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久々にニュースで話題の裁判追いかけたら「お前そういうとこだぞ」って思った話(航空法違反、威力業務妨害など) 傍聴小景 #29-⑨

僕は、裁判の傍聴記を発することで、多くの思いを届けたいと思っています。
その中でも、裁判を傍聴することのハードルを下げること大人であれば知っておいてもいい知識が得られる世界だ、なんてことを伝えたい思いが強いです。

そういう意味で言うと、誰とは言わないけど、彼の裁判は推すポイントがべらぼうに高いわけではないのです(面白い方であるのは間違いないけど)。
でも、やはり裁判当日になると足を運ぶし、傍聴したあとは「期待を裏切らねぇなぁ」と思うのです。

僕も皆さんの期待を裏切らない記事となるよう頑張る次第です。


当記事は、以下のマガジン内の続きの傍聴記となります。お盆休みなど使って、ゆーっくり読んでもらえると嬉しいです。

「ニュースで話題の裁判追いかけたら…」

エラい目にあった話(暴力を受けたとされるCAさんの証人尋問)
毅然としたくなった話(その他のCAさんや航空会社の関係者の証人尋問)
頭を悩ませた話(被告人質問(弁護側)、被告人の奥さん、父親の証人尋問)
運動したくなった話(被告人質問(弁護側))
興奮しちゃった話(被告人質問(検察側))
「狼藉」って言葉を使いたくなった話(論告・最終弁論・最終陳述)
みんなに裁判所へ行ってもらいたいと思った話(判決)
法廷録音の必要性を感じた話(高裁・弁論)

そっか、直近の回は「法廷録音の必要性を感じた話」にしていたのか。判決のときはマジでそれを感じるよなぁ。

ただ、法廷録音が当たり前になると、その中で僕の価値をどう出していくか苦慮しそうなんで、録音についてのスタンスとしては微妙なラインなのです…。
それに録音なんて許可された日にゃ、暇な日ずっと聞いてそうだし


では、今回もこちらの注意点をご留意の上、お読みいただけると幸いです。

お読みいただくにあたって
・いろいろな意見を抱くこともあるでしょうが、裁判で行われたこと、主張されたことの記載であることをご理解いただきお読みください
・恥ずかしながら高等裁判の傍聴経験が薄いため、不足点が多々あるかもしれませんが、その際は優しくご指摘いただけると助かります
・某有名事件を取り扱いますが、今までを踏襲し名前は出さず「被告人」と表現します
・完全再現は当然無理なので、紹介する内容は頭で要約や脳内補完している部分もあるのはご了承ください。
・裁判所外、SNSで被告人はこう言ってたけど、みたいなのは【基本的に】触れません。あくまで裁判内での話をします


今回は高裁の判決。
地裁から追っている裁判で、高裁まで追っているケースって、両手で数えられるくらいなので、正直経験は薄いんです。

また、地裁の場合はどういった証拠を取り調べて、何が争点で、というのが傍聴人にもはっきり分かるのですが、高裁はそこがあまり明かされません。

なので、聞かないといけないポイントとして、「争点はなにか」「それはどういう主張で争っているのか」、そして「裁判所の判断」となるので、ハードルがとても高いのです。
まぁ地裁の方より、早口でなかったことだけが救いでした。


さて、この日ですが、私が直前まで別の裁判を傍聴していたので、法廷に着いたときには被告人はすでに傍聴席に座っていました。
表情からは特に緊張などは感じられず、口の片方を上げながら、時おり傍聴席を見たりしながら、椅子の背もたれに揺られていました。普段通りでなによりです。


控訴審 第2回公判概要

日 程:10月30日 14:00~14:40
罪 名:威力業務妨害、傷害(認定罪名・暴行)、
    航空法違反、公務執行妨害、器物損壊
被告人:30代男性
傍聴席:35人くらい(裁判官入廷時)

