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妻に拒否されて2年目の春 2

 深夜、街中を軽快に走らせ、交差点に差し掛かったとき、右方向から猛スピードで一時停止を無視してやって来た車に、私の車の右後ろをぶつけられ、私の車はコロコロと回転をして、街路灯にぶつかり停止しました。
 平成の初期はシートベルトの規制も無く、エアーバッグもありません。相当な衝撃を頭に受けたようで私は気を失いました。そして、気がついた時は、病院のベッドの上でした。
 当時、私の妻は第二子出産のため、実家に帰省して、携帯電話も普及しておらず、警察も病院も妻と連絡を取ることができませんでした。
 早朝、目覚めた私は、近くにいる看護師から、事故のことや、入院手続きのことを聞き、早急に手続きすることを約束をしました。診察後、看護師へ妻に連絡したいことを告げ、その後すぐに病室へやって来たのが、事務員の「彼女」でした。

 当時の彼女は26歳。私は31歳。彼女は未婚で私は2児の父。当たり前ですが、恋愛の対象としては見ていませんでした。
 手続きを済ませたとはいえ、保険屋さんとのやり取りや、警察官の調書取りで、何かと忙しい入院生活中、いつもお手伝いをしてくれました。
 1か月の入院生活も明日で終わりとなった夕方のことでした。彼女から「退院したら、1回だけデートしよう」と誘われたのです。『じゃー次の診察日に打ち合わせしよう』と返事をして、翌日、退院をすることとなりました。

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