が、成長するフルーティ菓子カテゴリーの中で忘れられがちになっている問題に直面していた。 この問題の原因は、消費者がSKITTLESのことを「誰も興味を持たない、新鮮味のない同じ味」と認識していることにある。彼らは変化のない製品に飽き、それが誰にも興味を持たれてないことで、他の新しいオプションに目を向けていた。 しかし、その認識の奥には、「人気があ

国際乳がんデーを延期することで乳がん検診先送りを止める「The Postponed Day」

Summaryアルゼンチンの著名なNGOであるLALCECは、多くの女性が乳がんのマンモグラフィー検診を無期限に延期してしまう問題に取り組んだ。 乳がんに関する地域世論調査によると、マンモグラフィーが最も効果的な早期発見方法であることを認識している女性は 10 人中 3 人であった。 そうだとすると、検診を先送りする問題の原因は、女性たちの中に「検診で乳がんが発見されたときにはもう遅い状況だ」という間違った認識があり、検診に行くことに恐れをいただいているのではないだろうか

ビール禁止となったW杯の2日前からの起死回生プラン「Bring Home The Bud」

Summary1986年からサッカーW杯の公式スポンサーであるBudweiserは、カタールW杯でビール販売が禁止され、4年間かけて策定してきた世界的なマーケティング計画が実行できないという問題に直面した。 この問題の原因としては、「ビールは観戦中に飲めなければ、ブランド体験とは思えない」というW杯のファンの認識がある。 しかし、この認識の奥には、「特別な瞬間やコミュニティとのつながりをビールを通じて最大化したい」というインサイトがある。このインサイトに応えるため、Bud

古くさい歴史をモダンな魅力に変える「The Artois Probability」

Summary1366年にさかのぼる歴史を持ち、人類史上最古のビールブランドの一つであるステラ・アルトワは、地ビール醸造所のクラフトビールの売り上げが伸び、伝統的なビール会社の市場シェアが低下している問題に直面していた。 この問題の背景には、現代的なビールが乱立する中で、ビール愛好家たちが、「ステラ・アルトワの歴史は、時代遅れの象徴である」と捉える固定観念がある。 しかし、この固定観念の奥には、「”モダンで革新的”であることは、消費者の好みに合わせる努力の証拠である。そん

政治家の公的資金の出費を可視化する「Transparency Card」

Summaryブラジルの独立デジタルニュースポータルであるCongresso em Foco(コングレッソ・エム・フォコ)は、政治家の公金使用に関するデータが複雑で、一般市民が監視するのが困難であるという問題に取り組んだ。 この問題の原因としては、18歳から70歳までのブラジルの有権者の中に「公的資金は、政治家が自由に使えるためのお金だから、透明性を全て求めることは難しい」という思い込みがある。これにより、データが複雑であることを問題視する世論が形成されないでのはないかと推

あなたは身近な人の自殺の兆候に気づけますか「The Last Photo」

SummaryイギリスのNPO団体CALM(Campaign Against Living Miserably)と、英国最大の民間テレビ局ITVは、イギリスの自殺率が前例のない速度で上昇していることに国民が鈍感になっており、声を掛け合うことで命を救える可能性が高いにも関わらず、その認知が低いという問題に取り組んだ。 問題の原因は、「自殺しそうな人がいたら、その兆候に気づけるはず」という人々の思い込みにある。 しかし、その思い込みの奥には、「自殺する人を助けられる人でありた

ラコステを選ぶことは多様性に出会えること「Unexpected Encounters」

Summar90年代に広く支持されていたクラシックでシックなプレミアムブランドであるLacosteは、現代の価値観に合った包括性のあるブランドとして認識されていないという問題に直面していた。 この問題の原因として、「ラコステは伝統的なブランドであり、古い価値観を持つ人々が選ぶもの」という固定観念が存在する。 しかし、この固定観念の奥には、「自分が多様な文化や価値観を受け入れていることをファッションで示したい」という、現代的な価値観を持つターゲット層のインサイトがある。この

ハインツ詐欺はハインツ愛好家「Heinz Ketchup Fraud」

Summaryアメリカで最も人気のあるケチャップブランドの一つで、「It Has To Be Heinz(絶対にハインツでなければなければならない)」というブランド信念を掲げるHeinzは、世界中のレストランで一般的なケチャップをHeinzのボトルに入れる詐欺行為が広がっていることに気づいた。 この問題の背景には、「ボトルがHeinzであれば中身は何でも良い。どうせ客は気づかないだろう」というレストラン側の認識がある。 しかし、その認識の奥には、「Heinzブランドの高い

イギリスサッカーチームの多様性とは弱さではなく強さである「Fabric Of England」

Summaryサッカーにおける人種差別と戦い、子供たちにこの問題を教育する団体Show Racism the Red Cardは、イングランドが多様性を称賛されているにもかかわらず、サッカー代表チームに対する人種差別の問題が根深いという問題に取り組んだ。 サポーターは、試合での敗北やミスがあると何かの責任にしたくなるものである。その責任を短絡的に、「イングランド人ではないルーツ」のせいにすることで、怒りを収めようとしているのではないかと推測される。 しかし、この認識の奥に

オリジナルな理由で旅に出ることを称える「A British Original」

Summary英国の航空会社としての誇りを持つブランド、BRITISH AIRWAYSは、長期にわたるパンデミックの影響と生活費の高騰により、イギリス国内での旅行需要が低下しているという問題に対処した。 この問題の背景には、「移動に伴う健康上の懸念と経済的な制約から、旅行はまだ控えるべきだ」という社会通念が存在する。 しかし、この社会通念の奥には、「旅行に出るための納得できる理由が欲しい」というインサイトが見え隠れする。このインサイトに応えるため、BRITISH AIRW

家具を捨てた本当の理由に気づかせる「The Life Collection 2022」

Summary世界最大の家具小売業者として、より持続可能な企業を目指しているIKEAは、ノルウェーで毎年300万個以上の家具が捨てられ、その多くがIKEA製品であったという問題に取り組んだ。(この背景には「IKEAは安価だからすぐ破棄される」だったり「IKEAは再販の工夫がされてない」といった、IKEAの責任を問う声があったのではないか) そこでIKEAがオスロ最大の埋立地で実験を行ったところ、廃棄されたうちの70%がIKEAの中古品店で再販売可能であることがわかった。

架空の歴史をファンにプレゼント「Clash From The Past」

Summary毎日3億人のアクティブプレイヤーを抱える世界で最も人気のあるモバイルゲームの一つであるClash of Clansは、その10周年を祝うことを望んでいたが、ファンに10周年の価値を感じさせることが難しいという問題に直面していた。 その問題の原因として、ゲームファンの「ゲームは、ストーリーや操作性、キャラクターだけでなく歴史があることが重要」という心理がある。なので他の歴史的なゲームと比較して、10周年は大したことではないと感じてしまう。 しかし、その心理の奥