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裁判の判決ばっか集めちゃいました(6月版) 傍聴小景 #31

刑事裁判の進行には大きく分けて以下の3種類あります。

新件→一回目の裁判。事件内容などが分かる
審理→前の回で終わらなかった裁判の続きの実施
判決→その名の通り、判決を宣告する回

つまりは、裁判の途中の様子は全然わからないけど、「判決」の部分だけ傍聴するのことができるのです。多くの裁判が判決だけなら5分~10分程度で終了します。
そこだけ見ても…とお思いかもしれませんが、どうしてその判決を下すにいたったかの理由を説明するに際し、事件の内容はおおまかに説明するので(裁判官によっては割愛しますが)、短期間で事件内容に多く触れるという意味では結構勉強になるのです。

という訳で、判決のみ裁判特集の6月版です。

先月版はこちら

では、今月の4本を紹介します。

No.5 気前よく食い逃げする男

罪名 :詐欺
被告人:70代の男性

親族の遺産相続により人間関係に嫌気が差した被告人が、もうどうにでもなれという気持ちで食い逃げを働いたという事案です。

まず話題になりやすいのが、「食い逃げって詐欺罪なのか問題」。よく窃盗と勘違いされやすくはありますね。
刑法246条の「詐欺」によると

①人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
②前項の方法により、財産上不法の利益を得、
 又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

とあるので、詐欺罪で間違いないでしょう。意外と法律の条文って私のように知識がなくても読もうと思えば、読めるものも多くて驚きます。

さて話は変わり、皆さん、食い逃げと聞くと、どういったお店を想像しますか?
僕は最初に浮かぶのが牛丼屋なんですよね。最近、ワンオペの店は減ってきたとは言え、人手が少なく、カウンター型も多いため、なんとなく多そうな印象があります。もちろん私は食い逃げなんてしたことないですけど、昼の混んでるときに伝票持ってレジで待ち続けてるのに相手にされず、このまま俺が逃げたらどうすんねんと思った経験など一度はあるのではないでしょうか。
他にも、ニュースで見たことあるのは、24時間営業のレストラン。住居不定の方が、ずーっと居座り、何日か経ったときに声をかけたら「俺、金持ってねぇから、通報してくれ」と警察のデリバリーまで頼む図々しい事案なんかも。

今回ですが、判決時に犯行内容を読み上げてくれたのですが、ビール等17,000円相当を注文し、店内に4時間居座ったとのこと。確かに居酒屋のケースというのも裁判では見ることはあります。ずっと我慢していたお酒を捕まる前に飲みたいという思考でしょうか。
それにしても、一人で17,000円は相当いってます。かなりいい思い出を作りたかったのでしょうか。
裁判官が読み上げた被害店舗については聞いたことがなかったので、エリアと店舗をメモり、家でググってみました。そうしたら、

ガールズバーでした。選ぶかね、人間関係に嫌気が差した人が。
17,000円ってことは、自分の分だけじゃなくて、さては女の子の分まで気前よくいきやがったな。

判決
主文 懲役一年二月 未決勾留日数20日をその刑に参入

70代には堪える懲役でしょうが、嫌気が差した人間関係とやらを冷静に考え直すきっかけになればいいですね。
刑務所の同房の人もガールズバーで食い逃げする70代が来るとは思わないだろうな。

No.6 走って逃げた男

罪名 :強制わいせつ
被告人:20代の男性

被告人は深夜、路上にて女性の着衣の上から胸を揉むなどした疑いがかけられていました。
どうやら被告人は公判において無罪を主張していた模様。

現場そのものにはいたが、そのような行為はしていない。また、電車内で女性が酔っぱらっており、介抱して欲しいとのことで手伝ってあげただけ。

という主張だった様子。
どうやら公判では被害者女性も証人として出廷したようで、それらを総合判断して出された判決は、

判決
主文 懲役一年六月、執行猶予四年

有罪判決でした。
判決宣告回というのは、特に争いがなかったら5分程度で終わるものなのですが、審理中になにか揉めた点があれば、裁判官がどのように判断したかを時間をかけて答えてくれます。