前回は傍聴席のノーマスクは3割~4割くらいと書いたのですが、今回はもう少しだけ多かったような気もしなくはないです。
ざっくりとでも、そういった率を数えている以上、僕も彼の言うような「色メガネ」でノーマスクを見ているようですが、記事のためなのでどうか悪しからず。

ちなみに弁護士さんは開廷まで顎マスクで、開廷してからマスク着用されていました。
被告人本人は口が裂けても言わないでしょうが、彼の支援者が弁護人がマスクをしているというだけで、苦言を呈していたのを見て、こちらも顔をしかめたものです。


裁判官が3名入ってきました。別に義務ではないですが、多くの方が起立して礼をします。しない方も珍しくはありますが、絶対いないほどではありません。

被告人も起立して、礼をしました。首だけぐにゃりと垂れた、けだるさを主張する中学生みたいな礼でした。するならちゃんとすればいいのに。


証言台に呼ばれ、名前の確認をされます。

2秒は空いていたと思います。自身の名前を言う被告人。
前回、名前は言ったものの、その他のことはほとんど答えなかったので、その数秒の間で「今回は名前を拒否るのか」と感じてしまいました。

頼むから裁判の本番部分のところで、余計なメモを取らさないでくれ。



判決 ~訴訟手続きについてとピーチ事件の判断~

主文
本件控訴を棄却する

つまり、地裁の判決を維持するということです。

そのときの様子をしっかり見ていたわけではないのですが、そんな大きなリアクションを取っていたようでもなかったかと思います。


以下、理由です。

控訴の理由としては、
①訴訟手続きに誤りがある
②法令適用に誤りがある

この2点かと思います。
被告人本人も「判決に際して事実誤認がある」といった主張をしたことが、裁判長の口からも述べられました。触れてもらえてなによりです。


では、まず「①訴訟手続きに誤りがある」について

弁護側の主張
①-1 判決文の署名欄に裁判官1人の名前が記載されておらず不当である

ワイの補足
判決文が実際どうだったかは知らないけど、判決の当日、右陪席(傍聴席から見て左側の人)がそれまでの方と変わっていたので、それに伴う手続きの不備を指摘しているのかと思われる。

裁判所の判断
刑事訴訟規則第55条によると「裁判書には、裁判をした裁判官が、署名押印しなければならない。」とある。しかし、「裁判長が署名押印することができないときは、他の裁判官の一人が、その事由を附記して署名押印し、他の裁判官が署名押印することができないときは、裁判長が、その事由を附記して署名押印しなければならない。」ともある。

この規則には個別の状況についてまで定めておらず、「差し支え」といった理由は実務上用いられていることで、訴訟手続きの誤りとはいえない。

確かに、僕も右陪席が変わってたことって疑問だったんですよね。まぁさすがに問題ある訴訟進行はしないだろうから、ちゃんと手はずは踏んでいたんだろうと、そこまで疑問視はしていなかったけど。

でも、それに対して、被告人は釣られたわけですね。ネット古参AAの「釣られたクマー」みたいなものでしょうか。


弁護側(というか絶対被告人のだろ)の主張
①-2 証言台がアクリル板に囲まれており、マスクを着用しながらの進行は憲法37条の観点からも不当

ワイの補足
憲法37条
すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。
②刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与へられ、又、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する。
③刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。

裁判所の判断
(難しい言葉が多くてメモ不十分)
裁判長の裁量権に任せられている点であり、この内容自体が進行上不当なものとは言えない。

この点、当たり前だろ!と思う反面、そりゃあ被告人が言っていることは一理あるというか、そんな根本を否定する気は僕もないんです。

「人の表情というのは、心情を表す重要な証拠になるかもしれないのに、マスクで顔を隠していたらわからないだろ!」といったところですかね。

そりゃあそうだよな、うん、わかるよ。
だって、あなたも第一審のときに検察官から笑みを浮かべていたことを指摘されていたもんなぁ。
そりゃあ、マスクで表情出したデメリットをもろに喰らったもんな。


