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人の戸籍を悪用?レアな罪名にはレアな事情がつきもので 傍聴小景 #116(戸籍法違反、名誉毀損、有印私文書偽造・同行使)

「住民トラブル」と「裁判」という言葉のセットで聞くと、民事裁判を思い浮かべるかもしれません。ですが、刑事裁判でもよく耳にするワードです。

「住民トラブルの結果、○○をしてしまった」という感じで。
過去に傍聴したものでいえば、ゴミ出しの指導がうるさい管理人に対してエアガンを本物の銃に見立てて突き付けて「殺す」と言った脅迫罪だったり、日常の生活音がうるさいので玄関ドアをハンマーで殴る建造物損壊などがありました。

しかし、今回のような罪名でも、住民トラブルの結果起こりえるんだというのを知って、勉強になるなぁと思ったり、いやいや滅多に起きないでしょと思ったり。


はじめに ~戸籍法違反というパワーワード~

罪名 :戸籍法違反、名誉毀損、有印私文書偽造・同行使
被告人:50代の男性
傍聴席:平均2人(全2回)

戸籍法違反という初めましての罪名。
こういう珍しいの見ると、僕としては飛びついちゃうんですが、開廷時は他に傍聴人はおらず、開廷中に出たり入ったりがある程度。聞いててパッと分かりにくそうな罪名は、傍聴人は避けがちですね。

被告人は、スエット姿の落ち着きがなさめな男性。身柄拘束はされていません。
裁判の初めに、人定質問という被告人の素姓を確認する中で、本籍を尋ねる場面があります。ここではどことは書きませんが、僕もギリギリ知っているレベルの東京の離島に本籍を置かれていて、その珍しさであったり、本籍に惹かれるあたりが戸籍法という今回のテーマとのリンクに少しにんまりしたり。


事件の概要(起訴状の要約)

被告人は
① 被害者(以後、A)の印鑑を勝手に押した委任状を用いて、代理人としてAの戸籍謄本を入手
② 被害者(以後、A)の印鑑を勝手に押した委任状を用いて、代理人としてAの除籍謄本を入手
①、②から約3年後、Aが住む集合住宅のエレベーターホールにて、Aや家族の名前や「生活保護を受給している」、「4度も偽装結婚と離婚をしている」、「遺族年金では足りないと人を自殺に見せかけて殺害している」などの虚偽の事実を貼り紙にて適示して名誉を毀損した

こんなことできるんですね、ってのが第一の感想。
までの人生で、引っ越しや転職をしたとき以外、あまり戸籍について考えたことがないので、単純に驚いてしまいました。という、結婚していないことが、ここの知識不足に繋がりそうだと感じややげんなり。

そして、同じく私の一般常識がないことがバレるかもしれませんが、「除籍謄本」という言葉も初めて聞きました。一応、記事作成に当たって、軽く調べてはみましたが、まだ完全に理解はしきれていません。
最初は、字の感じからなんとなく、勝手にAさんをどこかの家族から籍を抜くという笑えない嫌がらせをしたのかと思ったのですが、そうではないそうです。

そして強烈な名誉毀損の態様ですよね。①、②から3年後ということで、そことの関連性なども気になるところです。


採用された証拠類 ~他者の戸籍取得ってこんな簡単に?~

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