見出し画像

憂鬱な日々

若い人の転職が増えている。ここ数年来の事だけれど、うちの部門から外に出て行かれると他人事ではない。立て続けに2人、取引先のA社は今月も2人。いずれも30歳前後の男女だ。

「入社祝い金」というのがある。前職の退職金の10倍を出すところもあると聞く。条件が合えば会社を事もなげに代える。転職のハードルが低くなって、まるでケータイの乗り換えのようだ。半ば流行と化しているようにも感じる。

Hさんは今年末でシニア満期になる。あと半年。65歳以後も「大シニア」で続けたいと、探りを入れた。が、後輩のシニア候補が控えているので風向きはアゲインストだ。

若い人がどんどん「祝い金」つきで出ていくなかで、転職サイトを覗いてはみたが、色よい求人は見当たらないし、ここぞとエントリーしてみても弾かれる。Hさん、ひとり取り残されているように感じている。

先輩のBさんが取引先の顧問として「大シニア」でもぐり込んだ。話を聞いてみた。

Bさんが出社初日、以前から懇意にしている社長にあいさつに行ったところ、「で、お土産は?」と言われた。「顧問だから、口で返します」とさらりと答えたそうだが、あれは本音だね、とBさんは言う。

若い人には「祝い金」、大シニアには「お土産」。違いを目の当たりにして、Hさんの憂鬱な日々が続いている。