いやぁ、冗談はほどほどにして、この2つの争点だけでも、憲法やら、刑事訴訟規則やらを引っ張る必要があり頭はパンク寸前です。
でも、こういうところを突いてくれるのは、個人的に勉強になるので嫌いではないのです。


さて、続きまして本題である第一審の法令適用の誤りについてになります。本当に優しい物書きだったら、争点を書きつつ、実際に第一審ではどういうやり取りがなされたのか、記事を引用とかするんでしょうけど、ここの読者様は鍛えられているので大丈夫でしょう。

弁護側の主張
②-1 機長の尋問を行っておらず緊急着陸の判断の正当性に欠く

裁判所の判断
(ここも難しかった)
訴訟の進行は、その主導権を当事者に与える「当事者主義」である以上、検察官の立証に基づいて判断する。裁判所が職権とするのは例外的な場合であり、今回は特に例外とする理由もない

立証責任は検察官にあるから、裁判所はまずはその立証を聞きますよ。不足していると思うのであれば職権を使うこともありますが、今回はそのような例外を適用するほどのことでもないですということです。

ドラマ「イチケイのカラス」で職権をバシバシ発動していましたが、私は一度もそんな場面は見たことありませんとだけ言っておきます。

今回、CAと管制センターの人を証人として尋問しましたが、検察官としてはそれで十分立証されたと。
でも、弁護側としては、「最終的に判断したのは機長なんだから、その2人呼んでおいて機長呼ばないのおかしくない?」って指摘なんだと思う。

これも言いたいことはわかるといえばわかる。

個人的にはその2名で立証として十分であるならば、それ以上の尋問は不要と思わなくもないけど、まぁモヤりますわな。


刑事裁判ってのは検察官が立証をしなくてはいけなくて、弁護側は「無罪の証明」をする必要はなく立証の不備をつけばいい、というのはわかっているんですが、第一審の際に弁護側が機長を証人として呼ぶ選択肢ってなかったのかな。

一応、弁論において「機長がキャビンの状況を正しく把握できていたとは言えない」と不備の可能性の指摘はしているけど、CAさんと管制センターと概ね符合している状況を語っているので、不備として指摘するには法廷に連れてくるくらいが必要だったのではと思ったり。

法律のプロの方がどう思うかはわかりませんが…。


弁護側の主張
②-2 暴行について事実誤認がある

裁判所の判断
・航空会社として対外的に説明するものが必要として、早々にレポート作成に入っている。この件は降機の際、すぐ警察も捜査に入っており、虚偽の内容にて作るのは難しいと考えるべき正当なものを残すという心理的制圧があったと考えられる。

・被告人が降機する際、他の乗客の非難の程度から、マスク未着用という点のみとは到底考えられず、暴行行為を見た者がいたからと考えるのが妥当

・当時の状況を管制センターは「勢いよく〇〇(メモできず)」、機長は「〇〇(メモできず)」としているが、この相違は「①緊急着陸を短時間で判断せねばならない中で子細な部分の違いに過ぎない」「②双方とも生来の英語話者でないためのニュアンスの異なり」と捉えるのが相当。

・警察での供述内容と第一審での証言内容に食い違いがあるのは、警察の供述内容はあくまで警察が聞き取るために聞くもので、裁判のようにこと細やかに話すというのとは違うもの

・警告書を発令した際の録音データがないというが、いつ録音をするか、止めるかというのは一般乗客である以上、それは乗客の考えによるもので、されていないから不相当とは言えない

・警告書のシワは被告人のカバンの中に入れている中でついたもので、丸めた事実はないと主張するが、……(全然わからず)

