狂っていて、とても気持ちが悪くて、だけどほんのちょっぴりだけ羨ましい。

本日封切りとなった松井大悟監督の映画、「君が君で君だ」。
一般公開に先駆けて、先日、試写会にお誘いいただきました。

本当は、鑑賞熱が失われないうちに感想を書こうと思っていたのです……が。
どうまとめたらいいのか…と整理が追いつかず困り果てたまま、今日まで来てしまいました。
そう、とても感想に困る映画だったんです。
実際に上映後の館内の様子は、混迷やら興奮やら、言葉にならない複雑な感情やらが入り交じった、えも言われぬ空気に支配されていた……ように感じます。

ひとまず、見終わった瞬間の感想を率直に記すなら「狂ってる」です。
なんなら「気持ち悪っ!」とも感じました。
けれど最後に、「でも、なんか本当に、ほんのちょっぴりだけ羨ましい」という感情も湧き上がってきて……。

この映画のテーマは「愛」です。
ヒロインに惚れた男3人は、それぞれ、その子が好きな人物(「尾崎豊」「ブラピ」「坂本龍馬」)になりきります。
彼らは彼女の住むアパートの向かいに移り住み、10年(!?)もの間、彼女の日常を隅々まで観察。彼女と同じご飯を同じタイミングで食べるなど、生活までも徹底的に同期させています。
この時点で間違いなくストーカーだし、それなのに本人たちは作中でその上を行く反論をするしで、めちゃくちゃ気持ち悪かったです。
ただ、好きな人の好きな人物になりきるという行為。これに関しては「相手の嗜好に自分自身を近づけていきたい」という恋愛の健全な思考の延長線上にあるように感じたので、微笑ましく、ちょっとだけ共感もできました。やっぱり気持ち悪いけど。

でも、たとえ序盤が狂気的でも、最終的には純愛的なノリに落ち着くんでしょう?と高をくくっていました。
ごめんなさい。甘かったです。
ことごとく裏切られる予定調和。理解を超えた行動の数々。
「愛」は人類の永遠のテーマで、よく「答えがない」なんてことを言われていますが、答えがないにしても余計に混乱させられる始末。
この映画は、「正常」を見事に置き去りにしてくれました。
それゆえに、本当にいろいろな感想が渦を巻いて、収拾がつかない状態になってしまったと感じます。

その中でも、「でも、なんか本当に、ほんのちょっぴりだけ羨ましい」と感じた部分。それは、そこまで突き抜けた恋愛表現を、自分が好きになった人に対してできるのかと。そこまで振り切れる、ある種の強さや純粋さが、自分にはない。そこが羨ましくもありました。
(本当に勘違いしてほしくないですが、方法としてはまったく共感できないし、真似をするつもりは「絶対に」ありません!)

ここまで書きましたが、恋愛映画として観ると、全編通して「狂気」「気持ち悪い」がつきまといますが、単純にエンターテインメントとして観ると、とても面白いです。

詳しくは、ぜひ映画館で本編をご覧になってみてください。
かなり自己矛盾していますが、非常にオススメしにくいけど、ぜひ観て欲しい映画です。
見終わった人がいましたら、ぜひ感想を語らいましょう。
きっと100人100通りの感想が出て、一日飲んでもまとまらないと思いますが、それこそがきっと、この映画の魅力なんだと思います。

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