見出し画像

令和なトレンドが裁判所にやってきた。航空法違反は、マイナー罪名ともピーチ事件とももう呼ばせない 傍聴小景 #117(航空法違反)

あまりnoteの方では前には出していませんが、私は「大人の人生交差点クラブ」という屋号で活動をさせていただいております。

この「交差点って何?」とよく聞かれます。
人生、経験、知識というのは、人それぞれの環境において発達させていくものですが、それらが交差したときに、新しい発見を生むことが多々あります。その気付きの喜びを得てもらえたらという思いでつけました。

なんか昔から、そうやって人や新しい事象からヒントを得て、自分の幹を太くする感覚が好きなんですよね。今回はそんな僕に刺さった、とある新しいトレンドが絡んだ裁判の話。


はじめに ~大阪地裁に航空法違反が帰ってきた~

罪名 :航空法違反
被告人:70代の男性
傍聴席:5人(傍聴した1回)

開廷表を見たとき震えましたよね。このnote読者様ならお馴染みかもしれませんが、ピーチ事件で問われていた航空法違反が久々に大阪地裁に帰ったのですから。

上記では、機長、CAの指示に従わず、安全な運行を阻害したことが争点となっておりましたが、また同じような事件が起きてしまったのでしょうか?

被告人は70代の男性。髪の感じは70代なのですが、なんか元気で口の悪い(達者な)爺さんという感じで、遠くで見ている分にはいいけど、という印象でした。


事件の概要(起訴状の要約)

被告人は大阪府内の公園において、法廷の除外理由がないのに、国に登録を行っていない253gのドローンを飛行させた

事件の話なのに、新しいトレンドが出てくると「裁判にもついにこのワードが出てきたかぁ」と妙にしみじみしてしまうものなのです。「平成生まれがもう会社員かぁ」みたいな感覚に似ています。

ドローンって会社員時代に微妙に関わっていて、ドローン検定という資格試験のお手伝いをしたことがあります。
ドローンって知ろうとすればするほど面白く、建築、運送、観光、介護などなど様々な分野での活躍がすでにされていたり、今後も期待されているものであります。
恐らく最初に世に出たときは、大きめなラジコンくらいのイメージだったでしょうが、各界と交差して新しいアイデアが出る感じが好きなんですよね。

さて、今回の事件の話でいいますと、ドローンというのは無人航空機というのに分類され、100g以上するものは国の登録、認可が必要なのだそうです。

国土交通省のリンクを用意しました。興味ある方はどうぞ。


採用された証拠類 ~メルカリでも買えるドローン~

検察官証拠

被告人は他にも3台ドローンを所有しており、それらは登録がなされており、被告人自身、登録の必要性は認識していた。

事件のドローンはメルカリで購入し、仮登録までは出来ていたが、本登録が済んでいなかった。
「近くの学校を撮影しているように見えるドローンが飛んでいる」と通報が入り、警察が駆けつけ許可証の確認を求めたところ、事件が発覚した。

該当のドローンはその後、被告人が川で飛ばしていたところ、山の方へ飛んで行ってしまい紛失してしまった。

最後www

ふと思ったのですが、怪しいドローンがあると警察が駆けつけるところまではいいです。
でも、その認可が通っているか確認したってことは、その100g以上云々についてはルールを把握していたってことですよね。警察の人も肉体的負担が大きな業務なのに、法律のアップデートもしなきゃいけなくて大変ですよね。

あと驚いたのが、メルカリでドローンって買えるんですね。生まれて初めてメルカリのサイトを見ました。そうしたら確かに出品されていました。
なんか公式のサイトから買ったら、登録についても口酸っぱく必要性を説かれそうですが、メルカリで買えるんじゃ、緩く考える人もいないのかなと思ってしまいます。もしかしたら今後増える事件なのかもしれません。


被告人質問 ~はなから安全性なんてない!~

弁護人から立証は、「公益侵害の程度が低い」ことを示す証拠でした。傍聴席からはよくわかりませんでしたが、まぁそんないちいち大ごとにせんでえぇやろってことなんだと思います。
実際、被告人質問もサクッと終わりましたし。

弁「事件の機体はどこで買ったんですか?」
被「メルカリで買いました」

弁「メルカリで買うと安いんですか?」
被「そうですね」

弁「登録が必要なのはわかっていました?」
被「そうですね」

弁「それでどうしたんですか」
被「登録はしたと思うんだけど、分かんなくなっちゃって再登録の手順をしようとしてて」

弁「今後、ちゃんと登録できたか確認した上で飛ばすってことでいい?」
被「はい」

おわり

悪いことしているのはそうなんですが、略式裁判とかでサクっとなぜ終わらなかったのかが謎です。僕としては新しい事例を見れてありがたいんだけど。
別に執行猶予中の犯行であったり、直近で前科があるわけでもないのに(前科自体は昔にあるみたいだけど)。

まぁ、なんとなく正式裁判にしたくなったのかがわかるような、検察側からの質問。

検「取調べには素直に応じましたか」
被「応じましたけどね、誰もいないところで飛ばしていただけですよ」

検「いや、航空法って言ってね…」
被「そんなの家の中で飛ばしてたってわからないですよね」

なんかイラついている被告人。事件化されたことなのか、裁判になっていることが納得いっていないご様子。違法性の認識が甘いのであれば、今後も不安が…。

検「なんで100g以上は登録が必要なんだと思います?」
被「そりゃあ、国の方で何かあるんでしょうけど、私は知りません」

検「無登録だと、何か事故したときとかに困りませんか?」
被「正直言ってね、私は中国の三流メーカーの使ってるんですわ。はなから安全性なんてないんですわ」

何を言っているんだ、何を。
ヒートアップしてきた被告人、最後は裁判官にこんなことまで言っちゃいます。

裁「登録せなあかんとされているんだから、しなきゃダメなんじゃないですか」
被「人がどうとかじゃないですわ」

いったい、どこで火がついてしまったのでしょうか。
まだドローンが、メルカリなどで手軽に手に入るには、時代が早すぎたのでしょうか…。

検察官からの求刑は罰金20万円でした。判決は見れていません。

法廷の外で、被告人と弁護人が話していました。

弁「恐らく、次回の判決で罰金20万円ってことになると思うから」
被「そんなん払う金ありませんわ」

ドローンを飛ばしていた理由はよくわかりませんが、もともとメカが好きだった被告人が老後の楽しみにしていたのではと勝手に予想。老後の大事なお金を今後、罰金で費消することなく、正しく楽しんでもらいたいと思ったのでした。

今回の事件、動画にもしております。こちらもご一緒にどうぞ。


ここから先は

0字
毎週2本の記事を投稿します。有料記事は完全書下ろしで、珍しい裁判や、特に関心をお持ちいただけると思っているものを選んでいます。 記事単体でもご購入いただけますが、定額の方がお得です。初月は無料ですので、是非お試しください。

傍聴小景 会員限定ページ

¥500 / 月 初月無料

毎月約100件の裁判を傍聴している中から、特に印象深かったもの、読者の方に有意義と思われるもの、面白かったものを紹介します。 裁判のことを…

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?