CAが責任回避のために虚偽の被害申告をしているというが、緊急着陸の責任者は機長なのだから、CAが責任回避をする必要性もない

この最後の項目のところで、弁護人と被告人は明らかに聞こえるレベルで失笑

結構、息の合ったいいコンビなのかなと思います。前の記事でも書きましたけど、弁護士先生は、業界の方なら誰でも知っているような超有名な方なので、最大限被告人の主張に即した活動をされているのだと感じます。

僕自身は、虚偽の被害申告をしているとは思っていないことを前提として以下。
弁護側としては、「この乗客煩いなぁ、やられたことにしちゃお」って可能性もあるという指摘に対して、「緊急着陸の責任者は機長だから違う」という話は確かに苦笑するとは思う。

ただ、それ以外は言っていることはわかるのではないでしょうか。

皆さん想像して欲しいのですが、暴行って、ケガみたいに明らかにわかる結果がないので、加害者とされる人が「やっていない」と証言したら証明するのって至難の業だと思いませんか?
なので、周囲の状況や証言、時間軸などから不合理でない状況として立証するわけで。こういった結果が残らないものの、認定のプロセスってのを詳しく学びたいと思ったりもします。

弁護側の主張
②-3 機内での禁止行為の認識、判断について誤りがある

裁判所の判断
・被告人はCAに対して、他の客に侮辱を受けたことの謝罪を求め、また新千歳で降機させられるのは職権乱用だなどと叫んだと認められる。この対応による他の業務ができなくなった。その他業務には、機内の保安行為も含まれていて、保安に支障の恐れを生じさせたと捉えられる

・(かなり曖昧)禁止行為は罪刑法定主義(※補足)の考えにより個別具体的でないといけないと主張するが、航空法73条の4に安全阻害行為の記載があり行為が特定されないとならないというのは採用できない。カテゴリ1、2を即時に判断するのは難しく、また機長は安全運航業務を担っており、類型以上の特定を求めるのは相当でなく、些細な差異をことさらに主張が展開されるのは適当ではない。

ワイの補足
罪刑法定主義とは、行為を犯罪として処罰するためには、犯罪とされる具体的な内容、それに課される刑罰を明確に規定しておかなければならない規定のこと。これがないと、「当てはまる法律はないけど、なんか悪いのは間違いないから有罪!」というのが横行する恐れが潜んでいる…?

命令書の行為欄が空欄だとあるが、そこは任意的な記載欄であると考えるべき

・CAに単に確認しただけで、仮に大声を出したとしても一時的に過ぎず安全阻害行為でないと主張するが、断続的と評価することはできても、一時的ということはできない

この点、第一審のときから、航空関連の方から私のもとに熱いメッセージを多くいただいておりまして、機内の安全について関係者の方々がいかに尽力しているかというのを強く感じておりました。

確かに、秩序を乱すとはなんぞや?と疑問が生じることはわかりますが、やはりそこは航空機という安全を確保しない空間において、適切な権力を下すべく様々な訓練がされているというのを前提知識として考慮してもいいのかなと思います。


それにしても、当然仕事なんですが、裁判官も一つ一つ検討して、判断して大変なお仕事だと思います。高裁の方々は、第一審の様子を証拠書面でしか知らないわけで、その事態の把握や、知識の習得のためにどれだけの時間を費やすものなのでしょう。

傍聴ヲタクでも、高等裁判所の事情に詳しい人ってのは皆無なので、そこを掘り下げたら面白いかもと思いつつ、そう思っただけでやる気は1ミリもないのは自分が一番わかっているのです。


判決 ~残りの判断と、そして・・・~

ピーチ事件が争点が多かったようで、残りはだいぶ駆け足になります。

でも冒頭で述べた通り、高裁の判決は情報を追いかけるのがすごい大変。正直かなり疲れていたところで、法廷内に変化が。


第2事件の裁判所の判断を言い始めたところで、被告人がおもむろに席を立ちあがったのです。

あまりに納得できなくて帰るのかと思ったら、自分の席に戻り、水をごくごく飲み始めました。そして、

「水飲んでいるだけですので、どうか続けてください」

とそのままの進行を要求。
お前、そのまま読み上げたら、「被告人は水を飲み、判決を聞ける状態でなかったのに、そのまま進めた訴訟指揮は不当である」とかいちゃもんつける気じゃねぇだろうな?

