#218『ダギーへの手紙』エリザベス・キューブラー・ロス

 死の床にある子供からの問いかけに、著者が答えた手紙が本になったもの。生きるとは何か、死ぬとは何か。子供は素朴な言葉で簡潔に尋ねる。答える著者の返信は後にこの絵本となった。何度読んでも感動があり、また発見と学びがある。あの時には分からなかったことが今回は分かった、というような。
 人生は複雑さに満ちている。複雑すぎて、単純なことが分からなくなる。というか実は人生は単純な原子(みたいなもの)から成り立っていることを忘れてしまう。それで必要以上に自分を嫌いになったりダメ出ししたり、人生に悲嘆したり絶望したり…「でも本当は、こうなんだよ」という答えを、粉飾のない誠実さとこれ以上ない優しさで伝えてくれる。
 訳文はアグネス・チャンなのだが、これもまたとても優しさに満ちた日本語になっていて良い。折に触れて読み返したい本である。

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