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2024年J2第6節鹿児島ユナイテッドFC-横浜FC「鹿児島×雨=???」

「またか。」

5年前と同じだった。大雨でずぶぬれになりながら勝利の余韻に浸る間もなく、速攻着替えて撤収したのは。そして、手にした勝ち点も。

窓を叩く雨。博多から鹿児島に向かう新幹線では5年前のことを思い出していた。5年前も大雨の試合で、最後はイバのPKで逆転勝ちだった。鹿児島とはこれで3回目の対戦だが鹿児島のホームゲームではいつも雨に祟られている。

当初平壌に行く気マンマンでこのゲームの試合のチケットや往復の旅程すら購入しないままだった。3月上旬に平壌行きが怪しくなり、慌てて鹿児島往復を調べると土日の単純往復で7万円台とか。高すぎて殆ど行くことを諦めていたこの鹿児島戦。ところが、土曜日に仕事が入りその代休を月曜日に取得できることになったので、日月の旅程にした上で福岡往復にすると3万円からで行けることがわかった。博多から鹿児島中央への新幹線は約1万円。新幹線で往復しても、鹿児島単純往復より安く行ける。それでも雨とわかって乗り込むアウェイ程気乗りしないものはない。

鹿児島に到着した時はまだパラパラくらいの雨で、試合前でも場外でゆっくりと食事するだけの場所も時間もあったが、試合開始30分前から本降りになり、レインウェアなしでは観戦は無理なほど本降りになってしまった。

三重罰

それを見越してなのか、横浜はボールをつなぐ意識があったと思う。開始3分、山根のグラウンダーのクロスに合わせたのは伊藤翔。ほぼフリーになって抜け出した彼はボールのコースを少し変えるだけでよかった。これで彼は2試合連発弾となった。

試合開始早々にゴールを決めた横浜は優位な形でゲームを展開できた。鹿児島はハイプレスを志向しつつも、裏を取れられるのを守備陣は嫌ってラインを下げるので、全体的に間延びする傾向にあった。そこを横浜は丁寧にボールを回してゲームを作っていく。雨のゲームでドリブルをガツガツ仕掛けて無理にロストする必要がないのは自明の理である。
とは言え必ず攻撃は成功するものではなく、鹿児島ボールになると山根、中野の後ろのスペースにボールを入れてくる傾向があったが、ここをンドカ兄弟対決を兄・ボニフェイスがしっかりと弾き出して鹿児島に決定機らしい決定機を作らせない。

横浜は鹿児島の裏のスペースを狙う戦いが見事にはまる。福森の出したボールに反応した小川が鹿児島陣内に侵入したところで、鹿児島GK泉森が飛び出し小川と接触しDOGSOと判定されたのだろう1発レッドカードにて退場となった。接触直前でボールをループ気味に浮かせてボールへのチャレンジでなく選手へのチャレンジとさせた小川の頭脳的なプレーが光るシーンだった。エリアとしたらややサイドでゴールまで距離もある感じだったが、鹿児島の守備陣は誰も戻っておらずSPAではなく、DOGSOと判断したのは厳しいがジャッジの中での許容範囲だった気がする。

さらに前半32分にはボニフェイスの縦パスに突破を図った山根を、鹿児島・外山がペナルティエリア内で倒してしまいこの日2枚目のイエローカードで退場。PKを伊藤翔が決めて横浜は0-2として圧倒的有利にゲームを進めることになった。

泉森も外山もどちらもディフェンスラインの裏のスペースを突かれたもので、横浜は2人退場させてさらに2点加点と鹿児島に三重罰を与えたようなものだ。2点目は数的不利なのに、FWがプレスを仕掛け外に回さず裏に蹴ったもので、自滅に近い。
前節横浜は、数的不利になりリードしていたこともあり4-4-1で残り75分近くを耐え続けた。前線からプレスにいくとスペースを作られてしまうので1トップの伊藤は誘導役として相手を誘い込み、サイドの攻防になった時に挟み込んで相手の攻撃に耐え続けた守り方は鹿児島とは対照的だった。
鹿児島としては、同点にしなくてはならない、一方で自陣に閉じこもったままではボールを奪えないという二律背反のような戦いを見越して、中盤の田中を下げて中盤を一枚飛ばしても速攻に持っていきたかったはずが、単発のロングボールと間延びした守備になってしまっただけだった。

前半42分には福森のコーナーキックをカプリーニがヘディングでゴールを叩き込み3点目。ゲームはこの段階で決したと言っても過言ではなかった。

膨らむ期待

前半だけで0-3として相手は2人も少ない状況で、後半さらにゴールへの期待が膨らむ横浜。ハーフタイムで休養を取ればもっとゴールを奪えるはずだった。

が、鹿児島は4-3-1と現実を受け入れて守備にシフト。高いボールでクロスを入れられるなら、守備は4枚なので五分五分の戦いができると踏み切った節がある。横浜としては前節自分たちがしたことを鹿児島にされて、スペースを有効に使えないことに気が付く。

サポーターとしたら、もっと攻撃的に点を取りに行ってほしいという思いがあるが、その反面2人数的有利で3点差。大雨のゲームでは不意の接触やその着地などで怪我を起こしやすくなることを考えると、選手やチームとしたら相手が出てこないところで大きなリスクをかけて攻撃にシフトするのは苦しくなる。伊藤が苦言を呈していたが、それでも「欲を言えば」というもので、チームが全体的に疲弊していくと全員が同じ方向を向いて、さらに4点目、5点目は難しい部分もあるだろう。


後半31分には櫻川がPKを奪取。サポーターは大分戦での失敗を知っているからだろうソロモンコール発動。彼もその声に応えて、今回はPKを着実に沈めて4点目。チームとしての形ではなかったが、ストライカーにとっての1点は大きい。大分戦で得られなかった勝ち点3は帰ってこないが、ここで自信を取り戻せるならPKでも、ゲームが決まった後のゴールだろうと意味がある。大量得点への期待は叶わなかったが、期待している大型ストライカーの得点は叶った。

試合はそのまま0-4で終了。横浜はこれで連勝となった。雨で濡れたが、5年前のここ鹿児島でも勝利したので、鹿児島での雨は吉兆なのかもしれない。観光には不向きなれど、勝ち点3こそ最高のお土産。その前には、桜島も黒豚も前菜やデザートみたいなもの。出来れば、次回の鹿児島も雨でお願いできないだろうか。

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