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人気脚本家に恩義を感じながらの犯行。亡き先生は何を思う?(業務上横領) 傍聴小景#94

TBS系の人気ドラマ「渡る世間は鬼ばかり」
私は1度も視聴したことはないのですが、出演されている方々はなんとなくわかりますし、テーマ曲も頭に流れるほどですから、世間での影響力は相当のものだったと容易に推測されます。

脚本家の橋田壽賀子さんは、「渡鬼」を見ていない僕にとっては、「いいとも」に出てる不思議なおばちゃんという感じでした。
一昨年亡くなられたニュースは見ましたが、95歳だったのですね。力強い作品を残す人は、力強い生命力があられる方なのかな、などと思ったものです。

さて、今回の裁判ですが、そんな「渡る世間は鬼ばかり」と言わんばかりの、なんとも人の縁などについて考えさせられるものでした。


はじめに ~メディアも注目していた事件~

罪名 :業務上横領
被告人:60代の女性
傍聴席:28人(傍聴した1回)

この日は用事があって東京地裁で傍聴していました。
この裁判自体も目的があったものではないですが、法廷前はかなりの人の列。職員さんもそれなりに配置され、開廷前にはテレビ撮影も法廷内で行われたそうです。

業務上横領という事件の多くは、会社のお金を横領したものが多いので、歯止めが利かなくなると、被害金額も大きくなりがちで、ニュースになる可能性も高くなります。
そして実際のところ、今回の事件も多くのメディアで報道されていた注目の事件であるのを、傍聴後に知りました。

身柄拘束なく法廷に入ってきたのは60代の女性。スーツをビシッと着こなし、髪型などからもオシャレな雰囲気を感じました。


事件の概要(起訴状の要約)

被告人は一般財団法人橋田文化財団の経理業務を担当していたが、約3年半の期間で現金合計約970万円を自己の用途のため横領した。

もちろん、この橋田文化財団ってのは、橋田壽賀子先生絡みの財団法人のことね。そこの職員さんが横領したという事件です。

なんともこの曲が心に染みてしまう事件です。あ、音楽は使わないんで、もう切っていただいて結構です。

この事件内容について被告人は全面的に認めました。

採用された証拠類 ~事件額を超える示談金の用意~

検察官証拠
被告人は約20年前から同財団の常勤職員として、経理業務全般などを扱うようになる。そこから10年強過ぎたあたりから、横領金にて高級ブランド品の購入などをするようになる。

当初は横領金を自身の給料などで補填していたものの、後に補填ができない額にまでなっていく。
犯行を免れるため、橋田賞授与式のパンフレット作成の際に虚偽の請求書を用いるなどすることもあった。

犯行は同財団の役員が、橋田氏が亡くなったあと帳簿等を確認していた際に発覚した。

横領金の使い道、使ったあとの対応はこの事件の典型的なもの。補填しようと思ってというのが、どこまで本当かわかりませんが、それで額が増えているようじゃ、補填とはなんぞやという話になってしまいます。

弁護側の書証は大きく分けて2つ。
1つは被告人の謝罪文。内容は読み上げられず、よくわかりませんでした。
そしてもう1つが示談関係。なんと驚くことに、今回起訴された横領金以上のお金を被告人の弟が用意したということで、示談が成立しているとのこと。

この事象一つで「渡る世間に鬼はなし」なんて言うつもりは毛頭なく、どうして事件以前にその弟にいろいろと相談できなかったのかと思ってしまいます。


被告人質問 ~実際の横領額はさらに膨らみ~

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