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深読み 米津玄師の『BOOTLEG』最終章『灰色と青』① 君の名は ~your name~


前回はこちら




そして、もう1つの君の名は 灰色と青


この『灰色と青』という題名こそが、この歌最大のトリックです。



ここに知恵が必要である…

賢い人は題名の色にどのような意味があるかを考えるがよい…

色は、人間を指している…


そして、その数字は319の194である…


ふふふ。

ヨハネの黙示録「獣の数字」といえば、志賀直哉を思い出すな。


志賀直哉
1883 - 1971


ええ。小説『小僧の神様』のクライマックス「屋台の鮨屋」ですね。



屋台の鮨屋で小僧は2人の客の間に割り込んだ。

そして小僧の目の前には、鮪の脂身トロが3貫並んでいた。

1貫6銭の鮪が3つ、つまり666。


アート好きな志賀直哉は、ウィリアム・ブレイクの絵『獣の数字666』を見て、屋台の鮨屋をイメージした。

あの絵に描かれるサタンは、まるで鮨屋の大将みたいに見えます。

そして大将の前には大きなマグロが置かれていて、それを3つの頭の人が注文しているように見える。


『The number of the beast is 666』
William Blake


もう、そうとしか思えない。あれは屋台の鮨屋だ(笑)

志賀直哉もポール・マッカートニーも米津玄師も、有名絵画からイメージしてストーリーテリングするのが上手い。


in other words(言い換え)は表現・物語の基本ですからね。

『Fly me to the Moon(私を月に連れてって)』でもそう歌われます。



ちなみに『ヨハネの黙示録』の「獣の数字」は「666」の他にも「616」や「615」だという説がある。

写本によって数字が微妙に異なるのだ。



「灰色と青」の数字「319の194」もそうです。

「300の185」や「299の184」という写本もある。


ふふふ。その通りだ。

「灰色と青」の代表作として名高いアルバム『靴を片方 茂みに落として探し回った』も、ビートルズの代表作として名高いアルバム『LET IT BE』も、構成やアレンジがそれぞれ微妙に異なる「写本」がいくつか存在する。



Beato Angelico(フラ・アンジェリコ)の絵『受胎告知』もそうですね。

描かれている内容はほぼ同じだけど、構成やアレンジが異なるものが複数存在する。



「灰色と青」の代表作『靴を片方茂みに落として探し回った』と、ビートルズの代表作『LET IT BE』と、Beato Angelico(フラ・アンジェリコ)の代表作『受胎告知』は、内容の異なる「写本」が複数存在するところがよく似ている。

はたして「灰色と青」とは何者か?


米津玄師は歌の最後にヒントを出しています。

「始まりは青い色」と。


そう。タイトルは『灰色と青』なのに、歌の最後に「始まりは青い色」だと言う。

つまり「君の名」は、本当は『青色と灰』なのだな。


青い色とはキタノブルーではなくキヨハラブルー…

「君の名」の苗字は、漢字の中に「青」が入っている「清原」です。


そして下の名前には「灰」が入っている。


はい。


ふふふ。

「灰」とは「はい」、つまり「承諾・受諾」の「諾」の洒落だな。


「諾」とは「はい、と答える」という意味で、誰かに言われたことを「あるがままに受け入れる」ということです。

受胎告知に対してマリアが答えた「let it be」のように。



つまり下の名前には「はい」という意味の「諾」が入っている。


諾子(なぎこ)さんですね。

「灰色と青(青色と灰)」とは「清原 諾子」のことです。


清原諾子とは?


NHK大河ドラマ『光る君へ』でファーストサマーウイカが演じている清少納言です。

彼女の本名は清原諾子だとされている。


『清少納言』菊池容斎


米津玄師は本当に面白いな。

ビートルズのアルバム『LET IT BE』のオマージュアルバム『BOOTLEG』を構想し、最後の曲『GET BACK』をオマージュするために、清少納言からヒントを得て『灰色と青』を作った。


アルバム『BOOTLEG』の「黒枠」デザインはビートルズの『LET IT BE』と同じものですが、清少納言にも通じるものがあります。

いわゆる「清少納言 知恵の板」と呼ばれるパズルは、板を組み合わせると「黒枠」が作れる。



ふふふ。米津玄師は面白いところに目をつけるよな。


そして米津玄師は『LET IT BE』や『GET BACK』が「何から作られた歌なのか」を理解していた。


『LET IT BE』も『GET BACK』も、Beato Angelico(フラ・アンジェリコ)の絵『夜明け前の受胎告知』からイメージを膨らませたものだった。

『Moonlight』の歌詞「イメージしよう、イメージ」のように。



ポール・マッカートニーは、この『夜明け前の受胎告知』から『LET IT BE』や『GET BACK』を作った…

だから米津玄師もポールと同じ様に、この絵から『灰色と青』を作ろうと考えた…


『Annunciation of Cortona』
Fra Angelico


そこで米津玄師は、清少納言に目を付けた。

あの絵から歌を作るには、清少納言がぴったりだと考えたからだ。


清少納言の代表作『枕草子』…

春はあけぼの… ですね。



つづく





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