主張:被害者が酩酊状態にあって被告人に助けを求めてきた
 →・事件現場付近の防犯カメラ映像を見ても、
   被害者の足取りはしっかりしていてとてもそうは思えない
  ・っていうか、仮にそうでも初対面で、
   自分の最寄駅でない駅で降りる合理的な理由はない

主張:被害者の証言だけで、わいせつ行為をしたという証拠はない
 →・被害者の法廷の証言は整合性があった
  ・確かに現場そのものは映されていないが、
   現場から走って逃げる姿は防犯カメラ映像に
   映っていて
、それに対する合理的な説明がなされていない

まぁ有罪だわな。裁判官も忙しいんだから、手を取らせるのも大概にねと思ってしまいました。

No.7 いらすとやの不正利用は許さない男

罪名 :職業安定法違反
被告人:20代の男性

被告人は町中で女性に対して、性風俗店へのスカウトをしたという疑い。
事実を認めているものの、犯罪にあたるとは思わなかったと終始、供述していたとのこと。

過去にも有料記事ではありますがnoteで取り上げましたが、風俗スカウトそのものが有罪になるのか問題。

この記事を書いてから、僕もマガポケというアプリで「新宿スワン」を読んでます。面白いけど、憧れは別にしないよな…。
周りにも色々聞いたのですが、スカウト行為が犯罪にあたると知っていたのは半分くらいでしたかね。僕も知らなかった側なので、偉そうには言えませんので、正直「知らなかった」という言い訳には一定の理解をしなくもないところ。まぁ当人が本当に知らなかったのかは知らないけど。

判決
主文 懲役一年六月、執行猶予四年

知らなかったで済まされないのは、社会に出たらよく遭遇する話ですよね。どうしたら法律ってのが身近に知ろうとしてもらえるものになるのかは、このコンテンツの永遠の課題だと思います。

ちなみに、皆さまもきっと参考になるであろう、知らなかったでは済ませない事例を一つ。
今や国が発行する媒体にも使われているフリー素材でお馴染みの「いらすとや」。とても便利ですよね、私も動画でよく使わせていただいております。でもあれって、完全に無料というわけでもないのです。
21点以上使ったものに対しては実は有償なのです(重複は1点カウント)。なので、実は私の1本の動画においては全て20点以上に抑えているのです。
このnoteをご覧いただいている方は、立派な大人の方が多いと思うので僕が言うまでもないでしょうが、便利と思うものでもちゃんと利用規約とかは読む癖をつけましょうねという話。

No.8 白昼堂々な男

罪名 :大阪府公衆に著しく迷惑をかける
    暴力的不良行為等の防止に関する条例違反
被告人:20代の男性

被告人は、昼間にスーパーマーケットにて、買い物をしていた見ず知らずの女性のお尻を触ったという疑い。
こういう痴漢行為って、満員電車であったりとか犯行が特定されにくいところを選ぶと勝手に思っていたんだけど、こう白昼堂々と行う場合もあるんですね。被害者の方には申し訳ないですが、ちょっと状況をもう少し詳しく知りたくなってしまいました。

判決
主文 懲役四月

同種前科ありとのことで、実刑は免れませんでした。
今後、カウンセリングに通うって言ってたそうなんですが、前科あるのにまだ行っていなかったのですね…。
それにしても、性犯罪をしてしまう人のカウンセリング内容ってどんなことをするのでしょうか。とても気になります。

単に法律知識だけでなく、こういったプロフェッショナルな方々の仕事ぶりにも触れて、犯罪抑制のためにどういった方々が頑張られているかを伝えられるようなコンテンツになりたいなと思うのです。

そんな感じの6月分の判決特集でした。
推測も含まれちゃうんで、やはり裁判は審理している状況を傍聴できるのが一番いいとは思うのですが、やはり数多くの事例に触れられるという点で、この判決というのも非常に有用な機会に思っています。

という訳で、上記4件のうち3件については動画でも解説しています。
よろしければ、こちらも是非ご覧ください。


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