第6回「殺されたアンジェラの弟ロビーは、いったい何に気付いたのか?」~『THREE BILLBOARDS OUTSIDE EBBING, MISSOURI(スリー・ビルボード)』徹底解説
さて今回から駆け足で行くぞ。
その言葉を待っていた!
天才コーエン兄弟の初期作品解説シリーズも『ミラーズ・クロッシング』のところで中断しているしな。
さて、鼻歌混じりで夜のパトロールをしていたディクソン巡査は、道路沿いに立つ看板の張り替えをしていた作業員を見かける。
それは、被害者アンジェラの母ミルドレッドが、半年以上何も進まない捜査に業を煮やして出した広告看板だった…
3枚の看板を「ディクソンが見た順番」で見ていこう。
まずは1枚目。
HOW COME, CHIEF WILLOUGHBY ?
ウィロビー署長、なぜ?
ディクソン巡査は作業員に看板の意味を尋ねるが、どうもメキシコ人らしく英語が通じない。
作業員が「あっちで聞いてくれ」とばかりに隣の看板の方を指差すので、ディクソン巡査は移動する。
そして2枚目の看板を目にした…
AND STILL NO ARRESTS?
まだ逮捕されないの?
あの黒人作業員は確かに「DIXON」を「DICK SON(ちんぽこ野郎)」と発音しとったな。
ディクソンは気付いてないっぽいけどね…
実に愛すべきキャラだ(笑)
さて、この黒人作業員ジェロームは重要なことを口にする。
ディクソン「お前なんか逮捕するのは簡単だ」
ジェローム「そんなこと《1枚目》の看板を見たら言えないはずだぜ」
どこが重要なの?
彼が言った《1枚目》という言葉は、3枚の看板に書かれたメッセージには「読むべき順番」があり、ディクソンはそれを逆走しているということを観客に伝えるものだ。
だけど映画をメタ視点で見ると、ディクソンのほうが正しかったんだよね…
だって、
HOW COME, CHIEF WILLOUGHBY ?
AND STILL NO ARRESTS?
なぜウィロビー署長は
まだ逮捕されないの?
だから。
おそらく映画を観た人の多くがディクソンを能無しだと思っているだろうが、実は最も正しい行動をしていた…
ただそれを本人が気付いていないだけで…
そしてディクソンは3枚目の看板を見に行く。
そこに書かれていた文字は…
RAPED WHILE DYING
(娘アンジェラは)レイプされながら殺された
だけどディクソンが見た順番でメッセージを繋げれば、こうなっていたんだよね…
HOW COME, CHIEF WILLOUGHBY ?
AND STILL NO ARRESTS?
RAPED WHILE DYING
なぜウィロビー署長は
まだ逮捕されないの?
(自分も)死の淵にありながら(娘を)レイプした
ああ!
「while dying」がアンジェラのことじゃなくて、レイプ中に血を吐いたウィロビーのことになってる!
完璧なメッセージじゃんか!
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