しかしさすがは、高裁の裁判長。釣られたクマ―となることもなく、水を飲んでる間は読み上げを止め、自席につくのを待っていました。


ってか、地裁のときはちゃんと申請もしたし、「証言するにあたり喘息が…」という大義名分があったけど、今回はただただいきなり水を飲み始めましたからね。
それに釣られてか、傍聴席でもお茶を飲む人がちらほら。こうやって一人の指導者によってカオスは作られていくのですね。


弁護側の主張
②-4 被告人宅での公務執行妨害事件について事実誤認がある

裁判所の判断
・弁護士はピーチ事件の際に身柄拘束できなかったのを失態とした捜査側に仕組まれたものと主張するが、当件で関わった警察官は被告人と接点はなく偽証のリスクを負う必要はない。また、そもそも勾留の請求もされていないので、主張は想像に過ぎない

・タブレットで叩いた点について(ここからしばらく全然わからない)、不意打ち認定などといわれる謂れはない

弁護側の主張
②-5 学問の自由の侵害である

裁判所の判断
・裁判所の発布の令状により捜査されているものである。ことさら研究を妨げるなどでなく、そのような謂れはない

・在宅時に捜査に入るというのは、捜査上もだが、被告人にとっても利益のあることである。時間も昼の時間帯に行われており、通常の範囲内で、業務時間を避けるべきというのもない。

なんかここで二連発で「謂れもない」と言ってて、軽く怒ってるのかななんて思ったり。

タブレットで叩いた云々の箇所は詳細にメモれていなくてごめんなさい。ここ、第一審でも警察官の証言なども傍聴できていないので、自分の中でもはっきりわかっていないことが多くて。

学問の自由云々の部分は、思いのほか尺が割かれていて結構興味深かったです。令状捜査だからというのが、どれほどの効力を示すのか僕にはわからないので知りたくなったし、在宅時の捜査は被告人にも利益だしって説明も面白かった。
確かに、職場で大っぴらにされるよりいいでしょとは思う。


弁護側の主張
②-6 館山食堂事件について事実誤認がある

僕の主張
館山食堂という名前を聞くと、お腹が空いて気が散るので、その主張自体不当

裁判所の判断
・弁護士もマスク着用を求められた点は争っておらず、壮年で体格に勝る被告人がそれを拒否していることで、店員の意思を制圧、心理的圧迫を与えたと判断できる。

状況として他の客の助けを得て、マスク着用の要求を通しているのであり正当な業務の妨害となっているのは明らか

この最後の説明のところで、またも弁護人と被告人は失笑

この件に限らずですが、「威力業務妨害」の「威力」とは?というのが揉めることってあるんですよね。
ただ、お国の警察に対する物言いならまだしも、田舎の小さなお店に対しての行為で、あれだけの動画が残っていて、その主張はすごいと思うんよな。自己の正義に反する情報は受け入れないという不遜さを感じます。


弁護側の主張
②-7 館山食堂前の公務執行妨害事件に事実誤認がある

裁判所の判断
・警察官職務執行法を逸脱していると主張するが、相当である判断する。弁護士は、被告人は距離を取りたいから手をあげたに過ぎないと主張するが、その状況において言葉が発せられず、ジェスチャーでないといけなかったという事情は認められない。

・すぐに解放したら、食堂に戻り、暴力行為にもなりかねないという点を恐れて立ちはだかったわけであり、対応してから現行犯逮捕まで8分かかっている点が長いと言えるものではない

争点と裁判所の判断の要旨はこんなところですかね。

言うなれば、全て認められなかったというところですね。すでに出ている記事のように被告人は確かに首を何度も捻っていましたが、弁護士先生も判決を聞きながら「おいおい、マジかよ」という表情になっていたのが印象的でした。

