見出し画像

第16回:なぜディクソンはABBAの『チキチータ』を聴いていたのか?『THREE BILLBOARDS OUTSIDE EBBING, MISSOURI(スリー・ビルボード)』徹底解説

さて、ようやくここまで辿り着いた。

ウィロビーの死を知らされる前にディクソンが聴いていたABBAの『Chiquitita(チキチータ)』の意味を解説するよ。

もう第16回だもんな。長かった(笑)

そもそも僕が『スリー・ビルボード』の解説を書こうと思ったきっかけは、この場面でABBAの『チキチータ』が流れる理由を多くの人が誤解していたからだった。

ネット上でこんな説が広く出回っていたんだよね…

「ディクソンがABBAを聴いていたのは同性愛者の証拠」

僕はこの説を最初に聞いた時にズッコケた。こんなこと46年の人生で初耳だったから…

断言しよう。

ディクソンは同性愛者ではないし、ABBAはその象徴ではない。

映画『スリー・ビルボード』のどこにも、ディクソンが同性愛者であることを臭わせる描写はないんだ。

ルネ・クレマンの『太陽がいっぱい』の時も「アラン・ドロン演じる主人公の同性愛説」をそう言って一蹴してたな(笑)

あのシリーズも中断したままやで。

ルネ・クレマンの原点『禁じられた遊び』を解説するんやったろ?

来年も忙しそうだな、君は。

ええ…

そういえば、自殺したウィロビーは妻のアンに置手紙を書いていたよね。

なんか意味深な内容っぽかったけど、あれは解説しなくていいの?

内容はイエス・キリストを思わせるようなもので、最後に「生まれ変わり」について言及していたね。

これはアンジェラが映画の中で度々「復活」していることを観客に知らせるヒントみたいなものだ。

ウィロビーはミルドレッドとディクソンにも手紙を書いているんだけど、そこにも非常に重要なことがテンコ盛りなので、後日ゆっくり解説するとしよう。

ブ~ラジャ~!

さて、ディクソンはウィロビーの死を伝えられる前、イヤホンでABBA『チキチータ』を聴きながら踊っていた。

窓の外にはウィロビー自殺のニュースに動揺する警察官たちの姿が見えるね…

虫メガネでオモチャの人形も見とったな。ノリノリで(笑)

ディクソンの精神年齢は8歳児レベルだからね。

ちなみにこの行為が『チキチータ』の次の曲、レッドをぶちのめす時に流れる歌『HIS MASTER'S VOICE』の伏線になってるんだ。

詳しくは『チキチータ』のあとに…

では歌を聴こうぜ。

どっかで聞いたことある歌。

タッキー&深キョンのドラマ『ストロベリー・オンザ・ショートケーキ』の主題歌や。

ああ、あれか!

まずこの歌の背景について簡単に説明しよう。

この歌が発表された1979年はABBAにとってターニングポイントといえる年だったんだ。

1974年に衝撃的デビューを飾ったABBAは二組の夫婦からなる4人のグループで、スウェーデンから一躍世界的人気スターとなり、まさにシンデレラストーリーを絵に描いたような蜜月期間を70年代後半に過ごしていた。

だけど1978年にアグネッタとビョルンの関係は崩壊し、1979年に二人は離婚することになる。

プライベートでは別れたのに仕事ではずっと一緒という関係は辛いだろうね。しかも世界中の目が注がれる中でだ。

当然ファンたちは心配した。

もう活動を続けられないんじゃないか?ってね…

元貴乃花親方と河野景子みたいなもんやな。

離婚した後も親方と女将さんとしてイベントに出とった…

おそらくアグネッタはABBAをやめようとも考えたんじゃないかな…

もう二度とステージの上で笑顔を振りまきながら歌うなんて出来ないと考えたことだろう…

だけど彼女は踏みとどまった。

世界中のファンからの声援、そして自分と同じように公私の区別のない生活の辛さを理解するアンニ=フリッドに支えられて…

こうして出来た歌が『チキチータ』というわけだ。

「Chiquitita」とは「お嬢ちゃん」という意味。

悲しみのあまり歌えなくなったチキチータとは、まさにアグネッタ自身のことなんだな。

それを彼女自身がリードボーカルで歌うというのは、心配してくれたファンや傍で支えてくれたアンニ=フリッドへの恩返しの意味も込められているのだ。

歌詞を噛みしめるがいい。これを歌うアグネッタの気持ちがどんなものだったか、よくわかるだろう…

<続きはコチラ!>


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?