僕自身、有罪であること自体は疑ってはおりません。
ただ、一つ一つの「認定」という意味において、その証拠において100人いたら100人が有罪と判断しないといけないというような原則に照らして考えると、その証拠で犯行は強―く強―く推認されるのに十分とは思いますが、100人いたら2~3人は十分ではないと判断しそうだなと思うくらいには、彼に同情はしているんです。

ただ、今回起きている事件というのが、形として残りにくいものであるので、それを100人が100人納得というものを証明するのは、相当過ぎるハードルな話だと思うのです。

難しいですね、刑事裁判って。


さて、皆さんお待たせしました。最後の大きな山です。

判決の理由も終わって、最高裁への上告の手続きの説明をしていたときのことです。


被告人が急に立ち上がり、裁判官の方に向かって数歩歩きだし


裁判官の当たり外れでこんな事実誤認が行われるだなんて!

(裁判長のお名前)さん、あなたは日野町で人を殺しているんですよ。そんな人、法壇から降りなさい!

と言い放った被告人。
期待を裏切らないな、あなたは本当に。

弁護人から「気持ちはわかるけど戻って。間違ってる内容なのはわかるけど」と言われ、渋々席に。

さりげなく裁判長から「今の発言は調書に残しておきます」と言われていたのがツボでした。この被告人の事件は、こういうことの積み重ねなんだなと、強―く推認される例だなと感じます。

諸々の説明が終わり、閉廷が宣告されたあとも裁判長に数歩詰め寄り、

法壇から降りなさい!あなた人を殺してるんですよ!

と全く同じことを言っていました。

この「人を殺している」云々なんですが、なにかというと、裁判長は過去の自身が担当した裁判において、とある疑惑がかけられていまして、恐らくそのことを指しているんだろうなと思います。
本人に聞いていないんでわかんないですけど。


大手メディアはこの「人を殺している」云々の発言はまるっとカットしていましたね。

被告人にはともかく、裁判所側に迷惑かかるならカットしようかとも思ったんですが、その疑惑はともかく、この法廷でそう言われたことは事実なんで残すことにしました。

仮に被告人さんから、そんなことは言っていないと事実誤認の指摘されても、裁判所が調書に残すって言ってんだから問題ないでしょ。

ってか、自身のことは事実誤認だって騒ぐくせに、他人の正確か分かってない事象に対しては、わーやわーや叫ぶんだな。お前、そういうとこだぞ。大したご身分でっせ。

これで、この発言が調書に残っていなかったら笑える。そうしたら僕も法廷録音を強く叫ばなくてはいけなくなりますね。



と、そんなバタバタの様子もありつつの高裁判決でしたが、いかがでしたでしょうか。

この事件そのものについて理解が深まったという方も多いでしょうが、裁判というのがどういう手続きで、どのように事実認定してるかというのを少しでも感じ取っていただけたのではないでしょうか。

これにより、少しでも裁判そのものに関心を持っていただけたら嬉しく思います。


ってか、最高裁までやるんかね?
俺、東京まで行かないとダメ?

この記事はフリーでオープンにしているから、最高裁ウォッチャーの人の参考資料としていただけたらと。



という訳で、今回も長文をお読みいただきありがとうございました。

有料コンテンツもある当noteですが、当記事は社会的関心の高さから、基本文面を全部無料でお読みいただけるようにしております。


もし、今回の記事が面白かった、参考になったと思っていただける方がいるならば、
随分寒くなってきましたので、心も体も温まる豚まんを奢ってください(´;ω;`)やっぱ関西といえば551の豚まんでしょ!


もちろん、この有料は全く強制するつもりもございませんので、有志の方だけで結構です。


毎度のことですが、当記事の全責任は私に帰属いたします。
大人の人生交差点クラブ 普通



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